短々落語「ふじの病」
400文字以内のショートショート落語臭
「ふじの病」
ご隠居、悲しまないで聞いておくれ、あの不二衛門が死んじまったよ。
人は見かけによらないもんだねぇ。上々にそして離婚後も、あんなに元気そうにしてたのに。不治の病だったんだねぇ。
それでね、ご隠居、これは後から聞いた話だよ。病室の窓からは、手前には紫の藤が、遠くには、青く富士の山がえらく綺麗に見えたそうでね、それでね是非ともその富士の山頂に立ってみたいと思ったそうだ、それで奴は最後の力を振り絞ったんだろうね、実際に行ってみたんだとよ、でもね、いざ登り始めると、そこは人もごみごみ、ごみもごみごみ、ごみだらけのごみの山、ごみが居座り、ごみの山居さ、遠くでみれば、あんなに綺麗だったのが、間近でみると凄く汚い、それでげんなり失望してね、登るのをやめて帰ってしまったんだとさ、その三日後だよ、逝っちまったよ。
八つぁんよ、富士も病だったんだね。
あぁご隠居、藤も病で枯れちまった。
ふじの病は、どうも縁起が悪いねぇ。
短々落語「ふじの病」
お後がよろしいようで。