わたしの中のわたし

nanamame

わたしの中のわたし

1 はじまりはいつも

敗戦の知らせを受け取ったのは、今夜の夜襲に向けて、最終の打ち合わせをしている時だった。夕暮れに立ち竦む、伝令係の影が歪み長く伸びる。彼は神妙な面持ちで、書簡を差し出す。武将の中では一番若いジェボムが受け取り、将軍に手渡す。
急ぎ開いて見た将軍の目が、驚愕の色に開かれる。

「内容は、なんと?」

我慢がきかなかった武将の1人が声をかける。震える手で、将軍はその書簡を居合わせた全員に見えるように卓上に置いた。

国王の筆跡に覚えはなくても、印章は覚えている。間違いなく、国王が出したものだ。
国王が、降伏すること、武器を下ろすこと、抵抗しないことを命じている。

沈黙が降りる。誰も、動けない。

1年半も続いた戦争が、終わりを告げる。我が北国の降伏を以って。

ジェボムは、自分が意外と冷静を保てていることに少々驚いていた。負けは悔しい。敗戦は恥ずかしい。自分の力不足も、不甲斐なさも感じている。だが、1年半もよく持った、とも思う。最初の半年こそ対等に戦えていたが、近頃は武器の質量ともに圧倒されるようになり、夜襲のような不意打ちをしないと個々の戦線を保てない事態となっていた。

「敵襲! 敵襲!」

天幕の外から、号令が響く。茫然自失としていた将軍を始め武将たちが立ち上がる。命令を発したのは将軍だ。

「攻撃するな! 武器をおろせ! 攻撃はするな!」

将軍に続いて、ジェボムも天幕を出る。

真っ赤な夕焼けの中に、敵軍の姿が浮かぶ。もう敵とは呼べない。かつての敵は、勝者として上に立ち、ジェボムは敗軍の将として跪く。

「我々は、打首になるか、捕虜となるか、どちらかな。戦って散りたかったな…」

ある将軍のつぶやきを、ジェボムは長いこと覚えていた。本当に、あの頃、あの時、戦って死んでいれば、と後々、何度も思うことになる。


 ***


ヨンジェは少し背伸びをして、行列の先頭を進む主をよく見ようとした。その瞬間、手をくいっとひかれる。行儀よくしなさい、ということだろう。隣にいるマークを見ると、にこりと笑いながらも、その目は「言うことを聞きなさい」と言っている。

王宮に続く目抜き通りを、ゆうゆうと進む行列は、王宮の敷地内に入ってきたところだ。歓喜に湧く民衆たちの興奮した声は門の外でまだ続いている。王宮内に特別に用意された席では、貴族たちが優雅に眺めている。
長い行列の先頭に、ヨンジェが仕える世子様がいる。世子が御自ら敵地から捕虜を連行してきたのではなく、王都の入り口まで迎えに行き、成果を引き継いだだけだ。
そのことを当の本人も分かっているし、そういう見せ場が必要な立場だということも分かっている。

華々しい行列を見たい。勝利に湧く民衆の喜びを一緒に分かちたい。ヨンジェの細やかな願いを叶えるための席を用意してくれたのはマークだ。文句は言えないが、ここからでは外の様子がよく見えない。

「ああ、もう通り過ぎちゃった。豪華な衣装だったね。…捕虜って、北国人って言っても、当然だけど僕たちと全然変わらないね」
「ヨンジェ、静かに。落ち着いて」

マークは、ヨンジェと同じように世子に仕える立場だが、ヨンジェと違うところは、大陸出身で外国語に精通しているマークは行政にも携わっている文官という点だ。仕事の面においても、王子の私的な面においても、マークは信頼厚く、一番の側近と言われている。それに比べるとヨンジェは、王子の私的な面においてのみ活動する。側近ではなく、愛妾である。
愛妾(=妾)とは、女官や商人、平民など、元の身分が低い者が、王族の妻になった時に与えられる、正式な王族の妻の身分の1つである。王女の婿取りはとても数が少ないので、妻と言えば女である。だが、例外的にヨンジェは、世子(男)の妻になった。例外であるから、大勢の人の目に触れる場に出ることは、周囲が嫌がる。
この立場になんの不満もない。元の身分を考えれば、今は夢のような贅沢な暮らしをさせてもらっている。

「でも、こういうの初めてだね。王宮にいると戦争していたって感じは全然しなかったけど」

ヨンジェは貧しい境遇に生まれたが、戦争は経験したことがなかった。市井ではなく王宮の奥で暮らしていたため、雰囲気さえ感じることなく、知らない間に戦争は始まり、終わった。
世子が通り過ぎた後は、捕虜の行列が延々と続く。100人くらいはいるだろうか。怪我をしていたり、薄汚れていたり、皆一様に俯き暗い顔をしている。

