双子-焼き場-

その双子は生まれながらに身体の一部がつながっていた。
二人で内蔵の一部を共有していたので、手術によって無理やり切り離すことが出来ないまま、彼らは六十年間、何時も一緒の生活を送ってきた。
そんなある日、彼らの片方が突然に意識を失い彼らは入院して、そのまま、意識を失った片方が息を引き取った。
緊急に手術を行い、彼らの共有していた臓器を生きているもう片方に移植して、彼は初めて分離独立した。
簡単な葬儀を執り行い、亡くなった片方のご遺体を私は火葬した。
身体の一部が抜けおちたご遺体だった。
さあ、これからどんな風に、独立した方が生きていくのやらと、思っている矢先に、そのもう片方のご遺体が焼き場に搬送されてきた。
自殺や手術後の感染症とか、不審な死に方ではなかったらしい。
あくまで、自然な死に方。
個人情報の規制があるから、私の所には、らしいと言うくらいの情報しか来ないし、彼等がどんな日常を過ごしていたとか、身体のどこがどうなっていたとかいうプライベートな情報は、入ってこないし、たとえ入ったとしてもここでその情報を公表するのは違法なのだ。
私にとっては、そこいらへんの所はどうでもいい。
私にとっては、離ればなれになった彼等のご遺体を、私が担当して、私がお骨に骨上げしたという、たまたまの偶然が重要だ。
何故だかわからないけれど、私が彼等の死に立ち会った。
同じDNAを持ち、身体の一部がつながっていた不思議な双子は、その遺伝子情報の中に寿命の情報もあるのだろうか?
例えば、何らかの理由で二人が同時に亡くなったとしても、二人を同時に火葬の炉の中に入れることはたぶん出来ない。
この町の炉はそんなに大きくないからだ。
今回またまた二人が別れたので、それぞれに何の滞りなく、火葬が出来た。
人の寿命は不思議だ。
仕事が終わり、
その日の夜。
夜空には、およそ百年周期にやって来た彗星が長い尾っぽを夜空になびかせ、横たわっていた。
この彗星も、実は双子の星が落花生のような形で繋がっている形をしているらしい。
我々の寿命なんて、この彗星を一生のうちで一度見られるかどうかなんて儚いものなのに、この彗星は、もう何度この地球に姿を見せているもんやら?
当然、人類が生まれる前から、現れていたのである。
人の命なんてね。

双子-焼き場-

双子-焼き場-

  • 小説
  • 掌編
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  • ホラー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-06-17

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