居場所。

どーしてだろう?
前まで「親友だよ」なんて抱きついてた女子達が口もきかなくなった。
影で互いの悪口を言い合って、聞こえるように文句を言って。
なにが親友なんだろう。親友って、そんなに軽いものだったんだね。


と、まぁ文句を言ってみても、アタシのクラスじゃこれは日常茶飯事で。
結構気の強い女子が多くて、頑固で、ついでに自分からは謝らないやつが多い。
アタシはそれに巻き込まれて、うんざりして・・・
つい1週間前くらい、自分が居た(上辺だけ)仲良しグループを抜けて1人で過ごすようにした。

誰とも関わらない学校、誰とも話さない休み時間。
不思議と寂しくはなくて、逆にもう巻き込まれないんだという安心を得ていた。



「おい、坂下。」
「あ?」
「女のくせにマヌケ面でふりむいてんじゃねーよ。ばーか。」

このムカつく野郎は、滝口。
話があうし、何気に話しかけてきてくれるし、なにより飾らないから気楽。
あと、たぶん滝口は、アタシのことを心配してくれてる。
だけど話すのは久しぶりだ。

「んだよ、久々に話してそれかよ。いーだろ、どーせ滝口なんだしさ。」
「ほんっと口が悪ィよな。お前が負のオーラ出してるから話しかけにくかったんだろ。」
「負のオーラ・・・?」
「坂下。お前・・・また女子と喧嘩か?」

『また』っていうな。

「喧嘩じゃない。グループぬけただけ。」
「はぁぁぁぁ!?」
「たきぐちー。うるせーよー。耳いてーよぉー」
「お前バカかよ!女子はめんどいんだから仲良くしとけよ。」
「はいはい、心配どーも。ほら、滝口。もう席つきなよ。」
「わかったよ。1人になっても知らねぇぞ。」

心配ばっかしてさ。お前はお父さんかっつーの。


下校時間。
下駄箱で小さくため息をつく。今日はなにをしよう・・・なんてさ。
1人でファミレスとかは、勇気でないし。本屋は昨日行った。家に直行・・・は嫌だしなぁ。
「おひとりですか?おねーさん。。」
バッとふりかえると・・・
「たき・・ぐち?」
「おうよ。見たら分かるだろ。」
「なに?」
滝口は一瞬ためらったが、少し照れたように下を向いた。
「お前が1人で寂しがるから!一緒帰ってやろうかなってさ・・・。」


よ、いうわけで一緒に帰ってみたものの、とくに行く場所はなく結局公園に留まった。
「滝口ー。誤解されても知らないよ?」
下校途中に男女が2人で・・・なんてさ、もう恋人同士としか思われないじゃん。
からかったつもりだったのに、なのに・・・どうして笑ってくれないの?

「なぁ、坂下。」
「ん?」
「お前、戻れよ。あいつらのとこ・・・。」
「あいつらって・・・前にいたグループのこと?」
「そう。」
「どうして?」

滝口は、いつも以上に真剣だった。
「1人なんて嫌だろう?寂しいの嫌いなんだろう?」


その言葉が胸に刺さった。
・・・アタシは『1人』なのだろうか?
違うよね。だっていつだって・・・滝口が居るのにさ。
絶対1人になんてしないくせにさ。


「心配なら心配って言えば?」
くすくすと笑いながら、からかってみれば、ホラ赤い顔。



「うるせぇぇぇぇぇぇ!」

照れ隠ししながらも、ちょっと笑ってる。



きっとここが、あたしの居場所。

居場所。

居場所。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-29

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