冷たい風が吹く。温もりを求めて、ヨンジェはマークにくっついた。

「少し冷えるね」

季節は春から夏に変わろうとしているが、まだ時折、冷たい風が吹く。マークが、ヨンジェの肩に手を回し、抱き寄せる。

「もう行こう。ヨンジェは部屋にお帰り。僕は世子様のお側に控えなくてはいけないから、送ってあげられないけれど…」
「うん、大丈夫。もう戻るよ。…ああ、早くジニョン様と今日のことお話したいな」

行列の先頭を行き、捕虜と部下を引き連れて王宮に戻った、 2人が仕える西国の世子ジニョンは、広場の中央で馬を降りた。


 ***


ジニョンはつまらない仕事の中にも何か楽しみがないかと、考えを巡らせていた。
戦争に勝ったことはいいことだ。捕虜を得て、より有利にことを運ぶこともいいだろう。だがそのことに世子として関わらなければならないのは、とても面倒だ。軍部で完結していればいいものを、誰かが余計な世話を働いたのだろう。いい迷惑だ。
捕虜なんて、小汚くてむさ苦しい男しかいない。数日前までは、敵国の精鋭だか何だか知らないが、労働力にするか、殺すか、どちらかしかないものを、王宮に連れてきてどうするというのだろう。見せしめ以外、何にもならない。

「殿下、どうぞこちらへ。お疲れでございましょう」

用意された席に案内される。すぐ側には玉座があり、この後、国王が勝利の勅を出す。捕虜を見せしめに、臣民を前に、大げさなことである。
王子として、次期国王である世子として、自分はどこか冷めている。父王に継いでこの国を背負う覚悟というより諦観はあるのだが、すべては他人事のように思える。
気概などない。勝利を喜ぶほど関心がない。今後、敗戦国の北国からどれだけ搾取するか打算しかない。

お茶を飲んで、一息つく。広場に並ばされて跪く捕虜を眺める。むさ苦しいばかりだ。たまに線の細い優男もいるが、卑屈な敗者の相貌をしていて、ジニョンの好みではない。
そんな中に1人だけ、目つきの鋭い若い男がいる。
ジニョンは興味を惹かれて席を立つ。自分と同じ年くらいだろうか。縁側に近づいて、直視していることを悟られないように、その男を観察する。
鋭く挑むような目つきをしている。少し長い癖のついた黒髪。男らしい輪郭に、通った鼻筋、薄い唇。今は肌が黒く汚れているが、磨けばきっと美しいに違いないと思わせる凛とした雰囲気がある。
気に入った。悪くない。ジニョンは、こうした自分の直感を信じている。楽しみを見つけた。どうやって彼を手に入れよう。
ジニョンはほくそ笑む口元を手で隠して、神妙な雰囲気を出しておくのに少し苦心した。

「国王陛下の御成」

畏まるジニョンに、王は一番に声を懸ける。

「ジニョン、ご苦労であった。堂々とした先導であったと聞いている。よくやった」
「恐縮でございます」

国王は殊の外、ジニョンのことをかわいがっている。正妃の元に、2人の王女に続いて、ようやく生まれた唯一の王子である。他の妻が生んだ王子たちや貴族の子息に比べても、見劣りしないどころか、何倍も優れた美貌と知力を持っている。世子に対して誰よりも期待をかけているのが国王だ。世子に花をもたせることが、国王の機嫌と覚えを良くすることに繋がっている。

「何か褒美をとらせよう。考えておきなさい」

良い口実をもらった。あの捕虜をもらおう、とすぐに決める。
ヨンジェのお守りをしていたマークが、ジニョンの側に戻ってきた。彼に頼めば、あれが誰かもすぐに分かるだろう。精鋭と言われている元敵国の武将を美しく磨き上げて、どうやって遊ぼうか。今から楽しみだ。
ジニョンは万人に受けのいい作り笑顔で優雅に礼を言った。


 ***


手錠をかけられ、縄で繋がれた見せしめのための行列に、わざわざ聞かされた勝利宣言。どれもこれも、自尊心を傷つけるばかりのもので、ジェボムは自分が捕虜の立場になったことを否が応でも実感せざるを得なかった。
忌々しいことこの上ない。負けたという結果は覆らない。それならいっそ殺してくれたらいいのに。
一際きらびやかな衣装を着て、捕虜を先導する世子の背中を睨みつけても、堂々と高らかに勝利宣言をする国王を睨みつけても、自分の立場が変わることはない。それでもこの時はまだ、俯いて項垂れることはなかった。

1人で牢屋にいると、いらないことばかり考える。まだ2日しか経っていないのに、もう何週間も過ぎたように感じる。1年半、戦いに明け暮れた疲れが一気に襲ってきたようだ。
通気孔程度の役割しかない外に開いた小さな窓から、細い光が指す。ささやかな食事が来て、朝になったとわかる。食べる気力もないが、食べないと力がなくなってしまうから、無理して食べる。
今となってはもう、何度も何度もため息をついて、俯いて項垂れる以外できなくなっていた。
どこに連れて行かれるか分からない不安がある。将軍や、他の武将たち、部下たちが、今どこにいるのか、どうなっているのか、心配だ。
石壁と鉄扉で区切られた小さな牢屋。扉には、下に食事を通すための隙間と、中央より少し上に外から中を覗く小窓があるが、中から他の様子をうかがうことはできない。

