“し”はしあわせのし
しあわせだって早くかわいいあの子の所へ行きたいよ。
きのうはあとちょっとのところで行けたのにな。
「ちくしょう。」
道に転がっていた石はポーンと宙に浮いた。
「あ〜あ、あの子がおいでよ!」って呼んでくれれば今すぐにでも行くのにな。
しあわせが呼ばれなくなってから、もう半年も経ってしまっていた。
呼ばれるかな?と思うと苦しいし、どうせ呼ばれないよ!と諦めればさみしい。
どうせみんな“しあわせ”のことなんて忘れてるのさ。だから、
「うきうきするのはほんの少しにしよ。」
聞こえる。
しあわせが祈るちいさい声。
“し”はしあわせのし