夢現


昨日轢き逃げた野良猫が

僕を裁きにやってきた


これは僕だけの記憶だ。


我に帰ると柔らかな暗闇で

あの急ブレーキを思い出した

野良猫は死んでなどいなかった

ひび割れた新品のCD

永遠に耳に届くことはない




翌朝、猫は死んでいた。




僕が助けたはずの猫は

臓物を散らして転がっていた

ひび割れたCDが鈍く光った

永遠に耳に届くことはない




紛れもなく僕の現実だった。

夢現

夢現

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-06-24

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