透明な灰

あの日には戻れない

そんなわかりきったことを僕は

いつまでもいつまでもなぞっていて

いつまでもいつまでも嘆いている

生きていくことの空虚を憂いている

瞳から過去が零れ落ちていく

とめどなく、とめどなく零れ落ちていく

僕はそれをどうすることもできない

黙って見ていることしかできない

浅い追憶の泉で、ひとり溺れて。

透明な夢の彼方で、透明な灰になるまで。

永遠や絶対なんて言葉に縋るほど

きみは未来に期待していなかったね

きみには今しかなかったんだ

きみには今しか要らなかった

姿をかえて遠ざかっていく

手に届かないものが美しいのは

手に届かないからだよ

透明な灰

透明な灰

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-06-01

Copyrighted
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