羽

鳥の様に飛べたなら……


この場所も、今日でおさらばだ。
半年弱の数ヶ月、
もう見ることのない景色の中で。
ここは、あまり良い環境ではない。
強いて言えば、自然界と混じり合った場所、山や川が近くにあるからだろう。
冬から初夏へ、様々な色を見た。
その間、ぼくの心も色々だった。
泣いた事もある、怒った事も。
悔しい事、笑って居た時もあったな。
袖の長さもだいぶ短くなって、
燕たちが空高く舞って居る。
野良猫はしょっちゅう彷徨いていたし、農道のアスファルトには亀が歩いて居た。混じり合ったと言ったが、まんま自然界の中にいたのだろうな。
親しい人もできた、ココを離れてもまた連絡してどこかで宴をする予定だ。
さぁ、また新転地を探さなくてはならない。

そう思って帰路に就く前、真上から一つの羽が舞い降りる。
そうだ、燕たちも巣立ちの頃……

「君も頑張れよ!
ボクらも頑張って居るからなぁー」

と、そんな無言のお別れの挨拶に感銘して大人気なくも、その羽を持ち帰る事にした。

"よし、ぼくもこれから
羽ばたくぞぉー!!"

西陽が沈みかけた山間に、ぼくの心の叫びが静かにずっとこだました様だった……。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-06-25

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted