utopia
もうすこしだけ、ゆるやかに、と思う。落下速度。エンターキーの打鍵音。騒々しく、すぐそこにある、夏の気配に、軽い目眩をおぼえる。となりあわせの、恋と愛が、きみたちのあいだで、永遠の泡沫となったとき、かなしい鳴き声だけが響いて。波紋。他、うまれるものの、微かな息づかい。ぼくのこころのなかを、しっちゃかめっちゃかにする、しろくまの、あの、やさしいんだか、ひどいんだか、よくわからない、愛撫。重々しく太い指が、ぼくのからだのうえをはう。まるで、べつの生きものが蠢いているみたいに。
こわい。
はやいのは、こわいよ。
森で、夜明けを見守っている、神さまのようなひとが、なにもないところを掬った両手に、湧き出る水が、あたらしい生命を呼び込む。ぼくとしろくまは、無神論者で、種を超越して、世界を蔑んで、交わる理由は愛で、神聖じみたものを冒涜する行為に及んで、ときどき、けんかをする。
utopia