短々落語「豆腐の角」
400文字以内のショートショート落語臭
「豆腐の角」
どんどんどん、
ご隠居てぇへんだ、てぇへんだ。
どうしたんだい、八つぁん、朝っぱらから。
食い逃げ、食い逃げ。
八つぁん、そう慌てないで落ち着いて、話を聞かせておくれ。(ご隠居さんにそう諭された八つぁん、ごくりと唾をのみ込み)
うん、豆腐屋の旦那の話だよ、ひと月前からふらっと男がやってきて、よほど腹を空かしていたのか、出された豆腐をペロリと食べた。代金の四文が無いから今度纏めて払うと言う、それからずっとツケ、それが今朝になって奴はこない。旦那は思ったね、これは新手の食い逃げだ、と。
まぁまぁ八つぁん、そう熱くならないで、で、奴はどんな風貌だい?
うん、背は低くて小太り、歳は三十手前、一見、海の王子風だって。
そうかい、では彼を見かけたらこう言っておやり、豆腐の角に頭打って死んじまいな。
(翌朝)
どんどんどん、
ご隠居てぇへんだ、てぇへんだ、食い逃げが、豆腐屋の角で頭打って死んじまった。
短々落語「豆腐の角」