晴れやか

海百合 海月

 ふと目に留まってひらいた本から、としつきのにおいがした。かわいた紙の感触は、いつでも、ゆびさきに、皮膚に、こころに、やさしい。
 わたしは、そのひと、でも、あのひと、でも、だれか、でも、あなた、でも、きみ、でも、ねえ、でも、ないんだな。
 ゆっくり、のみこんで、あとは脳みそに、肺に、馴染んでゆくのを待てばいい。穏やかな、こころもちで、あるよう。
 幸せをねがうことは、ねがう自然より、そうするしかない場合もある、と、わかった。スープの湯気をたのしくみつめる季節を待ちわびていても、大丈夫、それはすぐだ。

晴れやか

晴れやか

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-05-18

CC BY-NC-ND
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