ネオのいる夜
こどもたちの歌声が、夜を切り裂いてゆく。ぢょき、ぢょき、と、はさみをいれるみたいだったので、ぼくはすこしだけ、イッた。おのれの性嗜好を、ちょっとこわいなぁと思いながら、ネオが、剥製にされた恋人にまいにち、祈りを捧げている場所で、いちごジャムとマーガリンのコッペパンを、たべていた。ドラッグストアで買った。ネオとは、そういうことはしないと決めているので、コンドームは買わなかった。ときどき、相手をしてくれる、シンヤさんは、きまぐれにしかあらわれないので、いつも、逢えるわけではないし、さいきんは、突発的に増加した、こどもたちの、歌声のせいで、夜にしか生きられないシンヤさんには、生きるのがくるしいのかもしれなかった。切断されたところの、星や、夜の粒子なんかは、舞い散って消えてゆくばかりで、そこに残るのは、空虚だった。片膝をついて、両手をあわせている、ネオのせなかをみているあいだにも、こどもたちは歌っていて、おとなたちは眠っていて、シンヤさんはひとり、ふとんのなかで丸まっているのかもしれなくて、夜は、ぼろぼろになってゆくばかりで、なんだか、すべてが、かわいそうだと思った。
ネオのいる夜