clocka's 第2話『故人の個人的な友好関係について』

夜御伽アウル

第七学園高等学校生徒間特別組織『clocka's』。
今回の依頼者は、俳優を志す一年生。
「友人がいなくなった」と話すが、その内容はどこか奇妙で…?
学園バトルシリーズ第二弾、始動!

登場人物(1:2:1)
♂御伽奏真(おとぎそうま)…高校二年生。風音の双子の弟。物静かな性格で、clocka'sの活動も風音に着いてくるように参加した。
♀御伽風音(おとぎかざね)…高校二年生。clocka'sの設立者。不器用で熱意が空回りしがち。明るくポジティブ。打たれ弱い。
♀小鳥遊彩希(たかなしさき)…高校一年生。所謂ツンデレ。大人ぶりたいお年頃。可愛いものと甘いものが大好き。
♂♀百瀬夕(ももせゆう)…高校一年生。今回の相談者。俳優を目指している。

clocka's 第2話『故人の個人的な友好関係について』
https://slib.net/106116
配役表
♀彩希:
♂奏真:
♀風音:
♂♀N/夕:
(演者敬称略)



※注意
・劇中の、夕(レイ)は相談者が『レイ』という存在に憑依されている状態でのセリフです。
・(レイ「」)という表記がありますが、セリフは読まずに、相談者役の方は会話しているていでセリフを読んでください。
・今回は、劇中に風音が『きらきら星』を歌うシーンがあります。曲を知らない場合は,歌詞を読むだけでも大丈夫です。


↓ここから本編↓


N「午後7時前の校舎内。空は暗くなり始めた時間帯。しんと静まりかえった校舎内で、三人の生徒が息をひそめていた。」

(小声での会話)
彩希「…本当に、ここで何もせずに待機で良いんですか?」
奏真「うん。話を聞く限り、百瀬さん(くん)の言う『友人』は、多分…この世の者ではないから。」
風音「ゆ、幽霊なんているわけないってば!」
彩希「風音先輩、ホラーとかダメなんですか?」
風音「ダメじゃないよ!奏真とも、たまに映画見に行くし!」
奏真「風音。」
風音「な、なに?」
奏真「…わっ!」
風音「ひっ!」
奏真「小鳥遊さん、分かった?」
彩希「はい…」
風音「(大声で)違うんだってばぁ!」
奏真「風音、声が大きい」
風音「あっ…ごめん。」
彩希「まあまあ、今はバレなければそれで…」
奏真「(被せ気味に)バレてない確証が、どこにあるの?」
彩希「…えっ」
風音「やめてよ奏真、彩希ちゃん怖がらせちゃ…」
奏真「こんな話をしている間に…ほら、後ろ。」

彩希「clocka’s第2話故人との個人的な友好関係について。」


N「時は、数日前に遡る。」
彩希「…友人が、いなくなった?」
夕「はい。もう一週間ほど姿を見ていないんです。」
風音「それは心配だね。同じクラスの子なの?」
夕「いえ!確かに同じ芸能科なんですけど、あの子は声優コースだと言っていました。私(僕)は俳優コースなので別です。ましてや私(僕)はまだ一年なので、会う事はまず無いかと…。」
彩希「ちなみに、その子の名前は?」
夕「名前は…あれ。」
風音「ん?」
夕「いつもあだ名で呼んでいるので、そういえば本名を知らなかったなって…。」
彩希「じゃあ、なんて呼んでるの?」
夕「レイ。と呼んでいました。」
彩希「…なるほど。」
風音「他には?外見の特徴とか…。」
夕「保健室登校の子なんです。いつも放課後…といってもだいぶ遅い時間なんですけど、芸能科棟四階の学習室で会ってて…日中は人が多くて校舎内を歩くのは怖いけど少しでも校内を覚える為に歩いてるんだって言ってました。」
奏真「そんな友人が、もう一週間姿を現さない。と」
風音「それで、私たちに調べてもらいたいって事なんだね?」
夕「はい…。私(僕)にお手伝いできることがあれば何でもするので!みなさんに頼りっきりというのも申し訳ないです…。」
風音「ありがとう。でも、何が起こるか分からないからなるべく私たちで見つけ出せるように頑張るね。」
夕「ありがとうございます!すみません、お忙しい中…。」
彩希「それが仕事なんだし、遠慮することなんてないのよ!」
N「第七学園高等学校生徒間特別組織『clocka’s』、その部室を一人の生徒が訪れていた。彼女(彼)の名前は百瀬夕(ももせゆう)。姿を見たところ、彩希と同じ一年生のようで、二年生の風音と奏真に対し恐る恐る話をしているように見えた。夕は、お願いします。と頭を下げた後部室を速足で出て行った。」
風音「お友達が急にいなくなったら、それは心配だよね。」
彩希「確かに。ましてやあたしと同じ一年だったら、余計に…。」
奏真「とりあえず、聞き込みをしてみようか。何も分からないんじゃ、捜査もできないし。」
風音「そうだね。」
彩希「はーい。」
奏真「明くんととうくんいないし、僕らで片付けよう。」
風音「了解。」
彩希「わかりました。」

N「三人は職員室へ向かう。第七学園高等学校は、多くの学科が存在するマンモス校だ。三人は芸能学科の教職員を中心に聞き込みを行った。しかし」
奏真「…条件に当てはまる生徒がいない。」
風音「どういうこと?夕ちゃん(くん)は確かに、『友人がいなくなった』って言ってたのに。」
彩希「生徒が多すぎて、把握しきれない。とか…・?」
奏真「いや、芸能科声優コースの先生全員に話を聞いた。にも関わらず話が聞けないのはおかしい。」
風音「どういう事なんだろう…。」
彩希「実は、幽霊とお友達でした!なんてオチ…あるわけないですよね!」
風音「ちょっと彩希ちゃん!冗談でもやめてよ~!」
彩希「あはは、この間家でホラー映画見たせいですかね。」
風音「もしかして、最近DVD出たやつ?とうくんも買ったって言ってた!」
彩希「えっ!そうなんですか!?」
風音「うん!とうくん、ああ見えて平然とお化け屋敷とか入っちゃうタイプなんだよ!」
彩希「へぇぇ…!」
奏真「…(呟くように)幽霊、か。」
N「ぽつりと奏真が呟く。風音と彩希は会話に花が咲き、その声が耳に入らなかったようだ。その後も、芸能学科の校舎内で聞き込みを行ったが思うような情報を得ることはなかった。」
彩希「結局、それらしき情報はなかったですね…。」
風音「うん…今日はもう遅いし、明日に持ち越そうか。奏真もそれで良い?」
奏真「大丈夫。今夜中に、明日の活動も考えてみるよ。」
彩希「決まり次第連絡ください!」
奏真「了解」
風音「それじゃあ彩希ちゃん、また明日ね!」
彩希「はい!お疲れ様でした!」

夕「大丈夫かな。いつになったら言えるんだろう。君に、伝えたい事があるのに。」

風音「…奏真?」
奏真「ん?」
風音「何見てるの?」
N「夜の御伽家。奏真の部屋にて、奏真はある冊子をめくっていた。」
奏真「うん…学校で取れる分だけ、過去の学校案内パンフレットをもらってきた。直感だけど、思う事があって。」
風音「ふーん…?うちのパンフレット、結構凝ってるもんね。どれどれ…。」
N「御伽姉弟が、並んでパンフレットを眺める。カラフルな冊子のページをめくると、各学科の生徒の写真やOBやOGの著名人の紹介ページがある。風音は何気なく眺めていたが、隣に座る奏真は不意に顔をしかめた。」
奏真「……これは。」
風音「あ、ねえねえ奏真!これ見て!この女優さん、うちの出身なんだって!知ってた!?」
奏真「(苦笑しながら)…風音、ちゃんと調べてる?」
風音「う…ごめん!つい夢中になって見てた。でも、過去のパンフレットなんて関係ないと思うけど…。もしかして奏真、彩希ちゃんが言ってた『実は、幽霊とお友達でした!』って話、真に受けてる?」
奏真「…そういうわけじゃないけど。」
風音「とりあえず、明日また学校で聞き込みしよ!(欠伸しながら)私、もうだいぶ眠くなっちゃった。」
奏真「先に寝なよ。もう少しこれ見た後、明日提出の課題のチェックだけしようかな。」
風音「はーい。…あ。」
奏真「ん?」
風音「明日提出の数学の課題、手を付けてない!!」
奏真「あー。そういえばそんなのあったね。」
風音「えっ!オーケストラコースは出てないの!?」
奏真「でてたよ?」
風音「奏真はやった?」
奏真「終わったよ。だいぶ前に。」
風音「…あのさぁ奏真」
奏真「(被せ気味に)風音。」
風音「うっ…。な、なに?」
奏真「自分の力でやらないと、駄目だよ。」
風音「そうだけど…!」
奏真「それじゃ、僕は寝ようかな。少しは眠れると良いね、風音。」
風音「え、ちょっと。奏真ぁ!」
奏真「おやすみ~」

