減法

渡逢 遥

何もしていない状態も、何かひとつしかしていない状態も、死んでいるのと何ら変わりはない。…私はひとつ、またひとつと行動をやめていく。物ひとつ言わなくなっていく。単純になっていく。それは自浄に似ている。自浄に似ていながら、禁忌を犯しているような感覚もあり、私は屡々混乱する。混乱しながらも、着実に、限りなく無に近づいていく。忘我の境地に近づいていく。輝ける闇を現前に、私は束の間の恍惚を覚える。私は不意に立ち止まる。過去から見上げた自分も、未来から見下ろした自分も、核の部分が、目も当てられないほど壊死している。私は未だそれに気づいていない。

減法

減法

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-04-27

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted