水上の花

薄い膜じゃ眠れなくて

硬い殻じゃ殺しそうで

ずっと、ずっと雲をなぞっていた

ひとりで、なぞりつづけていた

俯く花に光は視えない

如雨露は視えない

吐き出すものがなくなって

彼方に遠ざかる自分を感じる

水平線の彼方に

いつかの面影を捜していた

俯きはじめる前の

花の面影を

一輪の笑顔を

水上の花

水上の花

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-06-08

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted