無欲

 ララの肉。星の血液。と、声が菫色の、きみ。精神的苦痛とは、心が砕け散った瞬間の、痛みとする。図書館で、きれいな本を手に取る、きっと、ほとんど誰も、読んでいないもの。ぶあつい。しらないあいだに、あのこは、小鳥になって、南風をつれてくる。雨のはじまりに、街は静かに目をとじる。ぼくだった、骨。たしかに、きのうまでは、ぼくだった、肋骨と親指のつめ。きみがくれる、愛というなまえの形のないなにか。ハートは、心臓で、心臓はあげられないし、さずけられるとすれば、たとえば、からだが生み出せる系のやつ。分かち合うという行為。それは、物理的なものの方が味気なく、けれども、輪郭のないものはどこか頼りない。ララのために、生命体でいると誓った日の空は、白いヴェールをまとったような、霞。アンドロイドとする接吻の、くちびるに感じる氷点下。

無欲

無欲

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-05-17

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