5月くらいまでの短歌(2021年)
帰るまでが遠足ですと告げられて遠足だったと後からわかる
おまえらのうなじに点る紫の〈降ります〉ランプ(だが、停まらない)
いっぴきの猫、三匹の犬になり、犬になったらダメだろ猫は
昼ひなか ワニのねどこで飲むソーダ 使っても減らない財布がほしい
ひどいゆめ(痒いみの虫)(痒くないお粥)(車麩)信じてほしい
「これは茄子、こっちはばなな、それは茄子」「アド街を見た」「ぜんぶ薔薇だよ」
これはあれでもあれはそれそれはそれとしてお昼の麻婆豆腐
爆風で飛ばされてきた草原の母です。すべてお話します……
ファミレスのボックス席で横になる春の手前にあるわだかまり
トイレットペーパー、といぺと略しかといって といぺ、なんにもならん虚無だよ
忘れたよ あなたの名前 あんた、誰? どうでもいっか 夏日だってよ
酒カスになるにも金が必要で――さらば、すべてのエヴァンゲリオン
残穢という語の存在をたしかめるように「ざんえ」でエゴサするよな
スーパーで売ってたなめこ(したがってスーパーなめこ)すごいぞ、きっと。
するめいか・カラシニコフの恋ごころ・ロリコン野郎・海に住みたい
まちがえて建ってしまった図書館は燃やして灰に戻しましょうね
おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃってうんこしてもはちゃめちゃに仕事ある職場のトイレ
なにもかも無意味されどもずんだもちからくる光溢れんばかり
ちてゃやぶるという呪文に導かれ喚ばれてしまう惜しい神さま
5月くらいまでの短歌(2021年)