無題
画材がなくても生きていけるけれども口から絵の具を吐き出している あなたがいなくても灰色じゃない世界が未だ見慣れないうちに綯交ぜの景色を出力しているくだらない言葉として どうしてこんなにごぼごぼと喋っているのか 存在してから苦しくなかった日などないがそれを愛しく思わない日もなかったような気がします 海のない町の日曜日はなんだかとても大きな空腹で満ち溢れている ともかくぼくはぼくの中のあなたとぼくを切り分けられないし あなたとあなたの見る世界を切り分けられないから もう何もかもが明るく眩いひかりのなかに居る すべての神話のおしまいのあとを生きていくのだろうとぼくはあなたはにんげんは、! もう死んでもいいけれどとわらいながらこうやってごぼごぼと絵の具を 世界をよごすぼくの余生を ぼくを どうか その泥に塗れた手で泥だらけの頬を拭いあうのを新しいおはなしの始まりにするのはどうですか あなたが望むなら、朽ちていくすべてに花を。墓標を。笑い話を。うたた寝を。ぼくの心臓と森のさざなみとおやすみのキスを。世界ぜんぶが、ふふ、溺れるように!
無題