もう希望などないのかもしれない。故郷にも帰れないのかもしれない。父はこの戦争で半年程前に死んでいる。まだ悲嘆に暮れているはずの母はどうしているだろう。婚約者は。戦争が終われば、結婚する約束だったが、こうなってはもうそれもないだろう。数回しか会ったことはないが、とてもかわいそうだと思う。

衛兵が食器を下げに来る。いつもはそのまま去って、次に来るのは夕食の時だけだが、今日はすぐに戻ってきた。中央付近の小窓が開いて、低い声が尋ねる。

「イム・ジェボム。お前で間違いないな?」
「ああ、そうだが…。何だ?」

鉄扉が開かれ、2人が入ってくる。両手首に手錠がかけられて、無理やり立たされる。急に立たされてふらついてしまった。することがなく疲れもあり、ほとんど寝ているだけだったので、立ちくらみを起こした。

手錠に繋がった長い鎖を引っ張るように連行される間、通路の両側の牢屋を見るが、石壁と鉄扉が並ぶだけ。外から中を見ることはできない。他の皆はまだこの牢屋の中にいるのだろうか。もうどこかへ連れて行かれて、殺されたのかも知れない。次が自分の番なのかもしれない、と不安にかられる。

どこへ行くのか不安な中、なんの説明もなく歩かされる。城の外へ行くのかと思ったら、だんだんと奥の方へ進んでいる気がする。途中でジェボムを連れて行く衛兵が2度も変わった。変わる度に、建物の雰囲気が高級なものに変わっていく気がする。

ある部屋の前で止まる。扉の前にも衛兵がいて、部屋の中へ取り次ぐ。
部屋の中はとても豪華で、薄汚れた着物の自分が場違いだ。殺されるのでは、と思っていたが、処刑を行うような場所ではない。出迎えてくれたのは1人の少年だった。幼く見えるだけで、あまり年は変わらないかもしれない。少年の後ろに、女官たちが4人いる。

衛兵が手錠を外す。そして出ていった。

「はじめまして、僕はチェ・ヨンジェです。あなたは、イム・ジェボムさんですね。よろしくお願いします」

拍子抜けというか、全くの予想外だ。一介の捕虜に、何の用だろう。名前を確認されているから、ジェボムでなければならない何かがあるのだろうが、今の所、全く予測ができない。それが少しだけ怖かった。

「…何なんだ、一体? …手錠を外してもいいのか?」
「この部屋の中だけです。手錠があると、やりにくいですから。こちらへどうぞ」
「逃げるかもしれないぞ」
「僕や彼女たちを殺してですか?」

挑発したつもりが、逆に挑発された。ヨンジェは振り返り、試すように笑う。ジェボムは苦虫を噛み潰す表情で小さく舌打ちをした。
できるわけがない。その気になれば出来そうだが、兵士でもなさそうな、女子供を殺すなど到底出来ない。今ここがどこかもわからない、部屋の外には衛兵もいる。計画性もなく逃げても、再び捕まるだけ。
今はまだ大人しく従う以外ない。

「こちらへどうぞ」

何も口答えしなくなったジェボムを、さらに部屋の奥へと導く。そこは浴室だった。まだ戦場の土埃を纏ったままのジェボムにきれいになってもらわないといけない。

「あ? 風呂?」

戸惑っているジェボムを無視して、女官たちが服を脱がしはじめる。ジェボムは抵抗するが、女官たちは気にしない。

「ジェボムさん、いいから、大人しくきれいにされてください。何日も湯浴みしていないでしょう」
「だ、だからって、なんでこんな豪華な風呂に、女官つきで入らないといけないんだ!」
「後で説明しますから、とりあえず身体を清潔にしてください」

祖国の北国ではジェボムも貴族の身分だが、湯浴みの際に誰かがつくことはない。こんなことは初めてで、戸惑いだけでなく、恥ずかしさもある。
ヨンジェは監督役らしい。洗う役には加わらない。ジロジロと見つめられて、居心地が悪い。
何なんだ、本当に。戸惑いが大きくなるにつれて、得体の知れない恐れも大きくなっていく。
風呂から上がると、全体的に白い色の服を着せてもらう。肌着と上着のみで、簡素ではあるが、肌触りはとても良く、高級な絹だと分かる。
次に、隣の部屋に案内されると、そこには豪華な食事が並んでいた。湯浴みを手伝った女官とは別の女官が給仕をしてくれる。時間的に少し早めの昼ということだろうか。

