夏の短歌

Buffつけて恐るおそるの山登り
今日の土産は靴底の泥

午前五時古城の跡を通り過ぐ
クワガタムシの土の匂いだ

朝露を蹴って公園ひた走る
口にも蜘蛛のゴールテープが

七月の雨に色づくブルーベリー
今年も鳥と早い者勝ち

プチトマトなのに君にはデカすぎる
土に落ちてる赤い足跡

夏風が肌にまつわる懐かしき
祭囃子が遠く聞こえる

空青し冷房効いた室内の
窓際にある右手の彫刻

ひげを剃る今起きてきた君がきて
鏡に見せる今日の初キス

夕闇に佇むバスケットゴールにさえ
黙して語らぬストーリーがある

沖つ風喪服をゆるめ振り向けば
いつか遠くになりし島影

やり直すガッツはないと思うけど
戻れないなら生きてゆけない

大人にはなりたくないと念じつつ
苦くてしょっぱい枕噛んでた

想像もしなかったような今がある
生きてさえいれば生きてゆけるもの

もう道を踏み外すことはないだろう
庭先に咲く花を見つめる

なんつーか今日は私の誕生日
歳は毎日くってるけれども

当然のように今年も妻と子が
今日のこの日を喜んでくれる

お母さん今日はあなたが頑張って
私を産んでくれた日なんです

初めての梅雨明け前の誕生日
今年最初の蝉の声聞く

夏の短歌

夏の短歌

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-05-05

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