無限の森
Twitterの詩まとめ
夏呼吸
空気をすってくるしい夏
とうめいな水滴がのどを潤す夏
終わればかなしい花火があがる
息苦しさと熱気の中で見た悪夢
手と手をつないでひぐらしの声
来年も、再来年も、ほらきっと
むなしい約束ばかりして
ぼくらはやることばかりに追われ
ほらまた、気付けば夏がきた
鎮痛剤
何にもつけられぬ薬をぬる
どうかわたしを
なおしてください
神に祈る気持ちをもって
わたしの今夜の鎮静剤
からの瓶から声がする
はれたこころにお薬を
とげをぬいたらお薬を
夜半の思いよ、夜明けの痛みよ、
広い腕にて
なにもかもすべて
かえるところがあるのなら
そのうではわたしを迎えいれて
なんどもやりなおしては
再び旅を選ぶでしょう
憂鬱的起床
仄暗い今朝は泣いて目覚めて
夢と現実の境目を泳いでいた
もう、朝ですよの声
まだ、夢ですよの声
リフレインしたまま起き上がり
今朝は何を信じよう
憂鬱的起床II
朝日を浴びることもなく
予定に蝕まれる心地で
何もかもが暗鬱な今日
生き延びること
最重要事項とする
TO DOリストには踊らされない
見出し無し本文
ことばをすくって
わたしをすくって
はやくみつけて
かぎをみつけて
ここからでるため
そとのひかりを
こくふくして
こわいことだらけ
それでも
いきのびるために
その血、その息、その脈で
蜻蛉
羽根、目玉、
そこに映るセピア
通り過ぎるノスタルジア
ススキのうねりに悲しさを
わたしの中でとけてゆく
錠剤と感傷、不安定な配合
恐怖的正午
空虚をきざんでる
時計にうばわれた
なにかを失った私
それすら忘れていく
正午は孤独の背後霊
夜間は空洞の音がする
忘れていく日々
ふるえるいのち
寿命を食べ散らかして
泣きわめいて生きている
病状
脳がふるえることを
そのまま告げても伝わらず
この症状には名前もつかず
私は一人取り残された待合室
私の心臓を刺しにくる寂しさ
知っていたこと
死神は存外白いもので
口調は人より紳士的で
甘い言葉でさそい
詩へのいざない
瑣末な雑事が私のを揺らす
脳が震えて脈拍は早いまま
御伽噺病
お前は毒殺されるんだよ
白雪姫は鏡に告げられる
お前は泡になる運命にある
王子は人魚姫に告げて死ぬ
眠りから覚めて
悪夢から覚めて
出会わなければ回避できる
知らなかったら出会わない
運命論の上で踊り続ければ
いつかみんな綺麗な栞になる
蛹
みなもをすべる妖精の夢
海をこえてこの島に生きた蝶
持ち帰った金のたまごから
進化の炎を燃やしている
それは約束だった
文明の果てに見つけた砂時計
いつか天地がひっくりかえる日
あの日の約束は
時計の針と踊るだろう
回る回るこの星の上で
いくつもの奇跡を起こしてきた
蛹II
わたしのふるいぬけがらから
ほのおのとりを生んでみせる
わたしの死んだたましいから
せいめいのみずをわきあがらせる
わたしのくだけた夢の破片から
あらたな希望を見つけてみせる
Pandōrā
全ての言い訳のための運命の女
そのために生まれたなど
認めなくていい
全ての罪をあなたに負わせた
その行為その罪深さを睨むといい
あなたはただ生きていた
あなたはただ退屈していた
全て仕組まれたことだった
あなたが災いなのでは無い
あなたに罪など無いのだから
Lilith
二番目の女の運命を
一番目の女は全て知っていた
与えられた楽園よりも
自ら創造する喜びを知っていた
箱庭で生きるより広い遊び場
全知をもってもこの世は面白い
善悪のセパレートの上で踊る
影に怯える人類を尻目に
この血で大地から何を生む
わたしは人にも一にもあらず
夕暮れ鯉の皿
空虚をも飲み込む巨大な鯉が
夕暮れをゆうゆうと泳いでいる
人々の陰鬱な今日の記憶を
美味しそうに食べている
夕暮れに塗れて朱色は濃くなる
ため息は最高のご馳走だった
少年少女息を止めるな
鯉は涎を垂らして待っている
夕方からの優雅な食事
誰にも見えない大食の鯉
ra…
宇宙の何処かの花嫁へ
あなたにおめでとうを言いたくて
夢で辞書を引いていました
アイスクリームを囲みながら
異星人たちと交流をして
私はあなたへの手紙を書きました
ここのレストランは最高です
小さな村で繁盛してます
あなたを祝いたい気持ちです
遊びながら理解しよう
balance
水分量が乱れてる
周波数が乱れてる
私の体内をかけまわる
水、水、水
私を元に戻してと
誰かに祈る夜
何かが欠けている気がした
満たされていた記憶があるから
私に足りない何かがあることに
気がついてしまったのは
不幸中の幸いか
ただの不幸な出来事か
欠如
満たすためにしていない
ふさぐためにしているの
過度な行為をくりかえす
私の叫びを私は聞いてる
聞こえなくなったなら
私の終わりだと知る日
私にできることは
止めることではなく
聞くことであった
恨んでなんかない
ただ悲しさが込み上げて
ただ寂しさが込み上げて
罪悪感で埋めている
悠久孤独の輪の上で
こころをふさいで
ふさいだきもちは
空に投げても戻ってくる
重力も引力も私を救わない
月の姫君は迎えを待っていたはずだ
ずっとここにいたかったわけがない
そんなことだれにもわからない
だからわたしのことも
だれにもわからないのは
当然だった
今私が流すのは
誰にも知られなかった涙
無限の森
無限に咲く
無限に育つ
宿る言葉は君に捧ぐ
君に無限の言葉を降らせる
雨を降らせる私のなぐさめ
そこに救いを求めないこと
そこに癒しを求めないこと
信じるのは己の感性だけだ
それだけを磨き続けるものが才能だ
雨に洗う魂は私の森を深くする
君の輝く魂が満点の星すら凌駕する
無限の森