繭子の儚 1️⃣
繭子の儚 著者不詳
≪禁忌に抗い挑戦する季刊誌『地下文学』より転載(不定期)≫
1️⃣ 繭子
大陸で、戦争の危機が一段と深まった頃のことである。
この島国の西の方に、一つ違いの義理の兄妹がいた。
繭子が九歳、男が一〇歳の時に、両親が再婚したのだ。
繭子の母は教員で、一年前に夫が病死していた。繭子は一人娘である。
男の父は職業軍人で、二年前に離別していた。母はある男と失跡したのだった。
時を経て、大陸の戦争が南方に拡大する兆しを見せ始めた頃の、男が高校三年、繭子が二年の盛夏である。
二人が夏休みの昼下がりだ。
両親は親戚の急な葬儀に揃って出かけていた。この日から二日間、不在なのである。
父は街外れの小山の中腹の軍施設に勤務して、母は近くの国民学校に通っている。男の兄は出征して、姉は嫁いでいた。
男が離れの午睡から醒めて居間に行くと、形跡はあるが繭子はいない。
何故か男は身体を固くした。暫く待っても変化はない。
ある予感に引かれて、男は廊下を辿って、奥の両親の寝室の板戸を密かに引いた。
すると、北窓の淫靡な薄陽のなかで、繭子の豊穣な尻が剥き出しなのであった。
足元に青いスカートとパンティが打ち捨てられている。
上半身は黄色の半袖シャツを着けている。
繭子はふしだらに腹這いになって、広げたおびただしい写真を見ているのだ。
右の手が下腹部に入っていた。自慰をしているに違いない。
男は沈黙を呑み込んで、女の秘密の戯れに食い入った。
2️⃣ 義兄
つい最近にも似たような出来事があった。
やはり、遅い昼食を摂りに母屋に行くと誰もいない。
両親は、やはり戦死した親戚の急な葬儀に、揃って出かけていた。
居間で昼飯を摂っていると、繭子が入ってきた。
二人とも無言だ。
水風呂にでも入っていたのか、濡れた髪にタオルを巻いて半袖の青いシャツに乳首が突起している。
長くて青いスカートをはいている。
「気持ちいい」と、言い、背中を見せて座った太股を広げて、スカートの中に扇風機の風を入れている。
暫くすると向かいに座り、桃を食べ始めた。汁をしたたらせて赤い唇を紅い舌で舐めた。
石鹸と強い体臭が漂ってきた。男の股間が反応した。
「また暑くなった」と、繭子が扇風機を回して、男に背を向けて横になった。
スカートを太股までたくしあげて、「暑い」「裸になれたら気持ちがいいのに」と、聞こえよがしに呟いた。
その声が男に届いた。女の尻が淫靡に揺れている。
男が背後からスカートをめくった。裸の尻がむき出しなった。
繭子は、「厭だ」とは言うが、声を押さえている。特段の抵抗はしない。
足を閉じてはいるが、手で探ると、簡単に太股に届いた。
しかし、ついに男が隆起することはなかったのである。
男は、女の隠微な痴態に、刹那的に反応した性根が疎ましかった。
だから、今こそは失敗はできないのだ。
(続く)
繭子の儚 1️⃣