信じたいもの。


~前作、居場所の滝口視点~


『もう人なんて信じない。』
そう決めたのは、まだまだ幼い中学2年生のときだった。
思い出すのも辛いから詳しくはいえないけど、まぁ、裏切りってやつだ。
あの日、俺は裏切られたんだ。



中2の後半に決心したから、だいたい1年後。俺は高校生になった。
そこで出会ったのが、坂下だった。
飾らない自然体で、表裏が無くて、ちょっと不器用なやつだった。
裏表が無い坂下は、ズバッとものをいうことからか、孤立状態が続いた。
俺も最初はそんな坂下が、苦手・・・だったのかもしれない。
でも、ズバッといえる坂下が少しうらやましくも思った。


しかし偶然か運命か。隣の席になってしまったのだ。
「あ、えーと。滝口ですけど。よろしく?」
「あぁ、よろしく。」
シンプルながらこれがはじまり。
最初こそあんな感じだったが、話すごとに楽しくなってきて、悪いやつじゃないって分かった。
坂下も、俺と仲良くなったって実感してくれてたんだと思う。


そこである日きいてみることにしたんだ。
「坂下。おまえって、どーしてそんなにズバッと言えんの?」
「・・・はい?」
質問の意味が分からないって顔だ。
「だから、かくさねーじゃん。」
「あぁ、だって隠していいことある?ないでしょ?」
「・・・まぁ、そうだな。」
「言葉で嘘をついて、つくろって・・・。それって小さな裏切りでしょ?」
当たり前のこと言わせるなって、目が言ってる。
だけど坂下。それって当たり前じゃないんだぜ?


誰もがみんな嘘をついて生きている。
本当の弱さを隠すため、自分を守るために、自分を偽っている。
嫌われたくなくて必死で、どんどん自分が無くなっていく。
そーゆーもんなんだぜ?


「じゃあさ、滝口。」
「ん?」
「あんたは、アタシに嘘ついてるのか?」
「え・・・?」
「アタシは滝口を信じたい。」


信じたい・・・?


そんな気持ち忘れてた。偽ることに必死で大事なことを忘れていた。
過去から逃げて、なにになったろう?
向き合わなきゃ何もはじめらないのに。
もう1度、誰かを信じられるだろうか?
いや、信じたい。俺は信じたいんだ。
裏切りたくない。もう1度、本当の自分で━



こんなにも簡単なことだったんだ。
信じることでこんなにも世界が変わる。
世界を変える方法は

限りなくシンプルで。

信じたいもの。

信じたいもの。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-30

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