恋した瞬間、世界が終わる -第32話「花粉の誘い」-

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恋した瞬間、世界が終わる -第32話「花粉の誘い」-

第5部 来るべき一瞬のために編「第32話 花粉の誘い」

反発者の男の記憶に“new leaves”との接触が残っていた
私は、まず彼らに会うことから始めた


記憶には、
 
 彼らは移動する
 拠点を移し、花粉を運ぶ。
  

案の定、男が出会った当時の居場所は
家主のいない、もぬけの殻になった木造の家屋
田舎を移動しているらしいことは
男の記憶から推測できた
私たちの「マニュアル」が届かない場所などあるのか?
そういった疑問を持ちながら
私は移動した



男の記憶に残った彼らの第一印象は

 誘う(イザナウ)人がいて
 おしなべて特徴のない人たちがいて
 “容れ物”のようだった。


「ただ、ただ
 不安なんだ」

「この時代が、この先
 何処へ向うのか
 見通しのきかないことが」

「世の中を覆う“目隠し”が
 そのままであって欲しい気持ちもある」

「だけれど、

  new leaves
  こうして集まり
  記憶を無駄にしたくない」


彼らが発見したのは、新種の植物だったらしい

新種なのかは分からない
これまで発見されることなく、
“有った”のか

贈られてきたのは山々からではなく
それは「アスファルトの亀裂」から現れた
タンポポに瓜二つの見た目で
自らを隠したままに生き延びたのか
小さな花の種子が芽吹いたようだったーー


彼ら違法移民の中に食物学者がいた

「これは、
 信憑性のないことだと思っていたが
 埋もれた植物があると噂で聞いていた
 あの植物学者カール・フォン・リンネによって
 “分類”されることなく
 歴史の中で見過ごされたもの」

「我々は、これを育てなければならない
 歴史の中で抹消され
 ようやく、この時代に芽吹いた花
 今まで何処を舞っていたのか
 何処からか、風に運ばれて来たもの
 この種子を、花を、育てなければならない」



男の記憶に残るそれからの彼らは

 誘うものを断ち
 個々の生に欠けていた何かは
 “容れ物”に、魂が宿っていた。



私はこの種子の蜜が盗まれぬよう
通信手段を遮断したタブレットを抱きかかえ
いつの間にか巣へと還るミツバチとなって
田舎から、田舎へと横断していった

「彼らとの日々を追っているのか?
 しかし気になるのが、
 男の記憶の中にあるフィルターだ
 これは、なんだろうか…?」

そんな時に出逢ったのが、ココだった
彼女の香りに私は誘われていったーー



※次回は、6月にアップロード予定。

恋した瞬間、世界が終わる -第32話「花粉の誘い」-

これまでの「各章(部)」ごとに、まとめて掲載したものも「星空文庫」にアップロードしています。
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  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-05-09

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