送別
2020/7/24
借り物の言葉で勝とうとするな あなたにだけ語れることがある 他人の言葉を顔に着けてもそれは一生仮面で、あなたの顔にはならない あなたの車窓になりたいよ 心から ひたむきなものにふれて自分がどんどんどんどん透明になっていってしまうのを見ていた、捨てるものと捨てないものがわからないままで ね、毎日怖くて、明日も明後日も怖いのかと思うと死にそうになるね、朝が来て夜が来て、季節がまわる、崩れ落ちるようなその音楽を聴いて、どこか救われたと思っているのは実はわたしだけかもしれないと、わかった春
もうここにはいられないよ、と、狭い部屋で言葉をだきしめている、そのときに体から漏れ出す透明な光が、温度を帯びて、ひとつの星になる 燃えて死ねたら、きっと花火になって、憎んだ世界を美しく照らすだろう それが最高の復讐だと きざな報復だと、それでも手持ち花火の持ち方を間違えられないわたしは、光になれないままで息をする、目を瞑る あなたがいないままで生きてきてしまいました
いつかあなたを捨てるときがくるかもしれないそのときに、あなたの目を見てさようならが言えるかどうか、ただそれだけなんだよ
送別