「牢屋では充分なお食事はなかったでしょう? どうぞ召し上がってください」
「…毒があるとか? いや、今更…」

訳が分からず、不信感が大きくなっていく。ジェボムは、つい聞いてしまったが、毒を盛るなら、牢屋の食事でもいいはずだ。

「そうですね。今更、そんなことはしません。お疑いでしたら、僕も一緒に食べますよ」

終始、穏やかな笑顔のヨンジェも、胡散臭いと言えば胡散臭い。それでもジェボムは、席につき、食事を始めた。単純に空腹で、芳しい匂いに抗えなかった。
食事の合間に、向かいに座り、軽く料理をつまんだり、お茶を飲んだりしているヨンジェに、ジェボムは尋ねた。

「西国は捕虜を手厚くもてなす習慣でもあるのか?」
「違いますよ。あなただけです」
「じゃあ、何なんだよ。説明してくれるんだろ」

ヨンジェは湯呑をおいて、にっこりと笑う。かわいい顔だと思うが、今は何だか怖い。

「ジェボムさんは、特別にジニョン様――世子様のお預かりになりました。捕虜という立場はそのままですが、監視付きで、牢屋を出ることを認められました。世子様に誠心誠意お仕えし、西国に対する敵対心もないと判断されたら、愛妾になることができます。
世子様に見初められたんですよ。よかったですね」

ジェボムは、話を聞いても意味を理解することができなかった。
捕虜なのに、世子の預かりとは? 世子に仕えて、認められたら、愛妾になるとは? 自分が見初められたとは?

「愛妾って…、俺、男だけど。世子様って実は女だったとか?」

西国の世子の姿は、遠目だが見たことがある。捕虜連行の先頭に立っていた人物だ。馬に乗って、穏やかな笑みを浮かべ、大衆から大きな歓声を浴びていた。どう見ても男だったはずだ。

「ジニョン様は男性です。西国では男色家で有名です」

ジェボムは箸をおいて、頭を抱えた。男色家って何だ。男の自分を愛妾にするなんて、正気か、と思う。そこで、はっと気付いた。ヨンジェはもしかして?

「ヨンジェって言ったな。お前、もしかして…」
「僕はジニョン様の愛妾です。正式なものですよ。略式になりますが、婚儀も行いました。もう3年になりますね」

愛妾は、王族に数えられないとは言え、正式な妻の地位である。北国にも同じ位があるので、ジェボムももちろん知っている。知っているが、男が男の妻になれるのは知らない。少なくとも、北国にはそのような人物はいなかった。
男色は、ちょっと変わった趣味、という程度のものだ。交わっても子供ができない、ということで、敢えて好む者もいる。だが、どの家も血筋も、途絶えさせないようにするもので、あくまでも趣味の範囲でしかない。王族は最も途絶えさせてはいけない高貴な血筋だ。男を妻に迎えるということが許される王族や世子がいるとは信じ難い。

「…そんなこと、許されるはずがないだろう」
「ジニョン様は正妃様を得て、すでに王子をお1人設けておられます。政務も、他の王子たちより行っておられますし、王族としての義務は充分に果たされていらっしゃいます。今、王宮内でジニョン様のご趣味を窘めるなり、改善させようとする方はいません。あなたが北国の捕虜なので、安全性が危惧されているくらいです」

ジェボムはあまりにも、自分が知っている王宮や王族に関する常識とかけ離れた話についていけず、頭痛に似たものを感じて、額を抑えた。
ジェボムは今まで男を相手にしたことはない。その趣味を否定することはないが、自分には無関係だと思っていた。男で春をひさぐ者は、見た目が女性らしい者がほとんどで、そういうものだと思っていた。ジェボムが考える、知っている、男を相手にする者と自分自身が、どうしても噛み合わず、自分に求められているものとは思えない。

「なぁ、見初めたって、本当に俺のことか? 誰かと間違えたり――」
「あなたはイム・ジェボムさんで合っているのでしょう? あなたは、牢屋で1人だったことに、疑問を感じませんでしたか? ジニョン様が引き連れていた捕虜の全員が、王宮内の牢屋に入れると思っておいでですか?」

確かに、100人を超す捕虜を1人ずつ牢屋に入れるのは無理だ。王宮内に牢屋はあるにしても、数は多くないはずだ。あの日、王族や貴族が解散した後、一般兵士と武将以上の身分に分けられ、将軍たち10人程だけで牢屋に向かった。ジェボムは最初に独房に入れられて、そこで名前や年齢、出身など聴取された。皆そうだと思っていた。違うのなら、他の者はどこに行ったのだろう。

「…他の、武将たちや将軍は、兵士たちは、どこに――」
「さあ。僕は知りません」

少し青ざめたジェボムに、ヨンジェはあっさりと答える。ジェボムは怒りを感じて、勢いよく立ち上がる。ガタンッと大きな音を立てて椅子が倒れ、その音を聞いて、衛兵が部屋に入ってくる。素早く後ろ手に拘束され、床に倒された。

