空想世界

二度と目をさますことはないと思いながら、あなたの寝顔をみつめている。呼吸も聞こえないふりをしている。心音さえも。存在を仄めかす何もかもに悶えさせられる。存在を構成するすべてが美しかったら。美しいほど苦しくなるの、苦しいほど美しくなるの。苦痛と快楽の境を淡く暈して、私は自然の中に融けていくのを感じる。支配されることに光を見い出してしまう。服従しているという事実に陶然とする。世界はその小さな頭の中で、如何様にも創りかえることができる。私たちは空想世界の中に生きている。私たちしか知らない世界の中に。この神聖で完全な世界は誰にも侵されない。たとえ離ればなれになったとしても。愛しいあなたとふたりきり。愛しい。愛しいからこそ殺したくなる。この意味があなたに解るかな?きっと解ってるだろうな。目を合わせて微笑み合っている。私たちはずっと手を繋いでいる。目を合わせながら手を繋ぎながら、同時に死ぬことを約束している。きっと、死ぬことでしかあなたとひとつにはなれないから。

空想世界

空想世界

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-05-12

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