暗黒律

​──絶望する覚悟のない奴は、何も理解しようとするな。そんな囁きがまた聞こえた。僕は…僕は絶望したいのだろうか?絶望の果てに何が待ち受けているのか知りたいのだろうか?何も待ち受けてなどおらず、ただどこまでも空虚が拡がっているだけだとしたら​──その時僕は一体何を思うだろうか?僕は空虚に耐えられるだろうか?不可解な屈辱に耐えられるだろうか?僕は植物になりたいのだろうか?それともあらゆる感情を麻痺させて無痛になりたいのだろうか?それが僕の本望なのだろうか?それが僕の宿命なのだろうか?人知を超えた何かに翻弄されたいのだろうか?計算できない快楽に溺れたいのだろうか?軽蔑の眼差しで見られることに恍惚を覚えるだろうか?自分の内側に蔓延する一切の大衆性を、そして自己欺瞞を抹消できるだろうか?分離していく自分…分裂していく自分…分解されていく自分…思えば僕は自分の分身を殖やすことに夢中だった。それが僕には心地が良かった。臨死のような生き方は僕にとって理想であり憧憬そのものだった。止まない雨のように。明けない夜のように。僕は狂気そのものになる。絶望さえ快楽に変わる。理解も、絶望も、所詮は傲慢の一種だろう​──。僕は囁きに応え、愉快になって笑った。人知れず人間ならざるものに変貌していく、その幸福。僕は魔物と結託し、沈みゆく感覚に身を任せた。

暗黒律

暗黒律

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-07-02

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