鳩時計
亜美は少し変わっている。なんでそんなものが好きなのか全くわからない。俺が鳥嫌いって事もあるんだけど、亜美の部屋にはワンルームのその部屋には似つかわしくない立派な鳩時計がある。
亜美は特に鳩が好きな訳でも無く、壁掛けの時計にこだわっている訳でも無く、何故か鳩時計に惹かれるらしい。
付き合って二年を過ぎても亜美の事が大好きで仕方がない。二人共仕事が休みの土曜日の午後、ダラダラ流れていたテレビを消すとカーテンとカーテンの間からオレンジ色の、それはもうオレンジ色としか言いようのないオレンジ色の夕陽がいかにもなシチュエーションで部屋の中に入ってきた。
亜美のことが愛おしい。
「ねぇ」
と言うともう亜美を背中からギュッとしていた。亜美はポチャッとしていてそんなところも好きだ。色んなところにキスをする。色んなところに。亜美の声が少しだけ漏れる。
亜美の身体をゆっくりと奏でる。ゆっくりと。
身体が熱をおびる。キスをする。舌を吸う。指でする。
身体の動きが不規則になり亜美が一度目の絶頂を迎える。
中にはいる。ゆっくり入っていって身体を抱きしめる。それからゆっくり動く。動きを止めてまた抱きしめる。キスをして徐々に動きを速める。
動いたり止まったり徐々に徐々に高まっていく。高まっていく。
もう止めない、いく。いくいく。
イッた。イッた途端に、けたたましい変なメロディーと共に鳩時計が動きだし午後六時を知らせる。
ビクッとして鳩時計を見ると、パカッと扉が開き阿呆みたいな顔をした鳩が変な動きをしながら出てきてカクンカクンやっている。メロディーの終了と一緒に鳩はそそくさと扉の向こうに帰っていった。
俺はまだ亜美の中にいたけど鳩時計のあまりにもなタイミングに笑ってしまった。亜美も笑った。
「素晴らしいセックスでした。おめでとう!みたいだったね」
亜美がそう言った。俺はまだ笑っていた。
鳩時計が少しだけ愛おしく思えた。
終り
鳩時計