全部きみのせいにして
ノアの心臓に、ふれるみたいに、恋をしていた。かさなりあう、ひと、都会の喧騒というのは、どこかさびしい音楽にもにている。きれいなままの、手で、かよわいものを愛でたかったのに、いつのまにか、うすよごれていた。指先。たよりないとわかっている、きみを掬いあげることも、できないで、夏は、じわじわと侵食して。空気。むさぼる、チョコレートと、本。にんげんってどうしてこうも、ああ、と嘆く、ぼくも、にんげんであるのです。世界というものの一部。たいせつなパーツなのだと、神さまはいってくれない。月の神秘を、りゆうにして不機嫌な女神が、とびっきりおいしいデニッシュパンを望む頃、緩やかに墜落してゆく。からだ。六月に沈む。
全部きみのせいにして