N「翌日、HR直前のclocka’s部室にて、放課後の行動について話を進めていた。一人を除いては。」
彩希「…あの、御伽先輩。」
奏真「ん?」
彩希「風音先輩、大丈夫なんですか…?」
奏真「あぁ。自業自得だから。」たのしそうに
彩希「??」
風音「うぅ…数字の羅列がぁ…襲い掛かってくるよう…。」
彩希「あのー…風音先輩?」
風音「助けてぇ…図形の問題は苦手なのー…。」
彩希「かーざーねーせーんぱい!」
風音「うぅ…彩希ちゃん…おはよう。」
彩希「おはようございます。」
風音「私…もうだめかも…。」
彩希「え!?」
風音「寝不足で目がしょぼしょぼするよう…。」
彩希「夜更かしでもしてたんですか?」
奏真「課題をやってなかったんだよ。夜の間は自分の力でやらせようと思ってほったらかしてたんだけど。朝起きてみたらまだ終わってなかったから。僕のを写させてから学校に来たんだ。」
彩希「あぁ…なるほど。期末テストも近いですからね。」
風音「うっ…。」
奏真「小鳥遊さん。そのワード、今の風音には禁句。」
彩希「あっ。すみません」
風音「とりあえず、今日は早めに寝る…8時には寝る。」
奏真「風音。今日は夕方から行動するから、8時は家に着いてるか怪しいよ。」
風音「へ!?そうなの!?」
奏真「うん。今その話を小鳥遊さんとしてたところだよ。放課後はちゃんとここに来てね。」
風音「そりゃあ、逃げるつもりはないよ!ちゃんと問題を解決しなくちゃ!」
奏真「うん、よろしく。」
彩希「それじゃ、また放課後に。変更あったら連絡してください。」
奏真「了解。」
夕「…おはようございます」
彩希「あ、おはよう。」
風音「どうしたの?」
夕「その後どうなったかなと、気になってしまって。」
奏真「まだ調べ始めたばかりで、安心させられる情報がないんだけど…今日の動き次第では分かるかもしれない。そしたらまた連絡するよ。」
夕「ありがとうございます!すみません、急かすような態度を取ってしまって。」
奏真「大丈夫。芸能科は、期末テストに舞台があるでしょ?そっちの練習も大変だと思うから。こっちのことは任せて、頑張って。」
夕「お気遣いが沁みます…!初めての舞台で少し緊張していますが、頑張ります!ここでいい成績が取れれば、文化祭の時に全校生徒や校外から来る方にも自分のお芝居を見てもらえますから!頑張ります!」
彩希「あたしたちも楽しみにしてるから!」
夕「はい!」

