ハンドクリームと焦燥感
若さが溶けていく。
一日、一日、灰色の金太郎飴みたいな日常を重ねるごとに。
ベッドの中、ふと暗転したスマホに映る、見知らぬ顔。
日常に摩耗し、途方に暮れた、疲れた子供のような顔。そのあどけなさに怒りを覚える。
私はこの数年間何をしてきたのだろう。
未熟さの上にあぐらをかき、手に入れた安寧だけを必死に守りながら、ゆっくりと老いていくだけだったこの数年間。
不思議と記憶が無い。当たり前か、前進していないのだから。
今、動かなければ。
今、何か始めなければ。
未熟な精神を朽ちゆく肉体に閉じ込めたまま動けなくなってしまう前に。
去年よりも減りの早いハンドクリームを、かさつく指先に塗りこめながら思う、春の夜。
ハンドクリームと焦燥感