縋る

あおい はる

 空から降るのは、雨と、燃え尽きた星。冬には雪。きまぐれに灰。宇宙での火葬。くるおしいほど好きだったひとが、ばかみたいにまいにち祈っていて、果たして、なにをそんなに祈ることがあるのだろうと思っていた。かんたんに、そういう新興宗教にのめりこんでいる、と言い捨ててしまうこともできたのだけれど、だれを、なにを信じるかは、自由であるのだし、神さまも、この国にはたくさんいるのだから、きみが祈ることを、個人的な思想で否定するのはまちがっている、と思いながら、ぼくは、新たに荒廃した街で、生命の残骸を慈しんでいた。弔い、ともいうのか。しらないにんげん、けものが、原形を失って、つめたくなって、こなごなになって、かわいて、街のアスファルトを撫でる。七階建てのビルの一階の、もともと喫茶店だったと思しき面構えのフロアには、なぜか、口の悪いあらいぐまが棲みついており、ときどき、ぼくをみかけては、暇人な偽善者、と罵った。あらいぐまは、欠けたコーヒーカップで、ひどく薄い味のコーヒーをのんでいることが多かった。きみは、空から降ってくるものをたいせつにし、雨や雪など、てのひらでとけてなくなってしまうものですらも、いちいち愛おしみ、くちづけるのだった。

縋る

縋る

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-04-23

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