夜の散歩

万年貧血

深夜の住宅街が好きだ。
澄んだ空気のなか、静まりかえった街を歩く。
時折遠くの幹線道路から聴こえるかすかな車の音と、コンクリートを擦る靴の音以外、動くものの気配は無い。
似たデザインの家々。窓が少ないのは流行りだろうか。
ぽつぽつと等間隔に灯る暖色の街灯。
それに照らされる華奢な街路樹。
幸せな家庭の象徴のようなそれらが夜の闇の中に浮かび上がる様は、不思議と見る者の寂寥感を掻き立てる。
砂漠の中のオアシスが如く点在するその灯り。
手を伸ばせど絶対に手に入らないもの。
ひとつ深呼吸をして夜を吸い込む。
そうして私も家路を急ぐ。
私の居場所に帰るために。

夜の散歩

夜の散歩

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-05-01

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