十二月、せせらぎと独白
河原の、ちょうど高架下の、影になってるとこ、そう、そこでね、わたしは生まれてきたの。気づいたらね、そこにいたみたい。ひとりぼっちで、あるいは、ひとりぼっちのふりをして。ずっとそこにいるせいで、そこにいないときでも、そこにいるような幻覚が見えるの。こころのなかに、まるでその場所を飼っているかのように。それはなんだか、じぶんがその景色の一部になることに似ている。それはわたしにとって、このうえないしあわせのように思う。だって、わたしの家はそこなんだもの。わたしの帰る場所は、わたしを待ってくれている場所は、そこしかないんだもの。いってきますっていったら、いってらっしゃいって応えてくれて、ただいまっていったら、おかえりなさいって応えてくれる。いま、このときがしあわせなら、それ以外のことなんて、どうだっていいじゃない。わたし、母親の顔なんてしらないけれど、じぶんのこと、たったの一度だって不憫に思ったことないわ。同情のことばをかざされると、あなたたちみんな騙されてるわって、おかしくなっちゃう。ふふ、道化師はすきよ。孤独のなかの幸福も、幸福のなかの孤独も、分け隔てなく心得ているから。ねえ、わたし、ちゃんと孤独で、ちゃんと幸福よ。これだけは、誓ってふりなんかじゃないわ。沫雪、せせらぎ、茜空。わたしはそのすべてと交感して、架空のオペラに生まれ変わる。
十二月、せせらぎと独白