遊園地までの葬列

 火葬場のにおいが立ち込めている。
 だけど続く、はてしない葬列。
 建物のすがたは見えない。
 
(今、ぼくは影だ。
 かつてここを来たときも、影だった。
 そのとき、列は逆向きだった。居並ぶすべての人は影……)
 
 景色はどこもまっ白だけで、足音すら聞こえない。影に影はなく、黒ののっぺらぼうらが延々、列をなすばかり、それでも列はまっすぐ一方向へ歩みをやめない。
 列は葬列だ。
 火葬場のにおいが立ち込めている。

 
 ぼくらは段々、ちいさくなってゆく。……
 (あのときは――昔この道を辿ったときは、うしろからおおきな巨人がやって来て、幾人もの影を踏み潰してたっけ。
 皆、じっと進むよりなかった。ぼくらには口も目もなく、ものも言えず、うすぼんやりとあたりを感じとってた。だけど巨人には顔があって、ひとつ目で、やらしいおおきな頭をゆらゆらしてたのを覚えてる。)

 やがて、黒い観覧車が見えてくる。
 空に焼きついているようだけど、じりじりと、世界をけずるように、廻っている。
 
 皆、あの観覧車に乗って、壁を越えていく。
 観覧車はおおきすぎて、上半分は空間からはみ出してしまっている。
 だけどまぎれもなくあれが観覧車だ。
 だれもがあの見えない頂からやって来て、だれもがまたその向こうへ帰ってゆくだろう、きっと、世界の裏側にある、遊園地へ。

遊園地までの葬列

遊園地までの葬列

2008年4月初稿/「現代詩手帖」2008年11月号入選作品

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-04-30

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