ある日の夢
落ち着いたテンポの呼吸音
指がピクリとも動かないのを
ただ享受するだけの馬鹿な頭
感じたくないな
でも本当はさ
からだの中のもの全部吐き出して
絞り切って最後に残ったもの
さらにその隅にある
気にもとまらないような
鈍く輝く残り滓
これは言葉にしてはいけない
凍えている
そうしたくてしているんだけれど
うとうとしたまま
眠りが深く深く
海面下二〇〇メートルを超えた頃
そっと教えてくれる
無遠慮に差し込まれる視線
眉間と背中の間が震える
陶器のような美しい手で
心臓を撫でられたようだ
揺蕩う一定の体温
気持ちがいい
きいたことのない音がよくきこえる
見たものはあまり思い出せない
ある日の夢