傷強盗

優しさに価値なんてないと

想像力なんてなくていいと

心にもないことを訴えたのは

あなたに死んで欲しくなかったから

ただそれだけでした。

完全に理解することはできないのに

ひとの苦しみを知ろうとするあなたを

まるでその為だけに生きているようなあなたを見ることが

私の最大の苦しみだということをあなたに知って欲しかった

ただそれだけでした。

あなたの傷を奪いたかった。あなたの傷のすべてを

奪うことを想像しました

無傷になったあなたを想像しました

私はすぐに理解しました

無傷であることは不幸ではないけれど

幸福でもないのだと。

あなたは苦しみに執着しているのではなくて

心に執着しているのだと。

苦しみが足りないというなら

私もあなたと苦しみましょう

あなたにとってそれが

最大の苦しみになることを信じて。

傷強盗

傷強盗

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-05-13

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