空搖れ
故郷へ かえるまえに 故郷をわすれよう かな 何一つ知らない街でしかあなたには会えないのだ と 心臓をはしる音が 軋んでさけぶ
亡霊の町へ来てしまったみたいぜんぶ赤いぜんぶ痛いけど(駅に降りるからです)どうでもいい 生温い血ってなによりなつかしいんだって夕立のなかにたおれてわらった 亡霊たちも(ころして とわらった
それからしばらく 車窓が軋んでさけぶ 家々の屋根の瓦や川辺に転がる石のひとつひとつ ビルのきらめき もう地平線のどこにもきみの香りはしない みどり色の座席がしんと冬色に冷えていく しかし宇宙のいちばん真ん中から音がきこえて 予感する、と言うのだろう (なにも終わらないよ、なにも終わらない)
空搖れ