死後の愛

思い出したくないことばかりが浮かんで

本当に思い出したいことが霞んでしまう

霞を掻き分けて、掻き分けて僕は手を伸ばす

嘲りの霖雨に打たれても、

躊躇いの泥濘に嵌っても、

霞を掻き分けて、掻き分けて僕は手を伸ばす

僕は歪んだ正義に侵されているから、

僕は歪んだ真実に縛られているから、

僕は歪んだ世界に騙されているから。

道化も、改竄も、捏造も、剽窃も、

ただの気休めでしかなかったんだ

意味のない延命ほど惨めなことはなくて

意味のない笑顔ほど大切なものもなかった

喪失の繰り返しが人生だというなら

代役を探している連中は追憶の奴隷だ

きみの代役は誰にも務まらない、僕は

ひとりで喪失と闘うんだ。そして記憶と共に死ぬことが

きみに対する、不器用なりの愛の証明だ

死後の愛

死後の愛

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-05-06

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