私だけのポールシフト

私だけのポールシフト

Twitterの詩をまとめてます。

安寧の行方

川の流れに委ねた運命
今、谷底でとどまる

ああ、これが運命ですか、

けれどもあなたはここにいる
谷底でゆらゆらゆれている
この揺らぎに何を見る
その隙間に入り込む光は見えるか

諦めに混じる安堵
落胆に同じだけの安堵

果たしてあなたは安らかなるか

幻想の象と砂漠

荒涼たる砂漠で
象と出会う
寂しげな瞳
物憂げな足取り
私たちは一緒に歩いた
オアシスなどどこにも無い
私たちは死ねない生き物
空でピラミッドが光っている
大気圏を超えた飛行船
乗らなかった地下鉄 
砂嵐の中で太陽を見た
象は鳴いた
仲間を探すように
私は沈黙した
あの日絶望したように

私だけのポールシフト

なんでも入っては出ていった

今の私は、がらんどう

この中に何をおいても
何も無いことになる
なんの意味も持たない

言葉数が増えた分
意味をなすことを諦めた

慌ただしさへの抵抗は
地下鉄を見送ることだけ

ここで行き先と逆に歩いても
ポールシフトは起きやしない

私の影響は私にのみ

靴の自由意思

我楽多を集めて
反故紙を集めて
これぞ人生と

笑ツテゐタネ

出鱈目こそ芸術か
履き違えたままの靴が
水溜りにはまり脱げていく

靴をなくして大人しくなり

必要なものを買い揃え
使えるものだけ大切にして
これぞ暮らしと

笑ツテゐタネ

便利さこそ生活か
履き揃えた靴は
寄り道を忘れた

幼き破壊衝動

燃やしてゆくもの
壊してゆくもの
破いてゆくもの

築いたものなどあっけない

子供の頃から積み木遊び

壊すことに醍醐味を見ていた
無邪気なひとりあそび

いま私は躊躇する
大切にしてきたものを
手放すことに
しかし囁く子供の私

はやくちがうのをつくりたい

さようなら
何も残さずに

天文学者の見た夢

よく星屑が取れる日は
自分で並べて星座をつくる
明日には流れてしまうこと
朝日がくれば消えてしまうこと
そんな自分だけの星座を作る
自分だけの神話を沿えて
いつか夜空に展示される日を待つ
膨大な時間の刹那の遊び

春、破滅、土、芽吹

何もかもを焼き払い
更地としたこの土地で 
今度は何を植えようか

数秒毎にやり直しの世界
天地創造創造的破壊輪廻転生

大地を讃えていた時代には
大地は割れてゆく

大海を崇めていた時代には
大海は干上がりゆく

終わらない砂遊び
土を弄りながら
土の感触の
春の匂いの
記録を続ける

色水の毒づき

独りきりでどこまで行ける
夢の中では仲間がいた
悪夢が時折見せる理想

深層心理を悪戯に掻き回す夢たち

夢の絵の具は混ざり過ぎて
透明度は終ぞ墜ちてしまった

そこに芸術を見て取れない
そこに音を聞き取れない
そこに色を見出せない

汚い色水の中に何を見る
それはお前だよ
余計なお世話

野生の発露

惜しむことなかれ
その反響音に負けずに
魂の声とか本音とか
どうだっていい
今はどれだけの野性を宿せるか
狼にも負けない遠吠えを
野良犬にも負けない貪欲さを
毒蛇にも負けない致死量を
虎にも負けない残虐性を
ドラム缶の中で混ざり合う
吐き出したものは野生の血
文明が否定してきた僕の姿

冥王星の引力は

冥王星の引力は
私を再び混乱させた
私を再び狂乱させた
私を再び無に戻した
私を再び起点に置いた
私を再びはじめさせた
私を再び泣き喚かせた

私はいつかまた笑顔だった

かきむしる
爪が割れる
前髪が邪魔
獣みたいに
それでもって
不自然に生きる

何もかも
文字に起こして
寝た子を起こして

影絵の独り芝居

これが結論なら受け入れよう
例えばカタストロフとしても
脚本家でありながら
思ったようにはならなかった
嘆くお前を見ているお前

終劇だ
このシーンはやめてしまえ
その似合わない完璧主義ごっこ
几帳面な強迫症でいなければ
お前を責める人間などもういない
2度とお前の目の前に現れない

意識が世界なら

お前を責める役者は
お前自身でもある
この場面の終わりに
この芝居の終わりに
お前の劇場から突き落とした
次々違う役者を呼んで
違う芝居を始めようと
お前は意気揚々と仕切るのだ

そんな一人芝居を見ながら
お前は待っているだろう
足をぶらつかせて
早送りをしながら
次の演目、次の場面、
お前はまた演じるのだろう
自らの脚本の上で、
お前の遺伝子のブループリントを
ミスキャストなんて無いのは知ってる
書いた時点で完璧な物語
全部お前が演じ切る舞台

影、生誕

お前の影だ
お前自身だ
お前は光だ
お前は自我を見失った
お前の光によって
目を眩ませて
実態を見失った
だからお前の影が出てきたんだ
お前を助ける為に出てきたんだ

ありたい姿になりたかったか

可哀想に
いつもお前はへとへとだ

何も言われなくとも
成らんとする

お前はひとつじゃない

熱病のやうに生きよと

結局毒にも水にもなれないか?
諦めないのか頑張り屋を諦めないのか
肩の荷を降ろすと決めたのに
また背負ってる
大義を求めず己の為に生きると決めて
また大義を求めてる

毒になるか水になるかその二択か?
お前は枠が無ければならぬ性分だな
たしかに時間は有限だが
心臓をそう忙しくさせるな
気持ちだけでも長生きしろよ
必死になるな没頭しろ
埋没を恐れるな夢中になれ

ただ、ただ、湧き上がる言葉を
一つでも多く残してやりたい
その野心でいいじゃないか
綺麗とか透明とかに拘るな
お前を狭める価値観なら棄ててしまえ
それはきっと誰かが為すことだ

お前はただ高く飛びたいのだろう
お前はただ深く潜りたいのだろう
理解よりも名声よりも探求だろう
他でもないお前自身との繋がりだよ
認められたがってる言葉たちを
成仏させてやりたいのだね
それはお前の優しさじゃないよ
それは植え付けられたエゴだよ
飾るな、ままであれ、お前であれ

私だけのポールシフト

これからも続く四畳半探究の旅路。

私だけのポールシフト

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ミステリー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-04-28

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  1. 安寧の行方
  2. 幻想の象と砂漠
  3. 私だけのポールシフト
  4. 靴の自由意思
  5. 幼き破壊衝動
  6. 天文学者の見た夢
  7. 春、破滅、土、芽吹
  8. 色水の毒づき
  9. 野生の発露
  10. 冥王星の引力は
  11. 影絵の独り芝居
  12. 影、生誕
  13. 熱病のやうに生きよと