亡霊
もう終わりにしたい。そんなふうに思いつづけ、結局、依然生きながらえている。臆病者だ、自分は。
惨めな奴だ。
いつかの断片の切っ先が突き刺さっている、
胸の深奥に、無数に。
戻らない日々だけが愛しくて、
残酷なほど美しくて。
繰り返す日々の中でみえるのは、面影だけ。
過去の色彩に彩られた、くすんだ現在の上。
砂上に花を幻視して。
一輪の花をとらえて。
夢から醒めないうちに死なないと、
それは真実にならないのにね。
最期まで、不器用だね。
囚われていた日々が、
魘されていた日々が、
幸福な記憶もろとも、
泡沫のように弾けた。
亡霊