夏の終り

2020/9/27

悲しくて怖くて、さみしくて、あなたを殺してしまった夏の終り 無垢なからだ、無垢なひとみの奥にちらちら光っていたそれを、わたしは掴むことができなかった
全て終わったようにぼんやりとした真っ白な朝が、仕舞っていた記憶を掘り起こしてさっさと死ねとわらっている ひっかいた果物の傷から溶けだす透明な痛みが、あなたの最後の言葉に似ていて、ああそうだったのとまばたきをして 貝殻の破片で切った皮膚、海につれて行って やさしく手を引いて 叶わない温度となめらかな皮膚の触覚に馳せた血液の鮮やかさ 焼き付くようにともって 焼き付くように愛して
だめだよ あなたはわたしの首を締めることができない わたしたちの夏には、刺殺しかありえなかった
上手にできないジグソーパズルは真っ青な憂鬱の色をしていた 畳んだ足に散る、鮮血のような青、それをひろいあげてあなたの不完全な胸に埋め込んでやれたら 息を吹き返したあなたがいつか起き上がるとき そうだったね、あなたは、と目を伏せて、笑って 波の音がする この部屋にはもう夏が来ないのに ラジオから流れる訃報に手を翳して、知らない歌を聴いている、波の、心臓の鼓動に似た旋律を どくどくと耳に溜まる、あなたの血液を

夏の終り

夏の終り

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-06-06

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