余命100年
2020/2/6
ねえ、そんなことで、泣かなくていいよ しななくていいよ それでも分かってあげられないのは、なぐさめるのが苦手なわたしのせいなのかな
愛も、意味も、何も知らなくていい考えなくていいきみは、そこにいるだけで私が代弁してあげられるから、一緒に歩いて、ねえ深夜のコンビニより神聖なものを知らないきみのこと それでもすきだよ、お金で買えない幸せの、はしっこの方で蹲って生きていたいよ 死にたい きみが泣かないから、泣かないって決めたのに
じっとしているといろんなことを考えてしまうからずっと忙しくしていた、自分の価値とかどうでもよく、ただ動いていたかった 生きてると思っていたかった 深夜にバーガーショップでシェイクをすすりながら凍えていた 安い甘さが好きだった 代替のきくものばかりそばにおいていたかった 代替のきかないきみを隣においていいと思えるのは、だから多分、恋だからだよ。
手を繋ぐと温度がわかることが怖い 細胞だとわかることが怖い 血液の鳴動も、皮膚の息づきも、息の匂いも、君のからだの全部きれいだってわかるから怖いの 人間が油の塊だって知ってるよ だから怖い、ひとりの人間の君が、唯一で、こわれたらもう永遠にありえないってこと。ひどい夢をみた朝、怖かったねって、もう大丈夫だからねって頭を撫でてぎゅっとして、なのに全然安心できなかったのは、君の余命のことを考えてしまうから。君が、わたしの前に死ぬのもわたしの後に死ぬのもいやだ、永遠にありえなくなるのがいやだ、だからいつかわたしが君を殺すよ、それがいいよ あと100年でいいから、君を隣においておきたい いつか死ぬ、それだけを希望にして、わたしは100年後、君を殺します。
余命100年