五月の雨

五月の雨

この足を一歩進めるように
戻れないのは何故なのか
五月の雨に打たれて
私にはそれが分かった気がした

小石が彼を跨ぐ私の姿を見上げるように
五月の雨に打たれて空を見たとき
私はその者の姿を見た
瞳を見た

雨を降らせる者
花を咲かせる者
太陽を燃やす者
宇宙を始め終わらせる者

この目を開く者
脳を働かせる者
心臓を動かす者
この唾を飲み込ませる者

五月の雨に打たれて
私はその者の一部であることに
恐怖さえ覚えた
その者は悠々と歩いていた
私を見下ろし
優しくも
冷たくもない目で

五月の雨

五月の雨

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-05-08

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