N「その日の放課後。」
奏真「…あ、お疲れ様。」
彩希「お疲れ様です。」
N「彩希が部室に入ると、既に御伽姉弟が待っていた。」
風音「彩希ちゃん、お疲れ様!今日の行動については奏真からのメッセにあった通りだよ。しばらく暇だし、課題するなりご自由にどうぞ!」
彩希「それは見たし、テスト前だから課題ができるのもありがたいんですけど。どうして夕方から行動開始なんですか?」
奏真「まだ、確信じゃないんだけど。」
彩希「けど?」
奏真「昨日の聞き込みだったり、個人的に調べものをしていて『もしかして』と思う事があって。」
彩希「はぁ…?」
奏真「けど、一番は百瀬さん(くん)の発言かな。」
彩希「ん?どの発言です?」
奏真「いつも友人とは、放課後のだいぶ遅い時間帯に会ってるって話。」
彩希「いつも会ってる時間帯に、芸能科棟の学習室に行って待ち伏せしてみるってことですか?」
奏真「まぁ…そんな感じ。」ここで元に戻る
彩希「なるほど…現れる気がしないけどなぁ…。」
奏真「そこは、まぁ。僕にも考えがあるから。」
彩希「なるほど…?」
奏真「とりあえず、しばらくは待機で。トランプ持ってきたけど、やる?」
彩希「いえ!流石にテスト勉強しないと…ていうか、御伽先輩はテスト勉強しなくて大丈夫なんですか?」
奏真「ん?うん。家でやってるから。」
彩希「いやいや、勉強するに越したことないと思いますよ…?」
風音「それは、そこまで心配ないんだよ。」
彩希「心配ない…?」
風音「奏真は、特待生だから。」
彩希「え!?」
風音「意外だよねぇ。天才肌なんだよ…私は勉強してもいっつも平均点ギリギリなのに…うぅ…。」
彩希「双子だからって、全て似るわけではないんですね…。」
奏真「勉強に関してはってだけだよ。風音だって、歌声は格別だし。」
彩希「へえぇ!」
風音「いやいや、そんな大したことないよ!歌うのが好きで、たくさん歌ってたらこうなってただけで…。」
奏真「『ナナガクの歌姫』なんて二つ名まで付いちゃって。」
風音「大げさに言い過ぎなんだよみんな…私もまだ慣れないし…!」
彩希「そういえば、まだ風音先輩の歌声聴いたことないなぁ。」
奏真「テストが終わったら、clocka’sのメンバーでカラオケに行けば良いよ。明くんの選曲、すごく面白いから。」
彩希「夜坂が歌ってるとこ…あんまり想像つかないですね。」
風音「上手だよ!…選曲は、奏真の言う通りちょっと面白いけど…。」
彩希「ふふ、じゃあそれを楽しみにしてます!」
奏真「(呟くように)まぁ、それがなくても聞くことになるだろうけどね。」
彩希「????」
風音「さて、私は勉強再開しなきゃ…!今日は英語だぁ…。」
彩希「あ、あたしもデザイン画描き上げないと…。」
奏真「誰もトランプしてくれないの?」
彩希「流石に…。」
奏真「…じゃあ、手品の練習でもしてみよう。」

N「それから数時間後、時計の短針は6を指し窓に映る空は橙色と藍色に交じりあっている。風音、奏真、彩希の三人は芸能科棟の四階まで移動すると、学習室からちょうど死角となっている場所で息を潜めた。ここで、物語の冒頭へと話が戻る。」

(回想終了)

(小声の会話)
彩希「先輩!あれ!」
風音「!…あれは。」
奏真「百瀬さん(くん)だ。今日も会いにきたのかな。」
彩希「…教室に入りましたね。どうしますか?」
奏真「うーん…少し様子を見よう。何かあるかもしれない。」
彩希「了解です。」
風音「だ、大丈夫かな…私、なんだか寒気が…。」
彩希「えっ!大丈夫ですか?」
風音「大丈夫…!何かあったら言うから。」
奏真「…風音。」
風音「うん?」
奏真「歌ってよ。」
風音「えっ?どうしてこんな時に」
奏真「曲は…そうだな、外も暗くなってきたし。きらきら星が良い。」
風音「…きらきら星?」
奏真「そう。歌える?」
風音「う、うん…。なんだか、緊張しちゃうな…(呟くように)ウィンダ・ヒューム。…すぅ(深呼吸)」
(小声の会話、終了)

(ここから風音歌唱。きらきら星を歌ってください。)
風音『♪きらきらひかる
お空の星よ』

彩希「…すごい。綺麗」
奏真「でしょう?」
彩希「聴き入っちゃいます。なんだか、考えていることを見透かされるような…。でも、どうして歌を?」
風音『♪まばたきしては
みんなを見てる
きらきらひかる
おそらのほしよ』
(途中で歌うのを辞める)
風音「!?」
奏真「風音?」
風音「学習室にいるの、一人じゃない!」
彩希「え?」
奏真「やっぱりか…!行こう!」
彩希「は、はい!」