「もう、お食事は終わりにしますか?」

話を聞いて、食欲は失せた。何も答えないジェボムを見下ろして、ヨンジェは女官に食事を片付けるように言う。

「では、行きましょう」

ジェボムは再び手錠をかけられる。立たされ、ヨンジェの後を歩かされる。行きたくないと足を動かさなくても、引きずられるように進まされる。
自分に自由はない。牢屋から出ても、捕虜は捕虜のまま。世子の相手などしたくない、と言っても、それは許されない。

ある部屋にたどり着く。部屋の中央に、大きな天蓋付きの寝台がある。凝った作りの飾り窓からは、まだ明るい日差しが見えるが、全体的に薄暗い感じがする。
寝台の柱に、手錠から伸びた鎖を括り付け、南京錠で留める。衛兵は鍵をヨンジェに渡して、部屋を出た。彼はその鍵を、壁際の棚上に置く。決してジェボムの手の届かない場所に。鍵の代わりに、何か容器などを載せた盆を手にして、戻ってくる。

「準備が必要です。あなたに必要なことをお教えする役割を、ジニョン様から承っています。慣れれば難しいことでもありませんが、慣れない内は戸惑いも大きいでしょうが、大丈夫ですよ」

盆の上には、薬壺のようなものと、太さの違う棒のようなものがいくつもある。ヨンジェは盆を寝台の上に置いて、ジェボムの足元に腰掛ける。にじり寄って来たので、枕元の方へ逃げる。鎖が鳴る音が、とても耳障りで、少し重い。
完全に逃げられない。風呂の後に着せてもらった、着物の紐を解かれる。前がはだけて、下衣をすべて脱がされた。両手が手錠で塞がっているので、上衣はとても中途半端に半分だけ着ている状態になってしまった。

男色家である世子の相手をする、ということが、具体的に何をするのか分かった。分かってしまった。

ヨンジェは薬壺のようなものを取り、中身を指で掬う。ゆるい糊のようなものだった。ヨンジェの指に、たらりと絡む。
あれは知っている、と思った。
ジェボムは今まで女を買ったことが、3回だけある。友人たちには、堅物だと言われていた。10代の時、女を知るために連れて行ってもらった1回、同僚と酒を飲んでいて酔って良い気分の勢いで1回、そして戦場で負けが続き、父と友人たちも死に、疲れて虚しくてどうしようもなかった時。遊女たちが、自分の股に塗っていた。滑りが良くなり、痛みも和らぎ、気持ちよくなれる、と1回目の時に聞いた。女のそこは、勝手に濡れるものだと思っていたので、そういうものか、と思った。
それが、自分に使われようとしている。

「これ、知っていますか? 街で売っているものより、良い品ですよ。贔屓の薬屋に特別に作らせているんです。柔らかく、乾きにくく、良い香りもします」

ヨンジェは、ジェボムの足の間に割り込む。仰向けになって足を大きく開いている姿勢が恥ずかしくて、足を閉じようとするが、阻止されてしまう。

「駄目ですよ。ちゃんと準備をしなくては、ジェボムさんも痛い思いをするし、ジニョン様も楽しむことができません」

ジニョンを楽しませるために俺はいるんじゃない、と叫びたかった。だが、ジニョンを楽しませるために、自分は牢屋を出されたのだ。
暴れて、抗って、逆らえば、殺されるだろうか。その方が良いような気がしている。

糊が絡んだヨンジェの指が、後肛に触れる。ビクッとして、身体が固まる。ゆるゆると撫でられ、気持ち悪い。避けようと、ヨンジェの方を見ると、盆の上に乗っている棒の正体が、男性器を模ったものだと分かって、ゾッとした。

「力を抜いてください」
「…くっ。…い、嫌だ」
「あなたは嫌だと言える立場ではありません。諦めてください。死ぬより良いでしょ?」

その言葉に、ジェボムはカッとなった。怒りに任せて、ヨンジェの胸を蹴りつける。

「わぁっ!」

ヨンジェが声を上げて、寝台から転げ落ちる。「いったーい!」と言うヨンジェの声を聞いて、扉の外を守っていた衛兵が2人、部屋に入ってくる。1人はヨンジェの方へ、もう1人はジェボムに剣を突きつける。

「どこが死ぬより良いって言うんだ?! 死んだ方がマシだ! いっそ、殺せ! 代わりくらいいるだろ?!」
「黙れ、捕虜が! 温情をいただいておきながら!」
「さっさと殺せよ!」

男の相手をするくらいなら、女にされるくらいなら、死んだ方がマシだ。どうせ死ぬなら、こんな訳の分からないところではなくて、戦場で、祖国や仲間のために死にたかった。何人もの部下を失い、友人や家族が死んでも戦い続けたのは、捕虜になって慰み者になるためではない。悔しくて悔しくて、涙が浮かぶ。

