たまゆらな命のひかり
ずーさでぃずむなしょうじょがかにばりずむを飼ってじゃれあうお話 ちょっとだけ惨い表現がある、グロいのが苦手で想像力が豊かな子はここでおしまいにしてね。思想が強すぎるわたしが書いたやつだから乱暴な文章だよ
。
ただいま、めるちゃん。
玄関の扉を勢いよく開けると、走り寄ってくる愛猫、めるちゃん。白いふわふわの毛の、みけねこ。首輪の鈴がちりちりと鳴り、昨日の夜を思い出して、背筋をなぞるような快楽が一瞬、走った。
わたしのことをかわいい顔で見上げるめるちゃん。そのつぶらな瞳の奥が、実は恐怖に塗れているんじゃないのかって思うだけで、愛おしくなった。手を広げると、恐る恐る腕の中に収まるから、そのまま階段を早足であがって、防音室に駆け込んだ。
抱えためるちゃんの背中に顔を埋めて、心臓の音を聞く。この子は、生きているんだ。ああ、愛おしい。
「今日は、死んじゃうかもね。お墓作ろうね」
庭に半径30cmの少し大きめな穴を掘り、ネットショッピングで買った小さな墓石を置く。筆ペンで書かれた『めるちゃん』の文字を、めるちゃんはじっと見つめた。この子が文字を読めたら、どういう顔をしていたんだろうね。ふふふ、と笑みが溢れる。
今日は、宙吊りから始めようね。
抱き上げためるちゃんを、冷水で軽く洗った。勿論、冷たさにびっくりしてお風呂から脱走をはかるから、電子レンジに突っ込んだ。
めるちゃん、めるちゃん。びしょびしょのままお部屋を走り回るなんて、だめでしょ。寒かったよね、乾かそうね。
めるちゃんをあっためている間、リボンの付いた銀に光る鋭いフックを、カーテンレールから垂らす。ぴかぴか光って、綺麗だった。はやく、これを使ってあげたいな、とうずうずする。
途端、濁点のついたようなめるちゃんの鳴き声が聞こえて、キッチンに駆け込んだ。わわ、忘れちゃってた。めるちゃん。
「どうしたの、苦しかった?まだちょっと濡れてる」
目の焦点があってなさそうで、綺麗な水晶玉みたいな瞳は模様が薄くぐしゃぐしゃになっていた。失明寸前だ。
毛の間から見える皮膚も、耳も、肉球も、それを舐めるめるちゃんの舌も赤くて、熱をもっている。すっごく痛そう。
口呼吸をしていて、喉がひゅーひゅー鳴っていた。きっとすごく、苦しいんだ。
わたしが思わず涙をこぼすと、めるちゃんがわたしの涙を舐めとってくれた。尋常じゃないくらい熱くて、ざらざらとした薄い舌がわたしの頬を撫でる。めるちゃん、めるちゃんめるちゃん。だいすき。
まだちょっと濡れてて、あったかいめるちゃんを抱きしめると、防音室までゆっくり歩く。肉球が熱くて、思わず1回階段から落としてしまった。
鈴がちりちりと鳴った。みゃあ、と鳴いて起き上がったあと、震える足で力なく歩き出す。まだ、死なないでよめるちゃん。
こんなことをしたのに、何度もわたしのところに歩み寄ってくれるめるちゃんが、わたしの足の甲に前足をあてて、わたしを見上げた。めるちゃんめるちゃん、めるちゃんめるちゃんめるちゃん!
いよいよわたしの中のなにかがプツンと切れて、そっとめるちゃんを抱き上げて防音室に駆け込んだ。カーテンレールに吊るされたフックが、輝いて見える。
フックの先をめるちゃんのうなじに目掛けて、振りかざす。
耳を劈く、今日一番苦しそうな、うめき声のようなものが部屋に響いた。思わず胸がきゅっと締め付けられる。
そのまま暴れてわたしの腕を引っ掻くから、手を離した。勢いよく窓にぶつかって、跳ね返っためるちゃんがみゃああ!と鳴きっぱなしだ。じいっと、一秒も見逃さない、という気持ちで見つめる。
やがて、鳴き声が止んだ。よく見ると、手がぴくぴく動いていて、まだ生きてるの!と声をかける。頼りなく小さな鳴き声をもらすと、間もなくして腕の力がふらっと抜けた。くるくると、びくともしないめるちゃんが回る。
首を吊って死んでしまっためるちゃんはそのまま、わたしのお家のインテリアとして飾られていたけど、少し経つと腐敗臭が他の部屋まで充満するようになったので、その翌日に新聞紙に包んで燃やせるゴミとして捨てた。
たまゆらな命のひかり
途中だわ