ある女優更級黎子考

ある女優 更級黎子考

1️⃣ 淫語

 更級黎子というアダルトビデオの女優がいる。卑猥な囁きが絶品だというふれこみだ。
 淫語の女帝だと称している。歳は五〇辺りだろうか。
 
 豊満だが崩れた身体だ
。ビデオでは股間を広げて肉の奥まで、菊門すら曝している。
 二人の男を同時に相手にし、アナルセックスもレズビアンもする。
 いったい、何本の作品に出演したのだろう。

 ある作品。題名は、『更級黎子の華麗な浮世風呂』だ。
 実際の施設なのだろう、豪奢な和室を背景に、黎子が朱の長襦袢姿でかしずいている。

 突っ立った半裸の男優は赤銅色だ。若い。客という設定だ。
この年齢差に、或いは、この綺談の秘密が暗示されているのだろうか。
 この男優は海なのか、仕事がら人工で焼いたのか。
ともあれ、赤銅の上半身に、黒いトランクスしか着けていないのだ。

 すると、男優の隆起に、「まあ。もう、こんなに大きくなったの?どうして?ねえ?」などと、黎子の囁きで、あるドラマが始まるのである。

 「あなたとはたった今、初めてお会いしたばかりなのに」
黎子の声は、申し分のない程に、その身体と釣り合っている。
 
「オチンポがこんなに張り切っているんだもの」
「疼いているのかしら?」
「ズキズキ?」
「嵌めたいの?」
「お若いのね?」
「あなたの気に入られたのなら、嬉しいわ」
「いっぱい楽しみましょうね」
 
 大筋はあるのだろうが、細やかな脚本ではないだろう。
 だから、黎子の囁きは自身の思い付き、と言うか、自然な情念で発しているのに違いない。
 
 突っ立った男が下着をつけたまま、切れ目から隆起を引き出した。浅黒く、舐めるようなカメラに光っている。
 端坐したままの黎子が、「まあ」と、逸物と男の顔を交互にしながら、「逞しいオチンポ」と、囁く。

「立派な亀」
「青筋が立って」
「臭いを嗅がせて」と、鼻を寄せて、「まあ、厭らしい臭い」
「臭くて、厭らしいオチンポをお持ちなのね」
「私、このスケベな臭いが大好きなの」
「スケベなオチンポだわ」
「あなた?どうしてこんな風になったのかしら?」

「これで散々に女達を泣かせたのね」などと、肉厚な唇を塗らして、紅い舌を舐めながら、次々と囁くのである。

(続く)

ある女優更級黎子考

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  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • サスペンス
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-06-08

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