「どうしました? 何があったのですか?」

ヨンジェでも衛兵でもない人物が部屋に入ってきた。細身で、異国的な顔立ちをした若い男は、少し早足で、胸を抑えてしゃがみ込んでいるヨンジェの方へ行く。

「マークヒョン。ジェボムさんが暴れて、蹴られてしまったんです。ここまであまり抵抗されなかったので、ちょっと、油断しました」
「ヨンジェ、大丈夫?」

マークは、ヨンジェの胸の辺りを撫でて優しく労っている。ヨンジェがゆっくり立ち上がる。衛兵が2人とも、ジェボムに剣を突きつける。
マークとヨンジェが、寝台に近づく。
ジェボムは、自分の今の格好もどうでも良くなって、敵を睨みつけ、「殺せ」と言った。2本の剣の切っ先が、喉に当たり、少し血が流れる。

マークが冷たくジェボムを見下ろして、静かな声で言う。

「あなたに拒否する権利はありません。あなたを殺すのは、ジニョン様が“気に入らない”と言った時で、今ではありません。そんなに嫌なら、足も縛りましょうか? まだ残っている北国の兵士に、身体を押さえる役割を与えてもいいんですよ?」

ジェボムの身体から血の気が引いていく。王宮まで連れて来られた捕虜は、もう皆、殺されたのではなかったのか。ヨンジェは「知らない」と言っただけなのだが、ジェボムはそれを勝手に、最悪の状態と捉えていたのだと自覚した。まだ生きている仲間がいる、と喜べる状況ではない。足を閉じて、自分の中心を隠すように、膝を曲げる。見知った人間に、ジェボムの差し迫った状態を知られたら、きっと死んでも死にきれない。

「マークヒョン、ジニョン様は?」
「今、昼食をとられているところだよ。午後は執務の予定はなかったけれど、午前の分が終わらなくてね。少し遅くなると伝えるために、僕だけ先に来たんだ。来てよかったよ」

ヨンジェとマークはとても親しいようだ。そんなことは、今はどうでもいい。

「衛兵、その人物を傷つけてはいけない。持ち場に戻りなさい」
「…畏まりました」

衛兵は警戒を解かず、だが大人しくマークの命令を聞いて、部屋を出て行った。良いのだろうか、と思ったが、「この部屋を見張っているのは、あの2人だけではない」と言う。ヨンジェが正式な妾なら、2人きりにするはずがないのは当然だった。

「…殺してくれ」

思うのと同時に、声に出ていた。
ヨンジェは何事もなかったかのように穏やかな顔で、再びジェボムの足元に座る。マークは寝台の横、ジェボムの胸の辺りに腰掛ける。首筋についた小さな傷を、指でなぞる。

「諦めてください。戦争に負けた北国の捕虜が、勝った西国の世子に、抗えるはずはないでしょう?」
「他の捕虜たち、…まだ生きているのか?」
「すでに処刑されたのは、将軍など身分と地位の高い者が4人です。他は王都の郊外にある牢獄に移送されました。まだ王宮内にいる北国の捕虜は、あなたと、北国の内情をよく知っており、話してもくれる2人、計3人です。2人もいれば、あなたを押さえる役割に充分ですね」

腕はすでに封じているからと、マークはにこやかな表情で、ジェボムを絶望に追い落とす。ヨンジェの手が、ジェボムの足を広げる。
抵抗する気力はもうない。
マークの手が首筋から、脇へすべり、胸の突起をいじりだす。
ヨンジェの手が膝から腿へ流れ、足の付根、中心をわざと避けて後肛へ伸びる。

「ジェボムさん、これは、悪い話ではないですよ。あなたも愉しめばいいのです。ジニョン様はお優しい方です」

この声は、ヨンジェのものだったろうか。耳が遠くなってしまった気がする。

愉しむなんて、できるはずがない、と思った。好きでもない、むしろ敵だった男だ。

ジェボムは、絶望に沈んだ頭で、戦場で買った女のことを思い出した。
彼女は、遊女などではなくて、近隣の農村の若い女だった。数人で駐屯地に来て、自分たちを買ってくれと言うのだ。色事から随分遠ざかっていたし、勝てる希望も乏しくなってきて、心が荒んでいる時だったから、遠慮なくすることにした。買ってくれと来たのは、女達の方だから。無表情で進んで服を脱ぎ、自分で持ってきた糊を女性器に塗りたくり、指で開く。あっけらかんとしすぎていて、少し興ざめした。奥を突きながら、胸を揉むと少し母乳が出てきた。つい、「子供でもいるのか」とジェボムは聞いてしまった。聞かなければよかった。無表情だった顔が、泣きそうな顔に変わる。手で顔を隠し、「早くして」と細い声で言った。終わった後、約束より多めに金を渡した。「ありがとう」と言ってジェボムの幕から出た後、彼女は帰ったのではなく、別の兵士の幕へ移動しただけだ。荒んだ心を晴らすためだったのに、より虚しくなってしまった。
それを、思い出した。

