倒立
築き上げてきた塔が傾く
僕はまた見失ってしまう
僕はまた不戦勝を許してしまう
眼下で繰り拡げられる惨劇を前に
為す術もなくただ立ち尽くしている
僕は僕自身の傍観者だった
過ちを犯すのはいつだって
自分を制御しきれなくなった人間だ
耐え続けることに耐えられなくなった人間だ
自分を騙し続け、歪め続けた果てには
空虚な現実が拡がっていた
無機質な銃声が轟いていた
僕は黙って死に続けることしかできない
幾度となく死に続けているせいで
僕は何も証明することができない
すべてが瞞しに思えてならない
陳腐な意味を与えて安心を得るくらいなら
黙って不安に添い遂げる方が増しだ
倒立