N「風音、奏真、彩希が来る前の芸能科棟学習室。一人の生徒が扉を開き足を踏み入れた。中はしんと静まりかえっていて、時計の秒針が生み出す音だけが響いていた。」

夕「…今日も、来ないのかな。私(僕)、君に何か悪い事をしてしまったのかな。分からない…。もっとお芝居の話がしたい。お互いの夢について時間も忘れて語り合いたい。(強く懇願する感じ)…でも、何よりも。また君に会えるのなら、今度こそ伝えるんだ。

…『お願い。神様。』」

(レイ「ひさしぶり」)

夕「…あ、れ?レイ…!?
久しぶり!来てたの気付かなかった!いつから?」

(レイ「…つい、さっき。」)

夕「そうだったんだ。全然来ないから、心配してたんだよ!ところで、今更なんだけど。レイの本名ってなんなの?」

(レイ「…。」)

夕「レイ…?どうしたの?黙りこんで。もしかして、自分の名前が好きじゃないとか?そ、それなら無理して言う必要ないんだけど!」

(レイ「…めん。」)

夕「…え?」

(レイ「ごめん。」)

夕「…何を謝られてるんだろう。」

(レイ「本当はダメだって、分かってた。」)

夕「ダメ…?何が?」

(レイ「僕(私)は、嘘をついた。」)

夕「嘘?」

(レイ「君の能力に甘えて、生きてる気になって。叶いもしない夢を語った。演じてたんだ。全部。」)

夕「よ、良く分からないよ。能力?生きてる気になってるって?叶わないって?演じてるって?」

(風音の歌声が聞こえてくる。)

(レイ「…!?」)

夕「…歌声?とても綺麗。」

(レイ「ま、ずい…」)

夕「まずいって、何が…?」
奏真「大丈夫!?」
夕「先輩方!ど、どうしてここに!?」
彩希「話は後!風音先輩!」
風音「…あなたが、レイさん。」

(レイ「…さっきの歌声は、能力だったんだね。」)

風音「そう。私の能力『ウィンダ・ヒューム』を発動している時に歌うと、生死に関係なくその精神に干渉ができる。何があったか、教えてくれる?」

(レイ「…本当は嫌だけど。」)

風音「嫌って、何が?」

(レイ「体、借りるよ」)

夕「…っう!?」
彩希「何?」
奏真「…風音、何て言ってたの?」
風音「…多分、夕ちゃん(くん)の体の中にレイさんがいる。」
彩希「どういうこと!?」
夕(レイ)「…。」
風音「いつでもいいから、話してくれる?」

夕(レイ)「…まずこの子は、能力持ちだ。
自分以外の存在なら誰とでも…動物ですら会話ができる。
しかも、その存在を体に憑依させることもできる。
芝居をする人間なら、喉から手が出るほど欲しい能力だよ。
これさえあれば、どんな役柄だって演じられるからね。
でもこの子はまだ、その能力に気付いていない。
だから毎日話していた相手が、生きているか死んでいるかも判別がついていない。
初めは、この体を乗っ取ってやろうと思った。
だから近づいて、生きてるフリをして、いろんな話をしたんだ。
…気づいたら、この子が目を輝かせて夢を語る姿に夢中になってた。
多分、この気持ちは…。
…いや、やめておこう。抱いてはいけない気持ちだということは確実だから。」
彩希「それって…。」
奏真「(被せるように)姿を消していたのはどうして?」
夕(レイ)「これ以上能力をこんなことに酷使してほしくなかったんだ。期末テストに向けた実技試験も近いし、そっちに集中してほしくて。それに、このままずるずると引きずるわけにはいかないと思って…いいタイミングだから、これで終わりにしようと思ったんだ。けど、この子は能力を発動するとき『お願い。神様。』って言うんだ。そうしたら…逆らえない。」
奏真「能力を酷使すると、慣れないうちは疲労度も大きいからね。」
夕(レイ)「最期にこの子の声が聴けてよかった。…良かったら、伝言を頼んでも良いかな。」
彩希「えぇ。むしろ、何も言わずに去ると夕が悲しむわ。」
夕(レイ)「そうかな…。じゃあ…」

N「数週間後」
風音「…あ、夕ちゃん(くん)いらっしゃい!その後、身体の調子はどう?」
夕「こんにちは。特に違和感なく過ごせています!まさか私(僕)が、みなさんと同じ能力持ちだとは思っていませんでした。いまだに実感が湧かずにいます。」
奏真「まぁ、初めのうちはそれでいいと思うよ。困った事があったら、いつでも相談に来てね。」
夕「ありがとうございます。少しずつになると思うけど、自分の能力と向き合っていこうと思います。」
風音「それが良いよ!レイさんも、素敵な能力だって言ってたし!」
夕「そう、ですね…!少し寂しくなってしまったけど、レイと出会えて良かった。この能力がなかったら、レイとも出会えなかったし。」
彩希「うんうん!…にしても、よくレイさんが10年以上前に在学していた生徒だって気付きましたね?」
奏真「僕は、ちゃんとパンフレットを見ていたからね。」
風音「う…。」
奏真「レイさんは、過去に圧倒的演技幅の広さとトーク力で在学中にスカウトを受けるほどの人材だった。あの人の在学中は、文化祭のステージでその姿を見ないことはなかった。けど、卒業を直前に控えた時、交通事故で命を落とした。事故については、ネットで検索してみたらすぐに出て来たよ。『レイ』という名前は、舞台に立つ時に使っていた芸名だ。」
夕「そうだったんですね。私(僕)、そんなことも聞かずにお芝居の事ばかり…。」
彩希「良いんじゃない?そうやって語っている姿が魅力的だった。って言ってたし?」
夕「やめてください!恥ずかしいから…!」
風音「ふふっ。これからも、頑張ってね!」
夕「はい!…あ。そうそう」
奏真「ん?」
夕「なんと、文化祭のステージに立てることになりました!」
風音「本当!?」
夕「はい!先生方にも褒めていただけました…!良かったら、ぜひ見に来てくださいね!」
彩希「おめでとう!絶対見に行くから!ね、風音先輩!」
風音「うん!時間帯によっては、舞台袖で見る事になるかもしれないけど、絶対見に行くよ!」
奏真「応援してるね。…まぁ、既に噂の人になりつつあるけど。」
夕「え、そうなんですか?」
奏真「うん。たくさん人が見に来るかもね?」
夕「うぅ…プレッシャーに弱いのでやめてくださいぃ。」
彩希「大丈夫よ!練習は本番のつもりで、本番は練習のつもりでって言うじゃない!リラックス!」
夕「ですね…頑張ります!」


本編 完


彩希「clocka’s第二話。アフタートーク、『友人への手紙』」

夕「レイへ。
最期にあなたと直接お話ができなくて、とても残念です。
本当は、もっともっとたくさんのお話がしたかったから。
Clocka’sのみなさんから話は聞きました。
私(僕)が今。こうして能力に気付けたのは、レイのおかげです。ありがとう。
初めてあなたに会ったとき、私(僕)は自分のお芝居に納得がいかず、周りと自分を比べ劣等感を感じていました。
そのころは、神頼みでもなんでもいいから演技力が欲しいと切実に願っていました。
その瞬間の『お願い、神様。』が、まさか能力発動の為の呪文?になるとは、思ってなかったけど…。
今は、少しずつ能力の事を理解していきながら日々レッスンに励んでいます。
いつか、学校のステージじゃなくて。もっともっと大きなステージでお芝居がしたい。
もっともっと、たくさんの人にお芝居を見てもらって、その心を動かしたい。
その気持ちは変わりません。だから、あなたとは少し遠くなってしまったけど…見ててね。

さいごに、本当は直接あなたに伝えたかった事。
私(僕)は多分、あなたと同じ時を生きていたら…今と違う関係を強く望むだろうなあと思います。
…ごめんなさい。はっきり言います。
私(僕)、レイのことが好きです。友達じゃなくて、恋愛の方。
あなたが私(僕)の事をどう思っているか、分からずじまいだったのが少し悔しいけど。
いつか、またどこかで、あなたに会える気がしている私(僕)がいます。
その時は、改めて私(僕)に告白されてよ。いつまでも待ってるから。
ようやく一歩踏み出せた、百瀬夕より。」

clocka's 第2話『故人の個人的な友好関係について』

clocka's 第2話『故人の個人的な友好関係について』

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 青春
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-05-02

CC BY-NC-ND
原著作者の表示・非営利・改変禁止の条件で、作品の利用を許可します。

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