好きでもない相手に、身体を委ねざるを得ないことが、これほど絶望的だとは知らなかった。知る由もなかった。商売にしている女たちも、貧しさ故に身売りしなければならなかった農民の女たちも、こんな気分だったのだろうか。逆らうなと、権力や身分を矛にして、身体の中に押し入ってくる。盾はどこにもない。
死んだほうがマシだ、と思う。それでも死ねないなら、押し入られた分だけ、いやそれ以上に死んでいく心をどう保てば良いのだろう。

ジェボムはなるべく見ないように目を閉じていた。
下半身から、嫌なうずきが背筋を通って頭にまで届く。ジンジンと響くようなうずきが、ぐちゅぐちゅという不快な音と共に、絶え間なく伝ってくる。いつまで続くのだろうか。足を広げ続けるのも、いい加減疲れてきた。そろそろ、足を真っ直ぐに伸ばして、休みたい。息が上がって、変なうめき声以外に声が出ない。喋ることができなくなってしまったみたいだ。

「あっ、あう…」
「もう、一番太い張形が入っていますよ。時間をかけたので、痛くはないでしょう? どんな気分ですか?」

痛くはない。ただ変な気分なだけ。気持ちいいのかどうかも、分からない。

「ジェボム、目を開けて。どうして、何も見ないの? ただ、自分が知らなかっただけで、怖がることはないよ」
「怖く、なんか…、あっ…」

マークの言葉に反論する。怖いのではない。けれど、強がっているだけかもしれない。気を抜けば、泣き喚いてしまいそうだから、我慢しているだけで。

「ジェボムさんの、硬くなって、もういきそうですね…。出しておきましょうか?」

ヨンジェがくすくす笑いながら、ジェボムのものを握り、ゆるく上下に擦る。それだけで、もういってしまいそうになる。限界が近いのは分かるけれど、いかされたくない。
嫌だと思っても、自分でコントロールできない部分だ。
手から、熱くて湿ったものがジェボムの中心を覆う。驚いて、得体が知れないのが怖くて、目を開けて見るしかなかった。見るのではなかった、と後悔する。自分の迂闊さが死ぬほど嫌になる。ヨンジェが口淫していた。熱くて、柔らかくて、吸いついて、絡め取られる。口の中でしごかれて、達するまで、すぐだった。口淫自体にも慣れていないジェボムは、簡単にいかされてしまった。

「はぁ…、あぁ…」
「ふふっ…、ジェボムさん、自分だけ愉しむのは駄目ですよ」

太い張形が、もうこれ以上はないというくらいに深く刺される。達しても、うずきは消えない。むしろ、強くなったみたいだ。もう抜いてほしい。

「これだけ深く飲み込めるなら、ジニョン様もお楽しみいただけるでしょう」

ジニョン、という名前に、身体が震える。認めたくはないけれど、多分、怖いのだと思う。

軽やかな鈴の音に、ビクリと身体が震える。マークが寝台から離れて、新たに部屋に入ってきた者の元へ向かう。
ジェボムはそちらの方を敢えて見ないようにした。入り口から顔を背ける。

「2人とも、随分と楽しそうにしているね」

ヨンジェでもマークでもない、低い声。見ない。見たくない。

「ジニョン様、ご政務、お疲れさまです。もう、準備できていますよ」
「ありがとう、ヨンジェ」

人の影で、より暗くなる。ジェボムの頬に手が伸びて、顔の向きを変えられる。思わぬ近さに、ジニョンの顔があった。その目は、口元は、楽しそうに見える。

「ジェボム…。泣いているの? 怖いのかい?」

大きな手が、頬や目元の涙を拭う。泣いている自覚はなかったが、いつの間にか涙が流れていたようだ。怖くない、と反論したかったが、声が出なかった。
ジニョンの手が、頬から首筋へ、そして胸元に移る。胸を撫でられて、胸の突起を親指でこねくり回される。

「きれいな肌だ。日焼けの跡がなくなれば、顔も腕も、もう少し白くなるのだろうね」

ジニョンは、さっきまでマークが座っていた、寝台の脇に腰掛ける。両手で、ジェボムの上半身を撫で回して、肌の感触、筋肉の質を確かめる。
よく鍛えられた身体だと思う。衣服に隠れていたであろう、胸や腹は、日焼けが目に見える顔や腕に比べると白い。遠目にも精悍に見えたジェボムの顔は、間近で見た方がよりきれいに見えた。切れ長の目元に黒子を見つけて、微笑み、なぞる。きりっとした眉、形のいい鼻、薄い唇、主張している顎のライン、どれもこれも、男らしく、とてもきれいだと思う。
口づけようと顔を近づけると、顔を振って逃げようとする。両手で顔を抑え、口づける。閉じた唇を舌でこじあけ、口腔を好きなように舐め回す。

「うっ、いや…」

荒い呼吸の合間に、小さな声でジェボムが訴えるが、無視する。すると舌を噛まれた。思わず遠ざかり、痛みに顔をしかめる。

「ジニョン様、どうかされましたか?」 ヨンジェが聞く。
「噛まれた」 

簡潔に答えると、マークがジェボムの腕に繋がる鎖を引っ張り、ジェボムの身動きを封じる。
口の中に広がる珍しい味わい、これが血の味か、とジニョンは初めて知った。

「ジェボム、いけませんよ。あなたに逆らう権利はないと言ったでしょう?」

マークは笑顔でジェボムを苦しい姿勢に追い込む。優しげな表情のままで残酷になれるのだから、敵にはしたくないタイプだ。マークの冷酷な部分を見る度にいつも思う。ジェボムは「うぅ」と苦しげに唸る。両腕を頭の上に固定されるのは、さぞ苦しい姿勢だろうと思う。思うだけで、楽にしてあげようとはしない。
ジェボムを見下ろすと、こちらを睨みつけている。威嚇してくる猫のようだ。涙はもうない。
逆らうなと言われて、手錠と鎖で自由も奪われて、後肛には男のものを受け入れるために張形を入れられているのに、ジェボムのその闘志はどこから湧き出すのだろう。
自分のものにしたい、という気持ちが大きくなっていく。まだ抱いて確かめてもいないのに、手放したくない、と思っている。ジニョンには、それがとても不思議だった。

立ち上がると、ヨンジェが素早く近づいて、着物を脱がしてくれる。肌着もすべて取り払い、裸でジェボムに向き合う。ジニョンの中心は、完全ではないが、少し勃っている。
ヨンジェに代わり、ジェボムの足の間に陣取る。最初にヨンジェが、「準備ができている」と言った通り、ジェボムの後肛には、一番太い張形が奥まで入っている。それを少し出して、押し込んで、緩急をつけて繰り返すと、ジェボムが喘ぐ。苦しさと、快感が混ざった声。

「はぁ…、あっ、ん…」

ジニョンは嬉しさで微笑む。張形を一気に抜くと、襞がひくひくと蠢いている。入れたくて、早く味わいたくて、ジニョンの中心は完全に勃ちあがった。
しきりに閉じようとするジェボムの足をヨンジェが阻止する。ジニョンも膝裏を持ち上げ、より大きく足を開かせる。

ゆっくりと中へ挿入する。ジェボムの中は抵抗もなく、奥への侵入を許す。

「あっ、あぁ、嫌だ…、いや!」

涙声でジェボムが叫ぶ。だが、その声はジニョンをさらに興奮させるだけだった。

「全部入ったよ。ああ、いいね。とても良いよ、ジェボム」

ギュッと目を閉じて、頭を左右に振り、どうにか足を動かそうと抵抗する。手錠で封じられた手も、どうにか抜け出そうと何度も引っ張る。何にもならない。張形の冷たく硬いものではなく、熱くて硬いジニョンのものが、ジェボムの中を満たす。抜き差しの度に、快感なのか悪寒なのか分からない震えが身体中に走る。
誰かの手が脇を撫でる。誰かの手がジェボムの中心を扱く。激しく揺さぶられながら、再びいかされそうになる。「嫌だ」と強く願っても、逃れようと暴れても、悉く封じられる。せいぜい、唇を噛み締めて、思わず出てしまう喘ぎを堪えるしか出来ない。

ジニョンより先にいったのはジェボムだった。くすくす笑いながら、耳元でヨンジェが囁く。

「ジニョン様より先にいくなんて、駄目じゃないですか」

そんなこと知るか、と内心で毒づく。もう、くたくたに疲れ果てていた。無理な姿勢が長時間続き、2回もいかされた。
疲れた。もう嫌だ。もう死にたい。憎いとか、怒りとか、そんなものは、もうなくなっていた。ただ、もう、疲れた。

うつ伏せにされる。腰の下に枕のようなものがあり、腰だけを上げる姿勢を強いられる。抜けかけていたジニョンのものが再び奥まで突き上げる。

「ああっ」

枕に顔をうずめて、息苦しくても、顔をあげない。いくら引っ張っても動かない腕に、手首に、手錠が食い込む。足は閉じようとしても、間にいる人物のせいで閉じられない。
ジェボムはこれ以上何も見ないように、目を閉じていた。
身体同士がぶつかる音だけがする。抑えようと思っても歯の隙間から溢れる喘ぎ声が、いやに大きく聞こえる。
ジニョンの、腰を掴む手の力が一際強くなり、突き上げる動きが止まる。中に出されたのが分かった。絶望的な気持ちのまま、ジェボムは気を失ってしまった。

わたしの中のわたし

わたしの中のわたし

GOT7、ジニョンくんとジェボムさんのお話。長くなる予定。先に公開した「わたしの中のわたし~ヨンジェ編」の本編。K-Pop、BL、FF。

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-05-07

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted