短々落語臭

紫紺亭 弁当

400文字以内のショートショート落語臭。題して「短々落語」。

「木綿の」

ご隠居(  いんきょ)ちょっと聞いておくんなせぇ。

なんだい、八つぁん(はっ      )

遠距離恋愛の話さ。故郷(こきょう)を離れ都会で働き始めた若い男が、残された恋人に手紙を送ることにしたんだ。君への贈りもの、探す探すつもりだ、とね。彼女は欲しい物はない、ただ都会の絵の具に染まらないで帰って、と返す。半年が過ぎ、男は、逢えないが泣かないでくれ、と流行(はやり)の指輪を送る。女は、あなたのキスほど優るものはないと拒む。すると男は、見間違うようなスーツ着た僕の写真、写真を見てくれ、と手紙を送る。やがて男は、君を忘れて変わってく僕を許して、僕は僕は帰れない、と手紙を出す、それで女はこう返信する、最後のわがまま、贈りものをねだるわ、木綿の…、と書いてあって肝心の木綿の後が涙の跡で滲んで読み取れない。で、男は考えたね、彼女は何が欲しいのかと。

で、どうしたんだい、その男は?

うん、それで、木綿の豆腐、送っちまった。

八つぁんよ、なんとも切ない話だね。


 

「豆腐の角」

どんどんどん、
ご隠居(  いんきょ)てぇへんだ、てぇへんだ。

どうしたんだい、八つぁん(はっ      )、朝っぱらから。

食い逃げ、食い逃げ。

八つぁん、そう慌てないで落ち着いて、話を聞かせておくれ。(ご隠居さんにそう諭された八つぁん、ごくりと唾をのみ込み)

うん、豆腐屋の旦那(だんな)の話だよ、ひと月前からふらっと男がやってきて、よほど腹を空かしていたのか、出された豆腐をペロリと食べた。代金の四文が無いから今度纏め(まと  )て払うと言う、それからずっとツケ、それが今朝になって(やつ)はこない。旦那は思ったね、これは新手の食い逃げだ、と。

まぁまぁ八つぁん、そう熱くならないで、で、奴はどんな風貌だい?

うん、背は低くて小太り、歳は三十手前、一見、海の王子風だって。

そうかい、では彼を見かけたらこう言っておやり、豆腐の角に頭打って死んじまいな。

(翌朝)
どんどんどん、
ご隠居てぇへんだ、てぇへんだ、食い逃げが、豆腐屋の角で頭打って死んじまった。

 

「隣の客」

ご隠居(  いんきょ)てぇへんだ、てぇへんだ。

どうしたんだい、八つぁん(はっ      )

隣の家に囲いができちまった。

そうかい。それで、どうしたんだい?

隣の竹垣に竹立てかけた。

へー。

そしたらね、隣の竹垣に竹立てかけた竹から、蛙ぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ、現れたので、あっしは、赤巻紙、青巻紙、黄巻紙、持ってご挨拶にあがったのさ、するとね、赤パジャマ黄パジャマ茶パジャマ着た坊主がでてきて、坊主が屏風に上手に坊主の絵を書いた、驚いたあっしが庭先を見ると、そこには、柿の木柿の木かきくけこ、だからあっしは思ったね、隣りの客はよく柿食う客だってね、聞けばお勤めは、東京特許許可局、東京特許許可局許可局長。

八つぁん、よく噛まずに言えたね、見直したよ。だけど八つぁん、生麦、生米、生卵の基本を忘れているよ。そこは、赤巻紙、青巻紙、黄巻紙だけじゃなく、生麦、生米、生卵も持っていっておやり。

 

「駄洒落」

ちょいと、ご隠居(  いんきょ)聞いてくんねぇ、今度、熊さん(くま    )と一緒に、M1(エムワン)に出ようと思ってるんだ、飲む乳酸菌じゃないよ、それはR1(アールワン)、M1はその年の漫才王者を決める大会さ、な、熊さん。

あいよ、八つぁん(はっ      )、なんせ優勝賞金1千万円、なんか汗水流して働くのが馬鹿(ばか)らしくなってくらぁな。

そうかい、そうかい、熊さんに、八つぁん、わしは汗水垂らして働くのが一番だと思うがね。

まぁまぁご隠居、そう固いことを言わず、あっしらの演目「駄洒落」のさわりを、ちと見ておくんなせぇ。

八「どうも~八つぁん熊さんです」
熊「隣の家に囲いができたらしいよ」
八「へぇ〜」
熊「中国人が瀬戸物を落とし割っチャイナ」
八「かびーん」
熊「家の前にクソが落ちてたよ」
八「ふんがいだね」

どうだい?ご隠居。

う〜む。(なんといっていいやら、考えこむご隠居、すると、ポンと膝を叩きこう言った…)

二人(ふたり)とも、くだらない洒落は、やめなシャレ。

 

「新番組」

ご隠居(  いんきょ)、てぇへんだ、コロナの再拡大だ。

八つぁん(はっ      )、慌てない慌てない、明日から又まん防だよ。

なんだい、まん防って?

知らないのかい?「まん延防止等重点措置」の略だよ。一部の輩はその呼称が気に食わない様だが、そんな事はさておき一向にコロナは収束しないね。

ご隠居、そいつは知らなんだ、蟻が(あり  )十匹(じゅっぴき)有難う(ありがと  )


(一週間後)
ご隠居てぇへんだ、今度は、ちん防だって。

八つぁん、なんだい、そのちん防って(やつ)は。

ご隠居知らねぇのかい、客の長時間の滞在を防止する「沈滞防止等重点措置」だよ、ちん防はその略でさぁ。

八つぁん、勉強になったよ、蟻が十匹有難う。

(時は夕刻)
ご隠居、居るかい?、新番組が始まるよ。

八つぁん、なんだいそれは?

ご隠居知らねぇのかい?、コロナ対策の新番組「まん防ちん防コロナ予報」だよ、ほら始まるよ。(その世紀の放送「まん防ちん防コロナ予報」が始まると、新型コロナはみるみるうちに…)

 

「なんか違う(違和感)」

ご隠居(  いんきょ)、いるかい?

なんだい、熊さん(くま    )

ご隠居、話したい事があるんだけどちょっといいかい?

いいよ熊さん、話してごらん。

先日飲み屋で一人飲んでたら隣の会話を小耳に挟んだんだ。男はボンボンらしく初めての海釣りで口のでかい魚を釣った、こんな魚は見た事ない、世界中の海にいるのか知りたくなって世界一周した、そして彼女に自慢げにこう話したんだ、“世界は人種のうつぼ、だけど、人に会うたびにそんな魚はいない、うつぼをぬかすなって言われたよ(笑)”ってね、おいらはこいつ外国語もわかるんだ凄いな、なんて感心したけど、なんかこう違和感を感じてね、地下鉄をどこから入れたのかと同じくらい考えだしたら夜も寝れねぇんだ。

熊さんよ、それは釣った魚がうつぼで、坩堝(るつぼ)とうつつの聞き間違えじゃないのかい。

いやいやご隠居、何度も同じ話をしていたから、うつぼだよ。ほらみて小耳にイカ。

熊さん、それを言うなら、耳にタコだよ。


 

「不是」

ご隠居(  いんきょ)、居るかい?

いるよ八つぁん(はっ      )、どうしたんだい?

なんで醜い(みにく  )女をブスっていうんだい?

随分とやぶから棒だねぇ、まぁいい教えるよ。漢字が中国から伝わった事はお前さんでも知っているだろう、日本語の「いやダメ違う」を、中国では是という漢字の前に、否定の「ふ」の字をつけて「ふこれ」と書いてブースーと読む。昔、中国から日本にきた女に色々な物を差し出すが、事あるごとにブースーと返された。いつしか女をブースーと呼び、それが縮まってブスさ。容姿も心も醜かったのであろう。

これはいい事聞いたね、ご隠居ありがと。(八つぁん話したくて仕方ない、すると向こうから…)

よっ熊さん(くま    )、なんでブスか知ってるかい?

なんだよ八つぁん、やぶから棒に。知らねぇよ。

では、昔、中国から日本に女がきた、日本人は女に色々な物を差し出すが、女は…(あれ何だっけ)

どうしたんだい、女は?

ブーと屁をかましスーと逃げた、それでブスさ。

 

「平行線からの」

(え~毎度(まいど)ばかばかしい話を一席。世の中には自然が溢れ人類が作り出したものが数多くございますが、ひとそれぞれに感じ方は異なるものでして…)
まぁまぁ、熊さん(くま    )八つぁん(はっ      )、お互いそうむきにならなくても、いいじゃないのかい。

草木といったら、熊さんは、桜だ、と言うけど、やっぱり、あっしは松だ、そうですよね、ご隠居(  いんきょ)

文化文明といえば、八つぁんは、自動車というけど、やっぱりあっしは教会建築だね、そうでしょ、ご隠居。

まぁまぁ、お二人(ふたり)さん、おら待つだ、おらサクラだ、なんて互いに言い張ってたら、いつまでたっても平行線のままだよ。このまま打ち解けなくて、つまりだな英語で言えばファミリアだな、このままファミリアしなくてもいいのかい?(すると、ご隠居、(ふところ)から札束をだし、ポンと二人の前に置いた…)

八つぁんに熊さんよ、これで、サグラダファミリアにマツダファミリアで旅をしな。そうすれば思い違いもファミリアなりさ。

 

「八卦飴」

ご隠居(  いんきょ)何だい(なん    )これ?
それかい、金なら1枚銀なら5枚銅ならタダでお菓子の缶詰が当る応募券さ。八つぁん(はっ      )にあげるから試しに応募してごらん。
当るかな。
昔から、当るも八卦(はっけ)当らぬも八卦、というじゃろ。
なんだい八卦って。
八卦は占いの事、易で陰陽を示す八種の算木から来ている。つまり占いは当てにならないって事だね。
ご隠居ありがと。これ頂くよ。

(数日後)
ご隠居てぇへんだ、お菓子の缶詰が当っちまった、ほら。
随分と大きな缶詰だねぇ、何々(なになに)ラベルに「当たるもはっか当たらぬもはっか」とあるよ、八つぁん(ふた)を開けてごらん。
ガッテン承知の助(しょうち  すけ)。(うーんと唸り苦戦する八つぁん、とパカッと蓋が開いた)
ご隠居、飴玉がたったの一つ。
それは何とも味気ない。
あれ、おみくじもあるよ、どれどれ(八つぁん、おみくじを開封して読みあげた)
大けち、凶、ここは一つ、はっか飴を舐めてスカッとすべし
なめた話だね。

  

「食通」

ご隠居(  いんきょ)ちょいと話を聞いておくんなせぇ。

なんだい、八つぁん(はっ      )

此間(この  )ね、店に入ったんだ。そしたら見るからに「私グルメです」みたいな野郎が入ってきてね、「大将まずはいつものやつね」と言って席に座ったんだ。そいつは壁のメニュー札を端から舐めるように見て「最近の若い(やつ)は食べ方をしらん」って、こっちをちらりと見ながらぬかしやがるんだ。そしたらね「大将、今日のお勧めは?」なんてことを厨房に向かって大声で聞きやがった。でもね、返しなく店はシーンと静まり返った、流石(さすが)にバツが悪くなったのか、その野郎「春はサワラかな、魚編(さかなへん)に春と書くし」なんてことをぶつぶつ言ってたら、厨房から若いアジア系の男が出てきてね、お冷( ひや)を奴の前に置いたんだ。そしたら奴、その若いのに「今日は大将のお任せにするわ」と言ったんだ。若いのは困惑した顔でね、
「牛丼(並)でいいですか」と聞くと、奴はこう答えたよ、

「はい、つゆだくで」。


面倒な(めんどう )野郎だねぇ。

 
 

「たらねち」

(もしあの時こうしていたら、こうしていれば…。「たられば」は世間ではよくある話でして…)
八つぁん(はっ      )、どうだい?(見合い写真を渡す)
ご隠居(  いんきょ)別嬪(べっぴん)だね、お付合いできるのかい。
あぁ向うは乗り気、だが訳ありじゃ。
なんだい、訳ありって。
性格に難、でも試すのもよかろう。(こうして付合いが始ると二人(ふたり)悉く(ことごと  )…)

女「たらたら言うもんじゃないよ」
八「ねちねちいつもうるさいね」
女「いつもって何よ、どこがうるさいのよ。あんたこそ常にたらたら」
八「又々(またまた)、ねちねちうるさいね」
女「又々って何よ、もう鱈々(たらたら)いうな、鯖々(さばさば)して」
八「お前こそ、ねちねちやめろ鱚々(ぎすぎす)するな」

(まるで魚屋の喧嘩(けんか)の様(  よう)な二人の言い争いは(ちまた)でも話題となり、やがてそれは「たらたら言ったらねちねち」「たらたらねちねち」に変り、ついには…)
ご隠居、また「たらねち」だよ。ご隠居が八に(はち  )写真を見せなければねぇ。

熊さん(くま    )、「たられば」はおやめ。

 

「天衣無縫」

(世の発明はいつでも注目されるもので、それが若い女性の発明ともなれば、俄然脚光をあびるものでして…)
ご隠居(  いんきょ)、テレビ中継始まったよ。

八つぁん(はっ      )、なにかい、この割烹着(かっぽうぎ)姿のお嬢さんが発明したというのかい。

そうだよ、ほら記者会見が始まるよ。


記者「本当に作れるのですか?」
女「はい」
記者「別の論文ではできないとありますが」
女「できます。今からそれを証明します」(と、女は割烹着を脱いで裏返しそれをカメラに向けます)
女「よく見てください。この縫い目を」(フラッシュ音と閃光が彼女を襲います)
女「まつりでも、かがりでもない、ましてや、なみとは一線を画する全く新しい縫い方です」(おぉーと会場がどよめきます)
女「この段々とステップを踏むような縫製を私は見つけました」
(いきり立つ 記者)「で、それは何ですか?」
女「STEP裁縫(さいほう)。ステップ裁縫は、あります」


八つぁんよ、彼女は天衣無縫(てんいむほう)だねぇ。

 

「かい文遊び」

ご隠居(  いんきょ)いるかい?
なんだい八つぁん(はっ      )
三日前から変な手紙が届くんでさぁ((ふところ)から三通の手紙を出し渡す)
何々(なになに)、三日前が「トマトと的(  まと)」、一昨日(おととい)が「確かに紳士に貸した(たしかにしんしにかした)」、そして昨日(きのう)が「世の中ね顔かお金かなのよ(よのなかねかおかおかねかなのよ)」、一枚にたったのこれだけかい。
あぁ、差出人の名も住所も書いてねぇ。気味悪い手紙だよ。
ははぁーん、八つぁん、これは回文だ。
なんだい、回文って。
上から読んでも下から読んでも同じになる文だよ。
どれどれ、トマトと的、下から読むと、とまととまと、あら本当だ、面白いねぇ。
八つぁん、これは子供の悪戯(いたずら)じゃないのかい。又来たら見せておくれ。
合点(がってん)だ。


(後日)
ご隠居てぇへんだ、回文じゃない怪文がきちまった。

八つぁん、何言ってるんだい、落ち着いて見せておくれ。(手紙渡す)
何々「金ダセ子は預カッた(かねだせこはあずかった)」、確かに回文じゃないね、怪文だね。

ご隠居、どうしよう。

慌てなさんな、お前さん、子、いないじゃないか。


 

「鳩豆」

八つぁん(はっ      )、どうしたんだい、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして。

ご隠居(  いんきょ)なんだい、それは。鳩が豆鉄砲を食べちゃったのかい、そんな話あるのかい。

違うよ八つぁん、この「食った」はモグモグ食べる事じゃなく、くらった、の意味、つまり豆鉄砲で撃たれたという事じゃ。

それじゃぁご隠居、鳩が豆鉄砲をくらったような顔ってどんな顔だい。小目々(こめめ)で赤く、口がこう(くちばし)みたいに尖った顔かい、あっしの顔がそんなんになっちまったというのかい。ついでにポッポーと鳴くとでも。

お前さんも、いちいちうるさいね、何もお前さんが鳩顔とは言ってない。突然の事にびっくりして、きょとんとしているさまの例え(たと  )じゃ。鳩が豆鉄砲で撃たれて驚き、何が起こったのかわからず、(そば)に落ちていた大好物の豆にも気付かなかった、これが由来じゃ。わかったかい八つぁん、ところで何にそんなに驚いているんだい。

あっそうそうご隠居、頭に、鳩の糞(    ふん)

それを早く言いなさい。


 

「ふじの病」

ご隠居(  いんきょ)、悲しまないで聞いておくれ、あの不二衛門(フジエモン)が死んじまったよ。

人は見かけによらないもんだねぇ。上々にそして離婚後も、あんなに元気そうにしてたのに。不治の病だったんだねぇ。

それでね、ご隠居、これは後から聞いた話だよ。病室の窓からは、手前には紫の(むらさき  )藤が、遠くには、青く富士の山がえらく綺麗に見えたそうでね、それでね是非ともその富士の山頂に立ってみたいと思ったそうだ、それで(やつ)は最後の力を振り絞ったんだろうね、実際に行ってみたんだとよ、でもね、いざ登り始めると、そこは人もごみごみ、ごみもごみごみ、ごみだらけのごみの山、ごみが居座り、ごみの山居(やまい)さ、遠くでみれば、あんなに綺麗だったのが、間近でみると凄く汚い、それでげんなり失望してね、登るのをやめて帰ってしまったんだとさ、その三日後だよ、逝っちまったよ。

八つぁん(はっ      )よ、富士も病だったんだね。

あぁご隠居、藤も病で枯れちまった。

ふじの病は、どうも縁起が悪いねぇ。


 

「饅頭屋こわい」

店主、お勧めは何だい(なん    )

えーうちは桜餅が有名(ゆうめい)三つ(み )入りが定番、二入(ふた  )りもよく出ます。

どれどれ、この桃色に綺麗に染まっているやつかい。

えぇそうでやす。最近顔料が高騰し、手に入らないもんでして職人が身を削って染めております。

あぁそうかい、それにしても随分と一つが大きいねぇ。

えぇそうでやす。うちは個数ごとの入れ替わり専属制をとらせて頂いております。あっちの指3本機械で落とした者が3つ、あっちの指2本ない者が2つ入りの担当でございます。やはり糯米(もちごめ)品薄(しなうす)で、こちらも職人が身を削りながら作っております。

一ついくらだい。

外装の(ふた)ありと蓋なしで値段は異なります。蓋ありで一つ百円、なしで一つ十万でございます。

えっなにかい、蓋なしの方が(  ほう  )高いのかい。

えぇ蓋一つ百万となりますので。何しろ命がかかっているものでして。

それを言っちゃ、身も(み )蓋も(ふた  )ありゃしない。

旦那(だんな)馬鹿(ばか)な事を言っちゃいけません、五つも(い  )四つ(よ )もございます。



 

「茶番」

ごめんよ。

いらっしゃいまし(きちまったよ、噂の道楽旦那(だんな)が…)、どうぞこちらへ。

お見受けした(ところ)、茶に精通したお茶屋とみた。

えぇ、だいだいやっておりまして。

では抹茶を一つ。

かしこまりました。(奥に戻った店主、おかみさんとやり合います)


(お前さん、だいだい、だって。だいだいって言っても先祖は蜜柑農家じゃないか、お茶屋始めたのは三日前だよ)
(だいだい)を作っていたんだから、間違ってないだろ、そう茶々を入れるなよ)
(いいのかい、お前さん、水に緑の絵の具を溶いたもの出しちゃって)
生憎(あいにく)、抹茶切らしてるんだ、わかりゃしないよ、これで茶を濁そう)


お待たせしました、秘伝の抹茶でございます。ごゆっくりと。

目に映えるビリジアン色、では早速。(ゴクリと旦那が一口、口に入れると顔が歪みます)

おーい店主、ちょっといいかい。(お前さん、茶番に気が付いたんじゃ…)

はい、何でございましょう。


茶筅(ちゃせん)をもってきておくれ。混ざりが足りぬ。



 

「願かけ」

熊さん(くま    )、知ってるかい?

なんだい、ご隠居(  いんきょ)

落語が小学生の国語の教科書に載る時代になったよ。

なにかい、小学生が落語を習うのかい。こいつは面白れぇ、これで日本の将来は、笑いのウツボでさぁ。

熊さん、それを言うなら、笑いの渦だよ。ウツボじゃなく、くれぐれもうつつを抜かすんじゃないよ。

あいよ。


(年が明け、一月睦月(むつき)の寒いころ)
ご隠居てぇへんだ。

どうしたんだい、熊さん。

寄席(よせ)沢山(たくさん)の若者が並んでらぁ。おいよせ、なんつって。

それがどうしたっていうんだい。

何でも皆が皆、赤い本をもっているんだ、だから、おいら不思議に思ってね、今聞かないと、夜もよちよち寝られねぇと思ってね、そうそう、おいら地下鉄をどこから入れたか考えだすと寝れなくなっちゃうタイプだろ、でね、ちょいと尋ねたんだ、そしたらどうやら皆さん、大学の受験生らしい。

熊さん、それは紫紺亭の十八番(おはこ)を聴きに行ったんだよ。

なぜだい。

落ちがないからね。つまり願かけさ。

 
 

「新撰組」

(幕末明治維新に限ら(かぎ  )ず世を変えてやろうと血気盛んな人達はいつの時代もいるものでして…)

「本日はお足元の臭う中、ここ池田屋まで弊社発表会にお越し頂き誠に(まこと   )誠に有難う(ありがと  )御座います。私し(わたく )、本日の司会を務めさせて頂きます、勇み足(いさ    )こと近藤勇(こんどういさみ)でございます。何卒宜しくお願い申し上げます。

 社運をかけた新商品、長い臭い(にお  )の力と書きまして、長臭力(ちょうしゅうりき)、この新型芳香剤のご説明の前に、まずは私ども「新撰組」幹部を紹介させて頂きます。

 向かって左より掃除担当、沖田総司(おきたそうじ)、続きまして永倉新八(ながくらしんぱち)斎藤一(さいとうはじめ)、松原、武田、井上、谷、藤堂、鈴木、原田、以上、副長総勢10名でございます」


(すると会場の一人が手を挙げます)
「はい、そちらのおじん、いや御仁(ごじん)、何でございましょう」


「水戸から納豆に合うネギ背負っ(しょ )てきました芹沢と申しやす。えぇ、あちらで頬杖(ほおづえ)ついて寝そべっているお方はどちら様で?」
(すると近藤勇が答えた)


土方(ひじかた)つくぞう、弊社社長でございます」


  

「むむむ」

お客様ようこそ、当店は牛蒡(ごぼう)ジュレの三ツ黒星レストラン。コースの中からお料理をお選び頂けます。

(メニュー開く)
あれ、前菜、主菜、デザート夫々(それぞれ)に一品しか書いてないよ。

はい、それが本日の料理となります。

じゃぁそれを。

念のため料理名をお読み頂きたく思います。

(むっ)こんな長い名を読むのかい。

はい、言った言わない防止の為です。仮名(カナ)も振ってあるのでご理解を。

(むむっとするねぇ、三ツ星だから仕方ないか…)何々(なになに)前菜が、ジュレむジュレむ牛蒡の擦り切れ櫓工事の味噌麹風(ごぼうのすりきれやぐらこうじのみそこうじふう)サラダ、主菜は、ジュレむジュレむ牛蒡の(ごぼう )擦り切れ(す き )櫓工事(やぐらこうじ)味噌(みそ)(こうじ)貝アサリ排除(かい      はいじょ)水餃子(すいぎょうざ)、最後デザートが、ジュレむジュレむ牛蒡の擦り切れ櫓工事の味噌麹貝アサリ排除の水餃子ぽんぽこりんのシューリング、シューリングの林檎(りんご)パイ。


有難う(ありがと  )ございます。ではご注文を繰り返させて頂きます。前菜がジュレむジュレむ牛蒡…

(むむむ)
もういい、この店は星じゃなく、“む”が三ツ!


 

「南の瓜」

(え~毎度(まいど)ばかばかしい話を一席、お付き合いのほどを。世の中には、現物を持たず、先の将来にそれを決め値で売り買いする、なんてちょっと胡散臭い(にお  )商い(あきな )もあるようでして…)

かぼちゃ、唐茄子(とうなす)、パンプキン、どうだいどうだい、南京(なんきん)が安いよ。よっ、そこの旦那(だんな)、かかぁへの土産話(みやげばなし)に一つどうだい?

かぼちゃ、いくらだい?
キロ百円でさぁ。

唐茄子は?
キロ百円でさぁ。

では、パンプキンは?
キロ百円でさぁ。

じゃぁ、南京は?
キロ百円でさぁ。

どれも同じなのかい。

当り前田(まえだ)大車輪(だいしゃりん)キック、どれも南の瓜の呼び名ですがな。旦那、知らないのかい?こう見えて素人(しろうと)さんだね。

本当に同じ南の瓜で名が違うだけかい、折角なので貰おうかね、試しにかぼちゃとパンプキンを一つずつ持ってきておくれ。

旦那、馬鹿(ばか)言っちゃぁいけねぇ、ここにはありませんぜ。

ここにないって、どういうことだい。

旦那いやだなぁ、南の瓜だけに、「からうり」と相場は決まってらぁな。


 

「つるとかめ」

昔々(むかしむかし)の事じゃった、かめが車内で立っていると、優先席が一つ空いたそうな。かめがそれを見つけると、我先(われさき)にと言わんばかりに向かったそうな。誰にも邪魔されず、やっとこさ腰かけようとした時じゃった、細身(ほそみ)のつるが、つつーと横から入り座ってしまった。流石(さすが)に甲羅にカチンときたかめはこう思った「ちぇ、席を譲る気なんぞ毛頭ない、このつるが!」とね。暫く(しばら  )して水天宮につくと、釣り人、そう浦島太郎風の男が、棚にある荷物、そう玉手箱風の(かめ)を置き忘れたまま席を立ったんじゃ。かめは、しめしめと思いその席に座ったんじゃ。と、棚から先の甕が落ちて、かめの頭に当たった。そして床に落ちた甕の(ふた)がパカッと開くと、そこから白い煙がモクモクと立ち上ってきた。すると、


すると、どうしたんだい。ご隠居(  いんきょ)


すると髪の毛はすっかり抜け落ち、つる禿げ(は )となり、かめは老人に化けた。それでようやく周りが納得した、めでたしめでたし、という与太話さ。


 

「鶴亀算」

ご隠居(  いんきょ)ご免よ(  めん  )与太郎(よたろう)の宿題ちと見てくんねぇか。(ほれっ)

「タコとイカが合せて3匹、足の数が合せて26本の時、タコとイカは夫々(それぞれ)何匹か。(なお)タコの足は10本イカは8本である」

どうだい、ご隠居。


八つぁん(はっ      )、これは「鶴亀算(つるかめざん)」で解けるぞ。


なんだい、鶴亀算って。


ちょいと例題で考えるよ。
「ツルとカメが合せて5匹、足の数が合せて16本の時ツルとカメは夫々何匹いるか」なんて例題があったとする。まずは全部をツルと考える。5匹全てがツルだと足の数は2本×5匹で10本。これは実際の16本に比べ6本少ない。この6本の差をツルとカメを交換する様に考えるのじゃ。6本差を埋めるにはツルとカメの足の本数差、2本で割った回数分つまり3回換えればよい。で5匹の内3匹がカメに換わり2匹はツルのまま。だからツルが2匹、カメは3匹となるのじゃ。わかったかい、八つぁん。


わかったよ、問題がタコの足だから鶴亀算じゃなく、たこ足算(あしざん)になるんだろ。


違うよ。


 

「たこの足イカの足(続「鶴亀算」)」

与太郎(よたろう)いるかい?お前さんの宿題できたぞ。

本当かい、八つぁん(はっ      )

あぁ本当だ。もう一度問題を読んでみな。

合点(がってん)だ、え~「タコとイカが合せて3匹、足の数が合せて26本の時、タコとイカは夫々(それぞれ)何匹か。(なお)タコの足は10本イカは8本である」

(八つぁんドヤ顔)答えタコが1匹、イカが2匹。

(与太郎指折り数え始める)タコが1匹で足が10本だから一、二…、イカが2匹で…、本当だ、足が26本。凄いね八つぁん、いかすぜ八つぁん、やり方教えて教えて。

与太郎ここだけの話だよ、実はご隠居(  いんきょ)に教わったんだ。

やっぱりね

でも、やり方は忘れちまった。なんか動物の名が付いたやり方だったな、けど忘れちまった…(顔を顰め(しか  )る八つぁん)何だっけ…あっ、思い出した、たこ足算(あしざん)だ。

違うよ、八つぁん。

じゃ、たこイカ算。

違うよ。

じゃぁ、たこの足イカの足算。

違う、鶴亀算(つるかめざん)だよ、学校で習った。

早く言え、このたこ。足元見やがって。足元だけにお前さんには、ゲソとくらぁな。


 

「粋な床屋」

今日はどういたしましょう。

そうだね、2センチほど切っておくれ。

かしこまりました。

(チョキチョキと髪を切り始める)

入り口にあった盆栽(ぼんさい)、マスターが作ったのかい。

えぇ、なんせ髪切りがカット専門の10分になったでしょ、だから時間が余っちゃって。それで盆栽を始めたら、はまりましてね。あんな小さな鉢に(はち  )でも大自然の美を表現できますでしょ。で、段々とわが子のように可愛くなっちゃって。旦那(だんな)、もみあげは、どうしましょう。

そうだね、自然な感じで。ところであの盆栽に名前はあるのかい。

えぇお恥ずかしながら、こけももちゃんと呼んでます。

(髪を切り終え、鏡をだし後頭部を映す)
いかがでしょう。

うん丁度(ちょうど)いい。

横はいかがでしょう。

うむちょっと、もみあげをよく見せておくれ。(目を凝ら(こ )し)なんだいこれは。

えぇ自然な感じと言われましたので、「枯山水(かれさんすい)こけもも」風に仕上げました。お気に召しませんか。

いや粋だ(いき  )、もみあげに侘び寂び(わ さ )がある。


 

「トイレの死神」

あれ、熊さん(くま    )先に(さき  )いたのかい。ところでご隠居(  いんきょ)は。

今トイレ

そうかい、トイレで思い出したけどこんな怖い話知っているかい。
生徒が夕方、学校のトイレで用を済ませた。尻を(しり  )拭こう(ふ  )したが紙が無い。と声が聞こえた「赤い紙が欲しいか? 青い紙が欲しいか?」、生徒が「赤い紙」と答えると体から真赤(まっか)な血が噴き出し(ふ だ )死んだ。この話を聞いた別の生徒は怖かったが我慢(がまん)できずトイレに行った。するとやはり「赤い紙が欲しいか? 青い紙が欲しいか?」と死神(しにがみ)の声が聞こえた。生徒は「青い紙」と答えると、今度は血を全て抜き取(ぬ と)られ真っ青(ま さお)になって死んだ。な、怖いだろ。

あぁ、ぶるっときたよ。それにしてもご隠居遅い(おそ  )ねぇ。おーい、ご隠居大丈夫(だいじょうぶ)か。
(と声を掛け(か )るが返しがない、心配になった八つぁん(はっ      )も)

ご隠居、死神にあっちまったのかい。(と)

ごちゃごちゃうるさいね、死神じゃなく尻紙(しりがみ)を持ってきておくれ。勿論(もちろん)白い(やつ)だよ。

なんだいご隠居怖くて出れなかったのかい。


 

「そろそろ」

毎度(まいど)ばかばかしい話を一席。え~いつの時代も暗闇(くらやみ)人目(ひとめ)避け(さ )時にそ(とき    )ろそろと動き回るのはどうも印象(いんしょう)が悪いものでして…)

なんで(やつ)はこうも嫌われる(きら      )のかね。


黒くて脂ぎ(あぶら  )っていて人の目を盗んで(ぬす   )なんだか汚そ(きたな  )うだからじゃないのかい。


で、こっちが休んでいるときにそろそろやってきてね。


そうそう、そろそろと動き回るんだ。


そして時に、宣伝カーに乗って声高々(こえたかだか)怒鳴り(どな )散らす(ち  )


えっ、ゴキブリの話じゃないのかい。


違うよ、政治家議員(せいじかぎいん)の話だよ。ほれ、みててご覧(  らん)よ、お仕事中の方々が、そろそろ居眠り(いねむ )を始めるよ。ほれ、みててご覧よ、口達者(くちたっしゃ)な方々が、そろそろ失言するよ。そして常套句(じょうとうく)遺憾(いかん)と言って謝罪(しゃざい)する。そしてそろそろ潮時(しおどき)となる。
ほれ、みててご覧よ、腹黒い方々が、そろそろ捕まるよ。ホイホイとね。


まるで、ゴキブリそろそろ、のようだね。


政治家に例え(たと  )られちゃ、ゴキブリもそろそろ可哀(かわい)そうになってきた。


お前さん、口がそろそろ、いかんです。


 

「青天の霹靂」

何、(なに  )お前さんが奢っ(おご  )てくれるのかい。こりゃあ、青天の霹靂(せいてん  へきれき)だ。

9時にくじが当たったんだ、ところで何だい(なん    )、その青天の霹靂って。

青天とは青空(せいてん    あおぞら)霹靂は(へきれき  )雷の(かみなり  )ことじゃ、つまり青空に雷なんて起こりえないことから、予想外のことが起こることの例え(たと  )じゃ。

あっしの奢り(おご  )がそんなに予想外なことかい?まぁいい、で、ご隠居(  いんきょ)、何を喰い(く )たいかい?

そうだねぇ寿司(すし)を喰いたいねぇ。

いいねぇ寿司いきやしょう。

二人(ふたり)は意気揚々(ようよう)と店に向います、と)
あれ、閉店だよ。ご隠居、あっちの店に行きやしょう。

あれ、ここも閉店だ。コロナ禍(   か)の影響かねぇ。もう一軒(いっけん)、向うの店に行きやしょう。

ご隠居、ここはやってますぜ、おぅごめんよ、老若男女(ろうにゃくなんにょ)の内、二人。

すみません、お客様、本日は8時で閉店となります。

なにぃ~、又々(またまた)予想外のことが起こるねぇ、スカッと晴れた青空に雷ゴロゴロだ、ご隠居、例の言葉いってくんねぇ。

青天の霹靂かい。

あぁご隠居、あっしは、閉店に辟易(へいてん  へきえき)だよ。


 

「やっぱりイナバの白兎」

昔々(むかしむかし)、イナバという国に白い兎が(うさぎ  )おりました。その国には100人乗っても大丈夫(だいじょうぶ)な物置もありました。ある日、沖ノ島(おき しま)の神様から兎に手紙が届きました。中秋(ちゅうしゅう)の名月を楽しむ会にお呼ばれしたのです。兎は喜びました。その日、兎は物置から杵と臼(きね  うす)を出し、それを担いで島へと向かいました。ですが、兎は向こう岸まで渡れません。すると一匹のワニが現れました。兎はワニに「僕を君の背中に乗せてもらい島まで渡らせてくれないか、お礼に君の秘密を教えるから」と話を持ちかけました。ワニが兎を島まで渡すと早速秘密を尋ねました。兎は言いました「お前さんは100日後に死ぬのさ」。愕然としているワニを見て、兎が言いました「うそっぴょーん」。騙されたワニは怒り兎を追いかけました。兎は猛スピードで脱兎(だっと)如く(ごと  )逃げました。それを見ていた島の住人達は、兎を「脱兎さん(ダットサン)」と呼ぶようになりましたとさ。


えっ、兎がどこに逃げたかだって。

そりゃ、お月様に決まってらぁな


  

「横浜」

熊さん(くま    )八つぁん(はっ      )、喫茶店でご隠居(  いんきょ)が来るのを待ちながらだべっています。隣の席には一組のカップル。と彼女が彼氏にいいました…)

横浜いってくるね。

(八つぁん、ひそひそと熊さんに話しかけます)
なんだい、熊さん、彼女が彼氏おいて横浜に行くよ。

暫く(しばら  )すると)
あれ、彼女もう戻ってきたよ。随分と早いね。

八つぁん、それは、便所にいったんだよ。

どういうことだい、熊さん。

うん、横浜の市外局番知っているかい。

いや、知らないよ。

045(ゼロ ヨン ゴ)なんだよ。ゼロは英語の(オー)、よんはしぃ、ごはこと呼べるだろ、だから、おーしぃこ、おしっこ。

おしっこにいく、つまり便所に行く、これを横浜にいくとは、なんともしゃれてるじゃねぇか。


(と、カランコロンと呼び鈴がなり、喫茶店の扉が開きます)

熊さん八つぁん、待たせたね。

ご隠居、随分と遅かったね、どうしたんだい。

あぁ、横浜に行ってたもんでね。

ご隠居も、おしっこかい。


違うよ、大きい方だよ。



 

「かめとキリギリス」

(どの国にも似たような童話はあるようでして…)

昔々(むかしむかし)、兎とかめ、蟻とキ(アリ   )リギリスが森にいました。

ある日、兎に鈍間(のろま)だと馬鹿(ばか)にされたかめが「山まで競争しよう」と蟻に言います。「食料準備で暇はない」と返すと、かめは遊び暮すバイオリン弾きのキリギリスに同じ事を聞きます。と彼は「いいよ」と答え酒場へ姿を消します。


夏が過ぎ、漸く(ようや  )かめは山頂近くにいます。(そば)にキリギリスの姿はなく、かめは安堵します。ですが空腹で動けません。と、かめは蟻の行列を見つけます。かめが「食料を分けて貰え(もら  )ないか」と聞くと蟻は「そんなのアリ?」と言うも分けます。

かめは蟻十匹(じゅっぴき)に「有難う(ありがと  )」と言い「キリギリスは今どうしている?」と尋ねると「彼なら酒場のバイオリン弾きで何とか(なん    )生きている」と答えます。そこでかめは、羽目を(ハメ )外している事に、ハッと気づき目が醒めます。


えっその後どうなったかって。


かめは奮起し南の島の大王になった。そう彼の名は、カメハメハ。



 

「ざるそば」

(にしん)そば、貰おうかねぇ

畏ま(かしこ  )りました


お待ちどう様でした

これ鯡かい

料理人に確認します

お客様申し訳ないです、鯡でなく(さば)でした。作り直すので暫し(しば  )お待ちを。


お待ちどう様です。お詫び( わ )に麺を10倍にしてあります、どうぞ。

あれっお前さん、これは、もりだよ、注文したのは鯡そば。しかも麺10倍もありゃしない。お前さんサバを読むじゃないよ。

これは失礼致しました、作り直します。

もういいよ、これに海苔(のり)をかけてくれれば。

畏まりました


お待ちどう様です、麺が100倍です。

お前さん、話がもりだねぇ、サバ読みがてんこ盛りの、のりのりだ。あれっお前さん、海苔がないよ。

又々(またまた)失礼致しました。海苔をのせて持ってきます。


お待ちどう様でした。海苔のてんこ盛りになります。

漸く(ようや  )来た(鯡そばが海苔のてんこ盛りになっちゃったよ)、サバ読みのお前さん、網目(あみのめ)が水を通すように聞き漏れが多いねぇ何度言っても抜けちゃうねぇ。


えぇお客様、蕎麦(そば)は「ざる」が定番ですから



 

「なぞなぞ」

八つぁん(はっ      )、いいかい、なぞなぞ出すよ。

あいよ与太郎(よたろう)、何でもきやがれってんだ、こん畜生(ちくしょう)

いくよ、りっぱりっぱと言われるのにいつも踏まれているものはなぁーんだ?

そりゃスリッパだろ。

正解

与太郎、もっと難しいやつを出してくれ。

じゃぁ、りっぱりっぱと言われるのにいつも踏まれている物をパッと盗んで(ぬす   )逃げる途中にすっころんだ(やつ)は、秋になると泣き始めるんだって、奴は一体だぁーれだ?


うーん、ちとわからない、なんだい答えは?

正解はキリギリス。

なぜだい。

スリッパをパッと盗んだ奴がスリ、そいつが転んでリス、秋に泣くリスと言えば、キリギリス、でしょ。

あぁなるへそね、もっと簡単なやつを出してくれよ。


じゃぁ最後、りっぱりっぱと言われるのにいつも敷かれているものはなぁーんだ?


座布団

ブブー不正解。正解はご隠居(  いんきょ)。みんな、ご隠居をりっぱりっぱと言うけど、いつも奥さんの尻に敷かれているだろ、だからご隠居。


与太郎、実にいいなぞなぞだ。



 

「ちりとてじん」

ご隠居(  いんきょ)、鹿に土と書いて何て読むんだい。


八つぁん(はっ      )、お前さんはいつも唐突(とうとつ)だねぇ、まぁいい教えるよ。訓読(くんよ)みは、ちり、ごみ、つちけぶり、ひさしい、で音読(おんよ)みはジン。
意味は、ごみ、ちり、(ほこり)土煙(つちけむり)俗世(ぞくせい)の汚い、久し(ひさ  )い、じゃ。字形は鹿が走ったときの土煙からきている。塵も積も(ちり      )れば山となる、という(ことわざ)をお前さんも聞いた事があるだろ。


ご隠居、これはいい意味なのかい?


この塵(    ちり)はごみではなく、物凄い小さい事を指している。つまり小事(しょうじ)疎か(おろそ   )にするなという戒め(いまし   )じゃ。
それから仏教語に五つの塵(      ちり)とかいて五塵(ごじん)がある。これは煩悩(ぼんのう)を起こさせ人の心をちりの様(  よう)汚す(けが  )もので色・(しき  )声・(しょう )香・(こう  )味・(み )触の(そく  )事じゃ。だから塵も積もれば山となると言っても、ごみをむやみに捨てちゃいけないよ。例え(たと  )小さい塵(  ちり)のごみ捨てでも積み重なれば、心を汚す煩悩つまりじんが増す事になるからね。


馬鹿(ばか)が勘違いして、ごみの山を作らなきゃいいね。


あぁそうだ、つまり「ちりとてじん」だからね。



  

「ムチムチマン」

ご隠居(  いんきょ)、ちょいと聞いておくんなせぇ。

なんだい八つぁん(はっ      )、そんな怒ったような顔して。


最近の政治家は何だい(なん    )、かわい顔して夫妻そろって選挙違反で捕まっちゃうのかい、ろくに働かないのに、ちゃっかり給料は貰っ(もら  )ているというじゃないか。そうかと思えば、当初、こいつを信じよう、と思った(やつ)が、「30年後の自分は何歳かな」なんてぬかしやがる。コント芸人かと思ったよ。あそうそう、それから口がへの字の野郎は、「日本ほど安全で治安の良い国はない。不細工(ぶさいく)な人でも美人でも夜中に平気で歩けるのだから」、「金持ちに生まれた苦しみは分からんだろう」なんてほざきやがる。ほんと税金払うのが馬鹿(ばか)らしくなってくらぁな。



八つぁん、知識が無いと書いて無知(むち)、恥が無いと書いて無恥(むち)、どちらのむちも当て嵌る(はま  )ねぇ


ご隠居、いっその事、政治家改め(あらた )、ムチムチマンとした方がいいんじゃねぇのかい


よしなよ、八つぁん、そんな事したら、鞭で(むち  )打たれて殺されちゃうよ



 

「火の用心」

ドンドンドン、ご隠居(  いんきょ)いるかい?

何だい(なん    )八つぁん(はっ      )(その声に驚き振り返る八つぁん)

びっくりしたなぁもう、そっと忍び寄るなんてご隠居、あんた仔猫(こねこ)ちゃんかい。で、何だい?

で、何だい?じゃないよ、それはこっちの台詞(セリフ)だよ。


そうでやした、でねご隠居、何やら(ちまた)では網元(あみもと)からちょいちょい火がでるそうな。何でも鼠が(ねずみ )犯人(はんにん)らしく、あんたぁ~と管巻(くだま)き、呟き、線を噛むらしい。それで一度火の手が上がると、瞬く(またた )間に広がるんだってよ。怖いねぇー。


お前さん、それはネット社会の話じゃないのかい。つまりだねパソコンのマウスでYouTube、Twitter、LINEに発信した途端、非難(ひなん)轟々(ごうごう)、無数の中傷投稿が発信元に届く、所謂(いわゆる)、炎上という(やつ)じゃないのかい。そう言えば、五十路(いそじ)のアイドルが所属事務所の後輩ファンと火遊びした、でその不倫報道に「愚か者よ、ケジメなさい」と大炎上したのは記憶に新しい処だ(ところ  )よ。


ご隠居、彼にこういってやりたいね


なんだい


火の用心マッチ一本火事の元


 

「闇鍋」

お父さん、夕食(ゆうしょく)の準備ができましたよ

今いくよ、今日はなんだい

(なべ)ですよ

(お父さん食卓につきます)

おっ熱々で(あつあつ  )おいしそうだね、で何の鍋だい

何が入っているか、それはお楽しみですよ

それはいわゆる闇鍋(やみなべ)かい、楽しみだねぇ、ところで私の眼鏡(めがね)探し(さが  )ているんだけど何処(どこ)にあるか知らないかい。

嫌だねぇ、お父さん、眼鏡なら頭の上にありますよ。

あれ本当だ。さっき新聞読んでてそのまま頭にのせっ放し(      ぱな  )だった。一瞬(いっしゅん)、鍋の具になったじゃないかと思ってはらはらしたよ、これは冗談だよ、ではいただこうかね。

(そういって、お父さんは眼鏡をかけ、鍋に手をつけます)
あれ、眼鏡が湯気(ゆげ)曇って(くも    )しまったよ、なかなか具材が取れないね、どれどれ何がでるかな。


(そこへお婆ち(ばあ  )ゃんが来ます、とお母さんが)

お婆ちゃん、さっきから何をうろちょろ探しているの?

