遊園地までの葬列
火葬場のにおいが立ち込めている。
だけど続く、はてしない葬列。
建物のすがたは見えない。
(今、ぼくは影だ。
かつてここを来たときも、影だった。
そのとき、列は逆向きだった。居並ぶすべての人は影……)
景色はどこもまっ白だけで、足音すら聞こえない。影に影はなく、黒ののっぺらぼうらが延々、列をなすばかり、それでも列はまっすぐ一方向へ歩みをやめない。
列は葬列だ。
火葬場のにおいが立ち込めている。
ぼくらは段々、ちいさくなってゆく。……
(あのときは――昔この道を辿ったときは、うしろからおおきな巨人がやって来て、幾人もの影を踏み潰してたっけ。
皆、じっと進むよりなかった。ぼくらには口も目もなく、ものも言えず、うすぼんやりとあたりを感じとってた。だけど巨人には顔があって、ひとつ目で、やらしいおおきな頭をゆらゆらしてたのを覚えてる。)
やがて、黒い観覧車が見えてくる。
空に焼きついているようだけど、じりじりと、世界をけずるように、廻っている。
皆、あの観覧車に乗って、壁を越えていく。
観覧車はおおきすぎて、上半分は空間からはみ出してしまっている。
だけどまぎれもなくあれが観覧車だ。
だれもがあの見えない頂からやって来て、だれもがまたその向こうへ帰ってゆくだろう、きっと、世界の裏側にある、遊園地へ。
遊園地までの葬列