愛なき世界
にじむ。眼球をまもる、皮膚の椀、ふちからこぼれる、なみだ、というなまえの水滴が、いつか、海をつくる。きみが好きで、けれど、恋と呼ぶには淡く、つまり、愛には程遠く、心臓をさしだすまでには、いたっていない感じは、なんだか、すべてが、ちゃちなおままごとのように思える。生きていることすらも。おとうさん、という存在は、ぼくにとっては、絶対的でした。幼い頃は神さまで、十七才くらいになってからは、独裁者、という言葉がしっくりくることに気づいた。おかあさん、なんてやわらかいひとは、まぼろしだと、いまでも思っている。おかあさんがいて、おとうさんがいて、おまえがいるのだと、きみは云うけれど。(にくかいはなくても、たいえきがあれば、ぼくらはうまれるのではないでしょうか)
冒涜。
きみは、ぼくのことを、かわいそうだと同情して、でも、それだけだ。
愛なき世界