女の姿態3️⃣
女の姿態 3️⃣
3️⃣ 錯誤の交錯
あの時、一〇ぶりに再会した女は、男の性癖を呑み込んだのか、フィラチオが大好きだと言う。
しかし、一〇年前に初めて出会って間もなく、男の股間にうずくまって陰茎を含みながら、視線を合わせて、余りした事がないと、稚拙な技巧で、まんざら嘘でもない風情で、女は言った。
だから、一〇後には、男が、女自身の性癖を劇的に変幻させた、特別な存在だとでも言いたかったのか。
いったい、この女の言葉は、悉く一貫しない。
殆ど、分裂の症状を呈している。と言うより、女というのは、押し並べてそうした品性なのか。
この女が無意識で為している言葉の上塗り、ワープロで上書きをする様な特質は、即ち、同時にあの国の文化とも言える風潮は、あの国の際立った特性だろう。
それは渡来人が次々と襲来して創られた、あの国の成り立ちに由来しているのではないか。
弁証法で考える男はこうしたその国の風潮や、女の対極にいた。
だから、この二人は対極同士が、性愛で交錯しているのだ。
女は記念日が好きだが、男は苦痛を覚えるほど苦手だ。バレンタインデーをする女は、ホワイトデーをしない男を許せなかったに違いない。
男の誕生日のプレゼントを質す女に、男がフィラチオと答えると、チューブに入ったチョコレートですると言い、実際にした。
だが、特別な快感はなかった。女の姿態からも、むしろ、陳腐な可笑しみしか覚えなかったのである。
女はクリニングスが好きだとも言う。陰核への長い口淫をせがむ。男は苦手だ。流れ出てくる粘液が苦痛だ。
そもそも、異物が訳もなく口に入る事が、男は許せない。
男は自身で嗜好し、求めながら、フィラチオをする女の口の感覚を理解できない。
女上位を逆にして互いの性器を口で求めあう。合理的な姿態だが、数えるほどしか試さなかった。
女が射精を口に許した事があり、試みたが、ついに、出来ない。
その瞬間の風景を男はやはり嫌悪した。
精液の臭いも好きではない。
ある場所の開花した栗林は、その臭いで満ちている。男は息をつめてアクセルを踏む。精液の実体で精子が蠢いている不気味が嫌だ。
あの時、たまたま見た深夜番組の露骨な交接の場面に、女の劣情が異様に同調し、そもそも、男が原理的に好きな、女の半ば崩れた豊潤な身体が激しく感応した。
淫液を尻まで繰り広げて、洋物は大きすぎると言う。
だから、男はモザイクのないビデオを通販で入手した。歓喜した女は暫く虜だった。
その時、男が荒筋を脚色した卑猥な話を、交接をしながら二人でした。女は共同執筆者として、些か有能だった。
(続く)
女の姿態3️⃣