晴れやか
ふと目に留まってひらいた本から、としつきのにおいがした。かわいた紙の感触は、いつでも、ゆびさきに、皮膚に、こころに、やさしい。
わたしは、そのひと、でも、あのひと、でも、だれか、でも、あなた、でも、きみ、でも、ねえ、でも、ないんだな。
ゆっくり、のみこんで、あとは脳みそに、肺に、馴染んでゆくのを待てばいい。穏やかな、こころもちで、あるよう。
幸せをねがうことは、ねがう自然より、そうするしかない場合もある、と、わかった。スープの湯気をたのしくみつめる季節を待ちわびていても、大丈夫、それはすぐだ。
晴れやか