うん、入れ歯(い ば)なんじゃがね、一体どこに置いたか、お前さん知らないかい


それなら今、お父さんが取ってます



 

「いくよ餅くるよ餅」

てぇへんだご隠居(  いんきょ)与太郎(よたろう)貰っ(もら  )たくじに当った

それは「棚からぼた餅」、棚ぼた(たな    )だねぇ

何だい(なん    )それは

苦労なく思いがけずに幸運に会うという(ことわざ)じゃ


熊さん(くま    )八つぁん(はっ      )を訪ね)
どうしたんだい八つぁん、餅を神棚に飾って

ご隠居に与太郎の事を話したら棚ぼたって聞いたろ、で棚からぼた餅が落ちるのを待ってるのさ。

馬鹿(ばか)だなぁ八つぁん、それより「開いた口にぼた餅」も棚ぼたと同じだってさ、でほら餅を沢山(たくさん)買ってきた、こいつをおいらの口へ放り込んでくれねぇか。

合点(がってん)二人(ふたり)表へ出ます)


八「いくよ餅、それ」(口目掛け(めが )投じ(とう  )ます)
熊「くるよ餅」(ペタ、額に当ります)
八「もう一度、いくよ餅、それ」
熊「くるよ餅」(又々(またまた)失敗、とそこへご隠居が)

何やってんだい?

八「開いた口にぼた餅を実践中でさぁ」

熊「そう、いくよ餅くるよ餅(      もち      もち)、ってね」


二人ともいい歳して与太郎に焼き餅焼くんじゃないよ


ご隠居、目が悪くなったのかい、焼いてるんじゃないよ、投げてるんだよ



 

「七夕」

ご隠居(  いんきょ)、七月七日は何の日か知ってるかい

七夕(たなばた)

正解

八つぁん(はっ      )、もっと気の利いた事をお聞き

じゃぁ由来は?

お前さん知っているのかい

知らないだから教えて


面倒な(めんどう )(やつ)だね、始めからお聞き、まぁいい。広辞苑(出典:岩波書店)ではね、天の川の両脇の牽牛星(けんぎゅうせい)織女星(しょくじょせい)とが年に一度七月七日の夜に会うという星を祭る行事とある。中国の乞巧奠(きこうでん)の風習と日本の「たなばたつめ」の神信仰が合さり、五色の短冊に歌や字を書き葉竹に飾り書道や裁縫(さいほう)の上達を祈る祭と(まつり   )なった。彦星(ひこぼし)織姫(おりひめ)が年に一度だけ出会う星空を眺め願い事をするなんて実にロマンチックが止まらないね


そうそうご隠居、星空で思い出した、「星空文庫(ほしぞらぶんこ)」って知ってるかい

何だい(なん    )


誰でも文を投稿でき、それを閲覧できる無料サイトさ。でね、そこに紫紺亭っていう奴が短い創作落語を載せてやがる。最新作が「七夕(  たなばた)」、で奴はこれが後世古典になりますようにと短冊に書いたんだって


八つぁん、それは七夕じゃなく、そうなれば「棚ぼた(たな    )」だよ



 

「けっこうなピザ」

(日本語には同音異義語が多く、時としてこんがらがるものでして)

小麦粉、水、塩、イーストをこねた後に発酵させて作った生地を丸く薄くのばし、その上に具を乗せ、オーブンや専用の窯な(かま  )どで焼いた料理です、いるんですか、いらないんですか?

けっこうな塩梅(あんばい)で。でも、けっこうです。


イタリアにいくんですか、いかないですか?

けっこうです。身を決し行きます


台風が直撃、運行状況を聞いてもいいですか?

けっこうです。けっこうです、飛行機は飛びません。でも、けっこうです。


顔が青ざめています、どこか体に悪いところがあるのでは?

けっこうです。血のめぐりです


ホーホケキョと鳥が鳴いてます、なんて鳥か聞いてもいいですか?

けっこうです、(ウグイス)です


また別の鳥が飛んできました、なんて鳥か知っていますか?

カッコウです。危うく、けっこう、と言いそうになりました


では「ピザ」と10回言って貰え(もら  )ますか?

それはけっこうです、誰が何と言おうと、けっこうです


 
 

「炊飯ジャー」

八つぁん(はっ      )、飯食わしてくんねぇ

どうしたんだい、熊さん(くま    )

喧嘩(けんか)してかかぁが家を出ちまった

原因は何だい(なん    )

それが、炊いた飯が柔らか過ぎ、もうお粥(  かゆ)状態、でこんなの食えるか、飯は固めが基本だろって怒ったら出て行っちまった

丁度(ちょうど)よかったよ、今、飯を炊こうとしてたところ、一人前追加するよ。炊き上りは固めだね、だと水はいつもよりちょい多めでいいか


(八つぁん、釜を炊飯ジャーにセットします)

熊さん、でも何だね(なん   )最近の炊飯ジャーは凄いね、ボタン一つで固さを自動調整、しかもだよ、炊き上りを音楽で教えてくれるんだよ

どんな音楽だい?

それが洒落ててね、ジャーだけにメジャーな80年代の洋楽ヒットメロディーさ。昨日(きのう)は確か、ポリスの「見つめていたい」だったよ


暫し(しば  )時が経ちます)
おっ音楽が聴こえたね。今日はカルチャークラブだよ。ちょくらほぐしてくるね、熊さん、ちょっと待ってておくれ

(少しして熊さん)

どうだい八つぁん?


うん、釜は気(カーマ      )まぐれ



 

「いとしやお菓子」

(え~この世には似て非なる(に ひ  )ものが沢山(たくさん)ございまして、)
店員さんちょっといいかい、ネットで見たんじゃが、棒が(ぼう  )ついている、クールでうまいお菓子あるかい


あります、うまい棒(      ぼう)ですね


(持ち帰り開封すると意図したものと異なります、再び店に戻り、店員さんにそれを差し出します)

棒がないよ


お客様、お言葉ですが商品名に棒がついています。もしや本物の棒付きをお探し(さが  )でしたか?


そうだよ、しかもクールと言ったはずだよ


お客様、商品をご覧(  らん)下さい。空洞で風通しのよい軽量クールです。もしやお客様が仰っ(おっしゃ  )たクールとはアイスの冷たいことでしょうか?


そうだよ


一旦纏め(まと  )ます、お客様の意図は、棒つきアイスキャンディー、で宜しかったでしょうか?


そう、それはあるのかい


あります


何だい(なん    )それは


うまか棒(      ぼう)です


うまい棒とうまか棒、随分と名前が紛らわしいねぇ。ジャロにでも通報しようかね、ねぇそうじゃろ


えぇお客様、お菓子だけに、いとおかし、ってのは如何(いかが)でしょう?



 

「お忙しい最中」

(え~この世には似て非なる(に ひ  )ものが沢山(たくさん)ございまして、一つ例え(たと  )てみますと、国に立つと書いて「こくりつ」と読みますが、同じ漢字でも「くにたち」と読めば、東京にある市の名となりますな。で、東京の国に立つ競技場と書いてあるもんで、千駄ヶ谷(せんだがや)からわざわざ国立駅(くにたち  )まで足を運んでしまったというのはちょっとした笑い話でして)

おい、ご隠居(  いんきょ)いるかい


何だい(なん    )熊さん(くま    )


お忙しい最中(さなか)、悪いんだが、俺にもさいちゅうくれ、さいちゅう


何だい、さいちゅうって


与太郎(よたろう)にあげたやつだよ、さっき道端で(やつ)にあって、うまそうに何か食って(く  )やがるんで、何食ってんだってきいたら、薄皮(うすかわ)であんが挟ま(はさ  )ったやつって言う、で聞けば、ご隠居に貰っ(もら  )たというじゃねぇか、で、まだ一つ手にもっていたんで、そいつをくれっといったら、いやだよ、ご隠居に貰いなってぬかしやがる、で包みに、さいちゅうと書いてあるじゃねぇか、で頂戴(ちょうだい)、さいちゅう。


熊さんそれはね、もなか、と読むんだよ



 

「機動戦士」

(世の中には世間をあっと驚かせる事がママありまして)

ご隠居(  いんきょ)、てぇへんだてぇへんだ

どうしたんだい、八つぁん(はっ      )、そんなに慌てて。

あのよ、あの…(八つぁん息荒くなかなか言葉が出てきません)

八つぁん、まぁまぁ落ち着いて。これでもお飲み(お茶を出します)


ありがと、ご隠居、熱っ!熱いじゃねぇか!


どうやら感覚が戻ったようだね。では話してごらん。


(八つぁんごくりと唾を呑み堰を(せき  )切った様(  よう)に話し出します)
うん、あの人様(    ひとさま)のお金で入浴滞在(ニューヨーク   )していた、あの結婚詐欺まがりのマザコン野郎が、遂に日本に戻ってくるよ。もうご臨終だよ、どさくさ紛れで、いけしゃあしゃあと事を運ぶよ、きっと。もはやキットカットできない状況じゃないのかい、ねぇそうだろ、ご隠居!


いけしゃあしゃあだけに、そいつは赤い彗星(あか  すいせい)かい


違うよ、コムロだよ。コムロ系。


そりゃ機動戦士だ


どういうこったい


「コムロ、行きまーす、婿に(むこ  )」ってなったら、皆、がんだ、む、ってなるだろ



 

「いこみき(点と線)」

(世には似た漢字がございまして、例え(たと  )ば大きいの、だいの字、これに右上にちょんと点が付きますと犬、で「持ち帰れ犬の糞(いぬ  ふん)」の看板に点をつけ忘れますと大の糞(だい  ふん)となりまして「糞は元々(もともと)大だろ」ってなるとか、ならないとか、点のつけ忘れで汚点を残す、なんて事にもなりまして。又々(またまた)瓜に爪あ(うり  つめ  )爪に爪な(つめ  つめ  )し」なんて言いますが、本日は点でなく線の話でございます)

八つぁん(はっ      )干支(えと)何だい(なん    )


干支だけにえっと、あっしは「おのれ」


おのれ?、それは「み」だね。よく見てご覧(  らん)。縦の線がくっついて口だろ、だから(おのれ)じゃない、そもそも己年(おのれどし)なんてありゃぁしない


ご隠居(  いんきょ)ずっと己だったよ


()は蛇の事、「己に口なし蛇に口あり」と覚えたらいい。線が途中の「すでに」の意味の()という字もある。それからこれらの字を繋げた四字熟語「已己巳己」( いこみき )もあるね。見た目通り意は似たものの事。因み(ちな  )にわしも巳年(みどし)だ。


ユー(アンド)ミー正に(まさ  )已己巳己(いこみき)


いやユーと似てるのは巳だ(ミー  )けじゃ、蛇だけにね



 

「万能薬」

八つぁん(はっ      )ご隠居(  いんきょ)の家に駆け込みます)
いてててご隠居、腹痛だ(はらいた  )、いててて何とか(なん    )してくれ

八つぁん待ってな(と、ご隠居奥から黒い粒を一粒持ってきます)

何だい(なん    )これ

万能薬(ばんのうやく)だよ

万能薬?効く(き )のかい?いててて

つべこべいわず早くお飲み(八つぁん口にいれます、と)

あれ、痛みがなくなったよ、ご隠居その万能薬どうしたんだい?

あれかい、あれは粒胡椒(つぶこしょう)だよ。

騙した(だま    )のかい

騙したとは人聞(ひとぎ)きが悪い、騙してない、現にお前さん腹痛が(はらいた  )治ったじゃないか

あぁそうだ

病は気(やまい   )から、要は何でも良かれ(よ  )じゃ

いい事聞いたよ、蟻が(あり  )十匹(じゅっぴき)有難う(ありがと  )


(ある日の事、若旦那(だんな)が)

いててて腹痛だ、(  はらいた    )八つぁん何とかしてくれ

待ってな(と八つぁん黒い粒を持ってきます)

何だいこれ

万能薬

効くのかい? いてて

つべこべ言わずお飲み(と若旦那の口にポンと投じ(とう  )ます、と)

いててて、増々痛くなった

若旦那病は気から、万能薬と信じなきゃ治らないよ

いててて、でその万能薬って一体何(いったいなに)ものだい


おいらの鼻糞(はなくそ)



 

「泣きの一席」

近頃(ちかごろ)、勝負に負けた後、もう一回と再戦を頼む、所謂(いわゆる)「泣きの一回」なんて言葉もある様でして)

えー毎度(まいど)、ばかばかしい話を一席
女「お前さんほれ、うまい棒(      ぼう)
男「お前これは、うまか棒(      ぼう)だよ」
女「紛らわしいね、お前さんどうしよう」
男「文句を言おう、そうジャロ」


はい、ウケません、えっジャロって何じゃろですって?

お客さん、ジャロ知らない、そりゃあウケるものもウケやしない。いいですか、お客さん耳垢(みみあか)をかっぽじって聞いて下さいな

ジャロとは日本広告審査機構(にほんこうこくしんさきこう)の事。英語名はJapan Advertising Review Organization略しJARO(ジャロ)、で消費者から広告に関する苦情等(    など)を聞く公益社団法人でさぁ

でこれを踏まえましてね、泣きの一席、始めからいきますよ


えー毎度、ばかばかしい話を一席
女「お前さんほれ、うまい棒」
男「お前これは、うまか棒だよ」
女「紛らわしいね、お前さんどうしよう」
男「文句を言おう、そうジャロ」



はい、ウケない、どうやらネタが悪い様でして。えぇそうじゃろ、そうじゃろ…



 

「湯豆腐」

(豆腐屋で)
ご免よ(  めん  )

いらっしゃいまし、今日は何を

うん、これから客人を招き(まね  )一席設ける。実は先日小石を品に挟む(しな  はさ  )へまをやってね、そのお詫び( わ )と、あわよくばまた品を買って貰え(もら  )ないか商談も兼ねてね。でその大事な一席で湯豆腐(ゆどうふ)振舞(ふるま)おうと思う。で主役は豆腐。そこでお前さんだ、お前さんの豆腐は実に旨い(うま  )、ただ少し値が張る(ね は )のが玉に瑕(たま  きず)、まぁ一長一短(いっちょういったん)という処だ(ところ  )


えぇ旦那(だんな)、うちの豆腐は一長一短ありますが、この味まで長い年月がかかりましてね、なかなか一朝一夕(いっちょういっせき)にはいかぬものですから


そうだね、では一長一短の一朝一夕にはいかぬ豆腐を頂こ(いただ  )うかね


おいくつで?


もちろん一丁


旦那、旨いと褒める(ほ  )割には(わり   )、実にしみったれだね、旦那も一長一短だ。大事な一席の湯豆腐がたったの一丁かい。それじゃぁ一席も一朝一夕にはいかぬ


じゃぁもう一丁、合せて二丁


あいよ旦那、この湯豆腐で、詫び(わ )も商談もうまくいきますぜ


なぜだい


それは「いっせきにちょう」( 一石二鳥(一席二丁))だからでさぁ



 

「おかめ八目」

(テレビからは国会中継(こっかいちゅうけい)、とご隠居(  いんきょ)が)
でも何だね(なん   )、最近は女性議員(じょせいぎいん)が増えたね、特に野党(やとう)の女性議員は岡目八目(おかめはちもく)じゃないかい。(と八つぁん(はっ      )が)

同感、皆、おかめ八目(      はちもく)

八つぁん、おかめ八目ってどういう事?

与太郎(よたろう)そういった事はね、まずご年配(ねんぱい)の方を(  かた  )立てなきゃいけねぇんだよ、あっしとご隠居どちらがご年配だい

ご隠居

そうだよ、ご隠居だよ、だから第一(だいいち)にご隠居に尋ねるのが筋(たず        すじ)ってもんだ

八つぁん、そんな事言って知らないんじゃ…、まぁいいや、ここは八つぁんの顔を立ててご隠居に聞くよ、ご隠居教えて。


まるで子供の喧嘩(けんか)だね、まぁいい教えるよ。
これはね、当事者(とうじしゃ)よりも第三者(だいさんしゃ)の方が(  ほう  )情勢などを正しく判断(はんだん)できるという事じゃ、囲碁(いご)から出た語でな、碁を脇から見ると実際の打ち手よりも、八目も(はいもく  )先まで手を見越す(みこ )事から来ている。わかったかい、与太郎

うん、八つぁんも同じかい


当り前田(まえだ)大車輪(だいしゃりん)キック、与太郎、テレビみてみろ、おかめ顔が4人、で目が八つあ(やっ   )らぁな



 

「大人の絵かき歌」

(絵本に、ふりかけ、などなど、近頃(ちかごろ)子供チックなものを大人風(おとなふう)に仕上げる風潮(ふうちょう)もございまして)

熊さん(くま    )、近所の子供がこんな歌を歌っていたよ

棒が(ぼう  )一本あったとさ
はっぱかな
はっぱじゃないよ かえるだよ
かえるじゃないよ あひるだよ
六月六日(ろくがつむいか) 雨が ざあざあふってきて
三角(さんかく)じょうぎに ひびいって
あんぱんふたつ 豆三つ(まめみっ  )
コッペぱんふたつ くださいな
あっというまに
かわいいコックさん


懐かしい(なつ      )ねぇ、で熊さん、大人(おとな)の絵かき歌、知っているかい


何だい(なん    )八つぁん(はっ      )、大人の絵かき歌って


こんな感じだよ

ぼうっと一本とられたのさ
わっぱかな
わっぱじゃないよ、おなわだよ
おなわじゃないよ、内輪(うちわ)だよ
六月六日 アマが ざわざわやってきて
三角関係(さんかくかんけい) ひびいって
あのアマ三十路(みそじ) おれ五十路(いそじ)
慰謝料(いしゃりょう)どっぷり くださいな
あっというまに かわいい…


かわいい、何だい八つぁん


かわいい…


もったいぶるね、で何だい、かわいい…


かわいい コックさん


そこは、コックさんかーい


あぁ、慰謝料で小料理屋(こりょうりや)を始めたんだ



 

「海の馬」

ご隠居(  いんきょ)海の馬(うみ  うま)と書いて、何て読むか知っているかい?

八つぁん(はっ      )、それは「かいば」かい

いや、あっしとは違う。「かいば」とも読めるのかい?でそれは一体何(いったいなに)ものだい

これはね、脳みその奥深くにある大脳皮質(だいのうひしつ)一領域(いちりょういき)じゃ。近年の研究で海馬(かいば)が新しい記憶の貯蔵装置(ちょぞうそうち)として働いているらしいのじゃ。どうやら人間様(にんげんさま)記憶装置(きおくそうち)の様(  よう)じゃな。では、お前さんの「かいば」から何か海の馬のヒントを出しておくれ

あっしの「かいば」からは海の馬は動物とあるね

それでは、動物の当て字「アシカ」かい

いや違うね

じゃぁ、タツノオトシゴの別称「ウミウマ」

違う、そいつは海の獣(う み   けもの)と書いて海獣(かいじゅう)さ。ハッハッハッ、ご隠居くん、珍しく行き詰まった様(  よう)だね。この八つぁん様(はっ      さま)にとどめを刺された様だ、観念し給え(かんねん  たま  )


お前さん、結局のところ、何を言いたいんだい、とどのつまり、だね

正解、それは「トド」

八つぁんよ、とどのつまり、当て字は「かいば」に留めら(とど    )れないものさ、トドだけにね



 

「花火料理」

いいかい、お前さん、料理っていうもんはね、手際(てぎわ)よくやらないといけないんだよ、手際よくね。そう料理はアート、要はね、打上花火(うちあげはなび)の様(  よう)にやればいいのさ、で横で見ていなさい、今からお前さんの大好きなカレーを作るから。


(なべ)に油をひき、肉と野菜を入れます)
火はド~ンといって、パッと炒める。花火(はなび)の様にね


(鍋からはジュージュー音(      おん)、と)
具に色目(いろめ)が付いたね、ここで、水をジャーと入れて、パッと沸かす。花火の様にね


(と、ぐつぐつ音)
もう沸騰(ふっとう)した、さぁカレールーだ、袋を(ふくろ   )パッと開いて(ひら    )、パッと散らす(ち  )、そう花火の様にね。そして素早(すばや)混ぜ(ま )る、そうしないと溶け(と )きれず(かたまり)つまり「だま」ができるからね


(カレーのいい臭い(にお  )湯気(ゆげ)共に(とも  )上ります、と)
ほれ、もう出来上がり(できあ  )。鍋いっぱいにパッと広がる色とりどりの野菜、まるで花火の様だね。ちょいとお前さん、味見(あじみ)をしてごらん


お玉(  たま)でカレーを掬い(すく  )、口に入れます、と)

お前さん、どうだい?


だーまやー



 

「ガスの極み」

何か、臭うね

そうですかい、あっしは何も臭い(にお  )ませんがねぇ

お前さん、やりやがったな、透かしっ屁(す   ぺ)

いや、やっておりません

それは、おかしいんじゃないのかい。このエレベーターには、お前さんと私の二人(ふたり)っきりだ。私が(わたし  )やってなければ、お前さんって事になるんじゃないのかい。まぁいいや、透かしっ屁だからね、お前さんが犯人(はんにん)だとは限ら(かぎ  )ない。でもなんだね、透かしっ屁ほどたちが悪いものはないね。


旦那(だんな)、実は私、(わたし  )集金に訪れ(おとず   )たガス屋ですから、臭いにはとても敏感(びんかん)でして…(ブー)


お前さん、本当にやりやがったな。さっきの透かしっ屁と同じ臭いだよ、もうやってないとは言わせないよ、今度は、透かしっ屁じゃなく、鳴り物入り(な ものい )の屁だからね。お前さん、たった今、屁をこいた(へ    )ろ?


えぇそうで、ガス。
でね、旦那、このガス漏れ(  も )探知機(たんちき)如何(いかが)でしょう。これも屁が取り持つ(へ と も )何かの縁、お安(えん    やす)くしておきますから。


お前さん、下衆(ゲス)極み(きわ  )だね


いぇ旦那、ゲスではなく、ガス屋です



 

「クイズ知らんがな」

(クイズ、それは、謎解(なぞと)き、悩み考える事で脳が活性するとか、しないとか、何れ(いず  )にしましても、老若男女(ろうにゃくなんにょ)一億総勢(いちおくそうぜい)、クイズなるものが、昨今(さっこん)のブームの様(  よう)でして)

さて、ここで問題です、こちらにあります、この紫色(むらさきいろ)の花はなんでしょう?。はい、そこのあなた。

えっ、この花の名を、あっしに聞くのかい?

えぇ

そんなの知らんがな


正解です。紫の蘭(むらさき   らん )と書いて、「しらん」です


じゃじゃーん、第二問。サービス問題。この紫蘭(しらん)が好きな私ですが、私の故郷(こきょう)は一体どこでしょう?はい、又々(またまた)、そこのあなた。

えっ、お前さんの故郷を、また、あっしに聞くのかい?

えぇ、暇人(ひまじん)は、あなたしかいませんから。

そんなの知らんがな


よく聞き取れなかったので、もう一度、お願いします

知らんがな

惜しい(お  )、ではヒントを差し上げます、私の故郷は、鹿児島(かごしま)の、お茶の有名(ゆうめい)どころです。

知らん

残念、私の故郷は、「しらん」ではなく、知覧(ちらん)です。


やっぱり、そんなクイズ、知らんがな。



 

「潔癖症」

(中華定食屋にて)
ご隠居(  いんきょ)、使っていた物を使わなくなったから、売っ払っち(ぱら    )まう、なんて事が流行(はやり)のようだよ

八つぁん(はっ      )、それは箪笥(たんす)肥やし(こ  )になるより、結構な事じゃないかい

そうかね、こう見えてあっしは潔癖症(けっぺきしょう)でしょ、でどこの馬の骨(うま  ほね)が使ったか分からないのはどうも抵抗があってね

ものは考えようだよ

どういう事で?

馬の骨を女優さんだと思ってごらん、使いたくなるだろ

例え(たと  )ば誰だい?

例えばだね、そうだね、オードリー・ヘップバーンかな。映画「ローマの休日」を観たかい?あれは最高だよ

そういうもんかね


(と頼んだ中華そばが来ます、と)

ほれ、八つぁん、(はし)だよ

備え付けの箸かい、よく考えたら、これも誰かが使ったやつだ

八つぁん、ものは考えよう、オードリーだよ、オードリー

そうだね、でもご隠居、あっしは割り箸を貰うよ

なぜだい?

女優さんじゃなく芸人の顔が浮かんできたからさ。それに…


それに何だい(なん    )


オードリー・ヘップバーンはこんな所に来やしないよ



 

「うなぎ三昧」

ドンドンドン、ご免よ(  めん  )八つぁん(はっ      )、いるかい?

いるよ、熊さん(くま    )

どうしたんだい、そんな(うなぎ)寝床(ねどこ)みたいな薄暗い部屋でゴロゴロして。

何言っちゃてるんだい、熊さん、同じ長屋の作りじゃないか、おいらの部屋が鰻の寝床だったら、お前さんちも同じ鰻の寝床だよ。

そうだった、そうだった、でどうした、横になって。

うん、夏バテ。

八つぁん、今日は、土用(どよう)丑の日(うし    )だよ、うなぎ喰ったかい

何言ってんだい熊さん、馬鹿(ばか)いっちゃぁいけないよ、今日はどようじゃないよ、火曜だよ、しかもね鰻は、蒸しよりたれ焼き、だからね今日は土用のウシの日じゃなく、火曜の蒲の日(かば    )。ウシではなくカバの日。ウシよりカバ、そう鰻は蒲焼(かばやき)に限る。

今日は土用の丑の日じゃなく火曜の蒲の日って事かい?、お前さん火曜日だけに斯様(かよう)にうまいこと言うね。で八つぁん、鰻喰ったらどうなるか、知ってるのかい?

いや、知らない。

ズバリ夏バテ解消。

どうしてだい?


体力が「鰻登り」、鰻だけにね。



 

「感染症対策」

(真の有識者は、医療も経済も両方考えるものでして)

感染者が1000人を超ました。先生、この要因は何でしょうか?

そうですね、やはり飲食店での感染ではないでしょうか?

では、先生、飲食店の営業を止めるべきなのですか?

ウイルスには、アルコール消毒が大変有効とでています。集団でなく、お一人様ならアルコール消毒の徹底で、宜しいのではないでしょうか?

では、先生、どんなアルコール消毒を推奨しますか?

そうですね、個人的には、ビールでしょうか。

では、どんなビールが宜しいのでしょうか?

個人的には、コロナです。


先生、感染症対策として、他に何かありませんか?

ウイルス感染の疲弊には、熱湯消毒も効果ありと考えます。食器などの熱湯消毒に加え、お家でひとりリフレッシュ、疲れた体をお風呂で癒し、風呂あがりにキュッとアルコール消毒なんてことも充分ありです。


では、先生、どんな湯沸かし器が宜しいでしょうか?


はい、個人的には、コロナです。


 

「ギター易者」

ご隠居(  いんきょ)、ギター易者(えきしゃ)、知ってるかい?

何だい(なん    )八つぁん(はっ      )、ギター易者って?、ギター(ざむらい)の間違いじゃないのかい?


ほら、駅の地下道あるだろ、そこに夜な夜な(よ よ )、ギター片手に現れ出した占い師だよ。で、その風貌は、和服に黒いサングラス、一見して風変わりな易者だね。

ところで、ご隠居、逆に、ギター侍ってなんだい?


いや何でもないよ、でどんな感じなんだい、その易者は?


相談するだろ、そしたら、それをテーマに、ギターで弾き語るのさ。


で、当たるのかい?


それが、随分と音程が外れるらしいよ。で、占いどころじゃないんだって。それでも何とか(なん    )占いを聞いていると、最後に決まってこう歌うんだって、「当たるも八卦(はっけ)当たらぬも八卦って、言うじゃなぁーい、アンタそれ、占いですから、残念」ってね。


酷い(ひど  )話だね、で、いかほどだい?


一曲、5000円らしいよ。


随分と高いね、で、そいつのギターはエレキかい?


いや、アコースティックギター。


やっぱり、アコギな商売だ。



 

「ココはスポーツ観戦バル」

 
東京五輪オリパラが無観客となるね、これはどーも悲劇だ


どーも悲劇で思い出した、ドーハの悲劇って知ってるかい?


何だい(なん    )


これはね1993年10月28日カタールドーハで行われたサッカー、日本対イラク戦の通称さ。試合終了間際まで日本が2対1でリードしながらロス時間に同点とされ結果、初のワールドカップ本戦出場を逃したのでこう呼ばれている


そう俺、野球ファンだから。でも換気すれば観客ありでもいいと思うがね


換気で思い出したけど、ジョホールバルの歓喜って知ってるかい?


何だい?


これはね1997年11月16日マレーシアのジョホールバルでサッカー日本代表が初のワールドカップ本戦出場を決めたイラン戦の俗称さ


悲劇だの歓喜だの煩い(うるさ  )ね。でも何だ、現地声援がないロックダウンのスポーツ祭典ってどうなのかねぇ


とは言え、IOC(国際オリンピック委員会)関係者は直に観戦だろ、実に羨ましいね


そうかい、では代々(だいだい)の会長に言いたいね


何てだい?



東京ご臨終(  五輪中)バッハの喜劇、もうこれはタマラン値(    チ)



 

「冒険家とは」

ご隠居(  いんきょ)凄いよ、この女性


どうした、与太郎(よたろう)


うんこの人、日本人最年少で世界7大陸最高峰(さいこうほう)の制覇だって。凄い冒険家だね


与太郎、それは本物かい、それとも似非(えせ)かい?


どういう事だい?


つまり、最高峰級の登山法には主に2つあってね、1つは極地法。これは集団で大勢のサポートを受けながら登るスタイル。例え(たと  )ば重い荷物の運搬をシェルパに丸投げする。
もう1つはアルパインスタイル。これは他人のサポートを受けず、ほぼ一人で動く、所謂(いわゆる)単独行っていう(やつ)じゃ。因み(ちな  )にこの代表は植村直己(うえむら なおみ )さんだね。
でね前者、極地法には莫大なお金がかかる。だから金持ちやスポンサーがつかないと挑戦できない。要は偉業をお金で買う様なもんじゃ。だから私に言わせれば、これは似非冒険家。


おい与太郎、おいらも最高峰級の単独登頂に成功したぞ。


えっ八つぁん(はっ      )もかい?一体どこだい?


飛鳥山(あすかやま)


飛鳥山って最高峰級なのかい?


あぁ東京23区、第2の高さ


それは冒険かい?


いや、花見の道楽さ



 

「お囃子」

おっ八つぁん(はっ      )与太郎(よたろう)、お囃子(はやし)が聴こえてきたよ。

ご隠居(  いんきょ)何だい(なん    )、お囃子って。

与太郎、お前さんお囃子も知らないのかい。まぁいい、よくお聞き。お囃子はね、囃子という言葉に丁寧語の「お」が付けられた言葉でな、でその囃子とはね、映えさせる、際立たせるという意味の「はやす」から派生したもので、演者や演技などを目立たせるために奏でられる曲や唄、掛け(か )声などを言うのじゃ。例え(たと  )ば、落語で噺家(はなしか)さんが高座に上がる前に音楽がかかるだろ、あれを「出囃子(でばやし)」というんじゃ。

ふーん、他にどんなものがあるんだい?

うん、お祭りの「祭囃子(まつりばやし)」なんてのもある。で「日本三大囃子」を知っているかい?

何だい?

それはね、東京「神田囃子(かんだばやし)」、京都「祇園囃子(ぎおんばやし)」、そして秋田の「花輪囃子(はなわばやし)」じゃ。

ご隠居のお気に入りは何だい?

そうだね「コンチキチン」の祇園囃子かねぇ

八つぁんのお気に入りは何だい?


おいらかい?おいらはハヤシじゃないよ、カレーだよ、しかも神田のね



 

「駅構内」

近頃(ちかごろ)電車に乗りますと、
「駅構内で不審物や不審者を発見された方はお近くの係員までお知らせ下さい」なんてなアナウンスもあり、ついつい過敏になってしまうのが人の常(ひと  つね)というものでして)

駅員さん、大変です、駅構内に不審者がいます。

どこですか?

あの列の最後尾の男です。

どこが不審なのですか?

かつらがずれて、半分禿げ(は )ています。



(そして別の日)
駅員さん、大変です、駅構内の男便所に女がいます。

どこですか?

あの青いホースを持つ人です。

あの人は清掃員です。



(更に別の日)
駅員さん、大変です。駅構内の男便所にセーラー服がいます。

どちらですか?

あそこです。

あちらは「セーラー服おじさん」。で問題ありません。

不審者ではないのですね。

えぇ多分。



(そして遂には)
駅員さん、大変です。駅構内のトイレから汗びっしょりの男女二人(ふたり)が出てきました。

どのトイレですか?

あそこのトイレです。

それは問題ありません。

なぜです?


多目的トイレですから。



 

「世界遺産」

ご隠居(  いんきょ)、大変だ、先生が体調不良でお休み、で宿題が出ちまった


与太郎(よたろう)何だい(なん    )


うん、「いさん」を調べるのが宿題、でどんなものがあるか教えて。


そうじゃな、富岡製糸場なんてどうじゃ


何だい、それは?


これはね、明治5年群馬県の富岡市に国が造った製糸工場じゃ。品質のよい生糸の大量生産技術を外国から学びその模範工場を造ったのじゃな


ふーん、他には?


伊勢崎市の田島弥平旧宅(たじまやへいきゅうたく)、藤岡市の高山社跡(たかやましゃあと)下仁田町(しもにたまち)荒船風穴(あらふねふうけつ)がある。これらは富岡製糸場と共に(とも  )2014年世界遺産に登録済じゃ


おい与太郎、「いさん」なら他にもあるぞ


八つぁん(はっ      )それはどこだい?


太田市さ、なぁご隠居


それは整腸薬じゃ。与太郎、勘違いしちゃいけない、太田市に世界遺産はなく、太田市と薬の太田胃散とは関係がない。


ご隠居大丈夫(だいじょうぶ)、これで宿題完了


どういうこったい?


先生は胃が弱いから胃散を調べろと言ったのさ


与太郎、宿題の答えが「太田胃散」かい、先生何というかね?


有難う(ありがと  )、いい薬です



 

「目には目を」

目から(うろこ)だね


目から鱗?、コンタクトの間違いじゃないのかい?


何言ってんだい、これは(ことわざ)。物事が急に理解できるの意味じゃ。


どうして目から鱗って言うんだい?


これは新約聖書から来ている。神の光で視力を失ったサウロにイエスの使いが手をかざした(ところ)、目から鱗のようなものが落ちて視力を取り戻した。で、あるきっかけで急に理解できる事を「目から鱗が落ちる」と言う様になった。まぁお前さんに、諺の意味を分からせようなんて二階から目薬だがね。


二階から目薬?、目薬は市販かい?


何言ってんだい、これも諺じゃ。物事が思う様に行かずもどかしい様子や回りくどくて効果が得られない事の例え(たと  )じゃ。


おいらを馬鹿(ばか)にしてやがる


そう、目くじらを立てなさんな、お前さんが怒るなんて目から鱗だよ


馬鹿言っちゃいけねぇ、鯨は哺乳類、鱗なんかありゃぁしない。こうなったら、「目には目を」だ。勝負、勝負しましょ


何の勝負かね


決まってますがな、二階から目薬でさぁ



 

「死後の世界」

ご隠居(  いんきょ)、死んだらどうなるのかい?


何だい(なん    )与太郎(よたろう)、死後の世界が気になるのかい?


あぁ教えてケロ


あたしもね詳しくは知らないよ、それでもいいかい?


あぁ死後の世界にレッツラゴー


死とはね、肉体の死であって意識の死ではないのじゃ


それアウトオブ眼中、どういう事?


死とは、肉体と意識つまり魂が離れた状態なのじゃ


アジャパー、魂がこの世からドロンしたって訳ね


そうだ、三途(さんず)の川を渡るって言うだろ。その川に三つ(み )の瀬があってね、生前の業(せいぜん  ごう)で、善人は橋を、軽い罪人は浅瀬を、重い罪人は流れの速い深瀬を渡るのじゃ


渡るとどうなるだい?


閻魔(えんま)様から裁きを受ける。現世の行いが悪ければ地獄行きじゃ


閻魔様の「激おこ(げき    )ぷんぷん丸」で地獄行き


わかったかい、与太郎?


合点(がってん)承知の助(しょうち  すけ)


お前さんさっきから、今は亡き言葉、所謂(いわゆる)死語のオンパレードだね


あぁご隠居、ワイルドだろぉ。駄目かい?


いや逆にナウい、でも嘘はいけないよ


なぜだい?


あのよぉ閻魔様に舌をぬかれるからね



 

「歯には歯を」

八つぁん(はっ      )、歯に衣着(きぬき)せず言うよ


何だい(なん    )ご隠居(  いんきょ)、その歯に衣着せずって。おいらの出っ歯に服を着せようとでも?


そうじゃない、「歯に衣着る」は「歯を隠す」という事。で「歯を隠す」は、はっきり言わないの比喩。だから歯に衣着せずというのは、思っている事を包み隠さず言う事じゃ


で何だい、その歯に衣着せずは?


うん、お前さんの前歯に青のりがくっついていて、お前さんが喋ると吹き出しそうになる。だから早くとっておくれ


そんな事かい?(楊枝でこする)どうだい、取れたかい?


あぁ取れたよ、これで食事に集中できる


であっしにも歯に衣着せず言わせておくれ


何だい?八つぁん


ご隠居の口の中、前方の骨に…


何か、奥歯に物が挟ま(はさ  )った言い方だね


うん奥歯に「もやし」が挟まっている、ちょいと待っておくれ(又々(またまた)楊枝でほじる)。とれたよ、ご隠居。


で何だい、歯に衣着せず言いたいのは?



ご隠居も、前歯に青のり



(俗にこれを「歯には歯を」と言うとか言わないとか)


 

「サステナブル」

お前さん、SDGs(エス・ディー・ジーズ)って知ってるかい?

何だい(なん    )?はなわかい?

それはSAGA(エス・エー・ジー・エー)佐賀。違う違うそうじゃ、そうじゃない、君を逃さない、SDGsだよ。

それは鈴木の雅之氏だろ。でSDGsって一体何(いったいなに)ものだい?

これはねSustainable Development Goalsの略で、「持続可能な開発目標」の事さ。

何だいそれは?

これはね、現在、世界が共通目標として取り組んでいるのが「サステナブル」つまり「持続可能な」社会の実現なのさ、で環境問題、貧困や飢餓、経済成長やジェンダーまで様々な課題の危機意識が広がり、2015年国連でこのSDGsが採択されたのさ。


つまり「地球は一つ、継続は力なり社会」って事かい?

まぁそういう事になるかね。

どうも横文字には、身の毛がよだつ、ぞくぞくと身震いしちまう。

でお前さん、どうして欲しいんだい?

さすってなブルッときちまうから。

こうかい

あぁそうだ、でも途中で投げ出しちゃぁいけないよ

どうしてだい?


サステナブルっていうんだろ



 

「スポーツの祭典」

オリンピックが始まったね、お前さん、見に行った事あるかい?


あるよ、品揃えが豊富、しかも安い


お前さん、それはディスプレイカウントショップの事じゃないのかい?私が(わたし  )言っているのはスポーツの祭典の事だよ。でコロナ禍(   か)でその開催の是非が問われているけどね。まぁ各国の政治的な思惑も絡んでるんだろうね。一度、各国首脳が集まって話せばよかったのに…


何をだい?


世界的な大運動をやるか、やらないかについてだよ


そうかい、じゃぁサミットだ。


サミット?どうしてだい?


なにせ運動会の当日は弁当が必要だからね、で食材の準備さ。


お前さん、それはスーパーの事じゃないのかい?


そうだよ、運動会にはオリンピックのレジャーシート、サミットの食材が定番だろ


どうもにもこうにもスポーツの祭典にはお金がかかるねぇ、しかもコロナ禍ときちゃぁ、二進も三進も(にっち  さっち  )いかないよ。


二進も三進もいかないじゃないよ、それをいうなら、バッハもガースーもいけ好かないだよ



 

「馬と鹿」

ご隠居(  いんきょ)、バカの漢字は馬と鹿だけど、動物愛護団体からクレームが来やしないかね?馬と鹿を馬鹿(ばか)にしているなんてね。

八つぁん(はっ      )流石(さすが)にそれはないと思うがね

それじゃご隠居、なぜ馬と鹿なのかい?

バカの由来だね、諸説あるが、まずはサンスクリット語で「無知(むち)」や「迷妄(めいもう)」を意味する「baka」「moha」の音写「莫迦(ばくか)」「募何(ぼか)」からとある。でまた中国の故事『史記・秦始皇本紀(しんしこうほんき)』に「鹿を指して馬と為す」という件が(   くだり   )ある。これは秦の始皇帝亡き後、悪臣の趙高(ちょうこう)が権威を試すため二世皇帝に鹿を献上した際、鹿を馬と言った。皆、趙高を恐れ異を唱えた者はおらず、鹿と言った者は処刑(しょけい)された。そこから理屈に合わない事を権力で無理に押し通す事の例え(たと  )になった。「鹿を馬」「馬を鹿」ともいうね、でこの馬と鹿を漢字とした説がある。

ふーん、理不尽を権力で通す、確かに「馬を鹿」だ。おいらは絶滅危惧種のカバを人間のエゴで逆立ちさせる事かと思ったよ。

それもバカな話だね


 

「寿寺」

どうしたんだい熊さん(くま    )、さっきからぼーっと突っ立ていて?

いや、八つぁん(はっ      )、あっしはここで立っているよ。

なぜだい?、座りなよ。

いや、いいよ。

どうしてだい熊さん、座らない訳を教えてくんねぇ。

八つぁん、ここだけの話だよ、実は座ると肛門様が痛いんじゃ、それで座れないのさ。

熊さん、それは、「ぢ」じゃないのかい?イボかい、キレかい、それともイチローじゃなくヂロウかい?

八つぁん、ぢに詳しいのかい?

あぁ、ちょっとそこらの野郎よりはね、で、ぢの漢字知ってるかい?

いや

やまいだれに「寺」と書くんだよ。よく「寿(ことぶき)」と勘違いされるけど、正しくは寺。

まぁ、肛門様に痛みがあるから寿ではないな。

そうだね、寿寺(ことぶきでら)にでも行ったつもりで、ここに座って肛門様を拝みなせぇ。

そうかねぇ、では(熊さんゆっくり座ります)、よっこい正一、いてて…

おっ熊さん、雨が降ってきたよ、こりゃ縁起がいいや。

なぜだい?


雨降って、ぢ固まる、っていうじゃないか。


 

短々落語臭

お後がよろしいようで。

短々落語臭

400文字以内のショートショート落語臭「短々落語」の落語集。紫紺亭弁当が贈る、創作落語、全70編を収録。爆笑は期待できないが、じんわりとくる面白味が詰まった、短編落語集。

  • 小説
  • 短編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-06-19

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 「木綿の」
  2. 「豆腐の角」
  3. 「隣の客」
  4. 「駄洒落」
  5. 「新番組」
  6. 「なんか違う(違和感)」
  7. 「不是」
  8. 「平行線からの」
  9. 「八卦飴」
  10. 「食通」
  11. 「たらねち」
  12. 「天衣無縫」
  13. 「かい文遊び」
  14. 「鳩豆」
  15. 「ふじの病」
  16. 「饅頭屋こわい」
  17. 「茶番」
  18. 「願かけ」
  19. 「新撰組」
  20. 「むむむ」
  21. 「南の瓜」
  22. 「つるとかめ」
  23. 「鶴亀算」
  24. 「たこの足イカの足(続「鶴亀算」)」
  25. 「粋な床屋」
  26. 「トイレの死神」
  27. 「そろそろ」
  28. 「青天の霹靂」
  29. 「やっぱりイナバの白兎」
  30. 「横浜」
  31. 「かめとキリギリス」
  32. 「ざるそば」
  33. 「なぞなぞ」
  34. 「ちりとてじん」
  35. 「ムチムチマン」
  36. 「火の用心」
  37. 「闇鍋」
  38. 「いくよ餅くるよ餅」
  39. 「七夕」
  40. 「けっこうなピザ」
  41. 「炊飯ジャー」
  42. 「いとしやお菓子」
  43. 「お忙しい最中」
  44. 「機動戦士」
  45. 「いこみき(点と線)」
  46. 「万能薬」
  47. 「泣きの一席」
  48. 「湯豆腐」
  49. 「おかめ八目」
  50. 「大人の絵かき歌」
  51. 「海の馬」
  52. 「花火料理」
  53. 「ガスの極み」
  54. 「クイズ知らんがな」
  55. 「潔癖症」
  56. 「うなぎ三昧」
  57. 「感染症対策」
  58. 「ギター易者」
  59. 「ココはスポーツ観戦バル」
  60. 「冒険家とは」
  61. 「お囃子」
  62. 「駅構内」
  63. 「世界遺産」
  64. 「目には目を」
  65. 「死後の世界」
  66. 「歯には歯を」
  67. 「サステナブル」
  68. 「スポーツの祭典」
  69. 「馬と鹿」
  70. 「寿寺」