彼女は望んでいない、それを

花るんるん

 彼女は正しかった。
 彼女は、いつも、いつでも、正しかった。彼女の正しさはやがて、ひとつの果実となり、世界を覆った。
 彼女の正しさで覆われた世界はやがて、息苦しくなり、窒息した。
 彼女は困った。

 どうすればいいのかしら。

 どうしようもない。
 彼女とて、自分の正しさを無理に世界に押し付ける気などさらさらなかった。
 だが、彼女が見出した正しさは特別で、相対性を許さず、「いつも、いつでも、正しい」という絶対的なものだったから、世界としても有無を言わさず、受け入れざるをえなかった。
 より正確に言えば、受け入れるか否かなんて、選択の余地はなかった。ただ、受け止めるだけ。
 彼女とて、世界が窒息しないよう、キリを使って、覆っているものに穴を開けようとしたが、彼女と彼女が見出した正しさは当然に別物だったから、どうしようもなかった。
 彼女のか細い腕で持つキリが、覆っているものに虚しいかな、届くことはなかった。
 「彼女が死んだとて、それは同じこと」と一番良く知っているのはもちろん、彼女だった。

 どうすればいいのかしら。

 どうしようもない。
 そういう「どうしようもない」の大合唱にうんざりしていたのは、彼女ばかりではなかった。覆われた世界の底から、様々な異議申し立てが聞こえてくる。

 これを聞こえなかったことにするのかい?

 彼女とて、そんな気はさらさらないから、首を横に振る。頬を膨らまして、ちょっと怒った顔をして。かわいい。
 覆われた世界の底からも、多数者の首を横に振る音が聞こえる。

 どうすればいいのかしら。

 このままでは世界が窒息死してしまう。そんなの良い訳がない。
 彼女はたまたま、いつも正しかったにすぎない。窒息死なんてそんなこと、彼女を含めて誰も望んでいない。

 望んでもいない正しさで覆われた世界の責任を取らなくちゃいけないの?

 誰かがオムライスの卵のくるみに穴を開けると、世界の覆われに穴が開いた。「何だ、そんなことだったのか」と軽口を叩くなかれ。


 明日には、あなたの見出した正しさが、世界を窒息死させてしまうかもしれないのだから。

彼女は望んでいない、それを

彼女は望んでいない、それを

「彼女は望んでいない、それを」。タイトルからして、固そうですね。深刻そうですね。実際、真面目な人が読むと、そう受け取られてしまうかもしれませんね。それはそれで構わないのですが、作者・花るんるんとしては、全編ギャグのつもりで書きました。「おいおい、何言っちゃってんの!?」とつっ込みながら読んでいただけると幸いです。

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