独占欲

 平然と、きみを、傷つけたひとを、ぼくはゆるさないと思うよ。きみ以上に。
 夏がきて、腐りはじめるものがあって、どうせ、それらはみんな、循環機能とやらにとりこまれて、きっと、またどこかで、芽生える。きみが、ぼくの心臓である。呼吸のしかたを、ときどき、わすれる。校舎のかたすみで、水もあたえられずに、ひっそりと死んでいった、花壇の花たちを弔う少女がいて、少女の白く、ちいさな手を慈しむ、きみが、うつくしくもあり、みにくくもある。化け物の面をかぶれば、だれもが、あくまになれる真夜中に、どうか、きみだけは、何者にもならないでくれと祈るのだ。少女の、栗色の髪。きみの、かわいらしい爪。世界の陰からみつめている、なにか。蝉が目を覚ます頃に、きみを、ぼくのからだにとかしたい。

独占欲

独占欲

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-06-20

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